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Kubernetesのアーキテクチャの"肝"-「CRD」を使ってみよう

【連載】

Kubernetes入門

【第24回】Kubernetesのアーキテクチャの"肝"-「CRD」を使ってみよう

[2021/09/13 09:30]正野 勇嗣 ブックマーク ブックマーク

CRD(Custom Resource Definition)。

「時々見かけるワードだけど、何となく使っていてよくわからない」「そもそもCRDって何?」という方もいらっしゃると思います。

これを紐解くキーワードは「拡張性」です。Kubernetesのメリットの一つである優れた拡張性を実現するのが、CRDによるリソースの拡張なのです。

もちろんリソースの拡張をせずとも、Kubernetesの標準リソースだけでもさまざまなことが実現できますし、それで十分というケースもあるでしょう。ですが、世の中にある膨大なITシステムで実現するアーキテクチャにはさまざまなものがあります。Observability(可観測性)やCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)など含めた運用性を考慮すると、標準リソースだけで実現できるとは限りません。

そのため、求められるアーキテクチャを実現するにあたっては、CRDが重要な役割を担います。CRDを理解し、より深く/新しい視点でKubernetesの世界を堪能していきましょう。

今回の説明は、次の3ステップで構成しています。もう知っているよ、という部分は読み飛ばしてください。

  • そもそも、Kubernetesの標準リソースはどうやって動いているのか
  • 実はCRDは知らぬ間に使っていた?! CRDの具体的な使い方
  • 世の中のCRDにはどんなものがあるか

Kubernetesの標準リソースはどうやって動いているのか

Kuberenetesの標準リソースは、Controllerとの協調動作により成り立っています。以降では、標準リソースの一つである「ReplicaSet」を例にとって説明していきましょう。

ReplicaSet Controllerの動作

ReplicaSet Controllerは、以下の3ステップにより動作します。

①ReplicaSet ControllerがReplicaSetが作成されたことを検知、Podを作成(ノード未割り当て)
②SchedulerがPodをノードに割り当て
③自ノードに割り当てられたkubeletがコンテナを起動し、ステータスを更新

イメージ図

Podが停止したら同様に、同じステップを踏んで再生成されます。

なお、本連載の第4回~第9回で各標準リソースについて説明しています。標準リソースの理解に不安がある方は、この機会にぜひ、復習してみてください。

実はCRDは知らぬ間に使っていた?! CRDの具体的な使い方

普段Kubernetesのマニフェストを書いていて見慣れないkindのリソースを見かけたことはないでしょうか。実は、「Argo CD」などさまざまなKubernetesのツールはCRD(+Controller)を使って動作しているのです。

以下の2ステップを具体的なYAMLを活用して理解していきましょう。題材として、Argo CDを例にとって説明します。

  • CRDを定義する
  • CR(カスタムリソース)を定義する

まず、CRDを定義します。Argo CDの場合は、Argo CDのインストールスクリプトのなかで実行されるので、意識せずに実行していた方もいるかもしれません。

$kubectl apply -n argocd -f https://raw.githubusercontent.com/argoproj/argo-cd/stable/manifests/install.yaml

CRDを定義するYAML(install.yaml)のなかで、押さえておくべき点を説明します。次に示すコードでは、以下の2点を記述しています。

①CustomResourceDefinitionをkindに指定
②Application」というCR名を定義

apiVersion: apiextensions.k8s.io/v1
kind: CustomResourceDefinition # ① kindがCustomResourceDefinition
metadata:
  labels:
    app.kubernetes.io/name: applications.argoproj.io
    app.kubernetes.io/part-of: argocd
  name: applications.argoproj.io
spec:
  group: argoproj.io
  names:
    kind: Application  # ② CR名がApplication

~後略~

次に、CRを定義します。

Argo CDでは、GUIから定義することも可能です。そのため、こちらも普段意識せずに実施していた方もいると思います。

次のコードでは、kind名を「Applilcation」として、各specを定義しています。DevOps系のCRということで、以下の事項が記載されています。

①アプリケーションを管理しているリポジトリを指定する
②アプリケーションをデプロイするクラスタを指定する

$kubectl apply -n argocd -f https://argoproj.github.io/argo-cd/operator-manual/application.yaml
apiVersion: argoproj.io/v1alpha1
kind: Application
metadata:
  name: guestbook
  namespace: argocd
spec:
  project: default
  source: # ① アプリケーションを管理しているリポジトリ
    repoURL: https://github.com/argoproj/argocd-example-apps.git
    targetRevision: HEAD
    path: guestbook
  destination: # ② アプリケーションをデプロイするクラスタ
    server: https://kubernetes.default.svc
    namespace: guestbook

いかがでしたでしょうか? 「インストールスクリプトやGUIの裏側でこういったリソースが作成されているのだな」と理解しておくことで、Kubernetesのより深い理解につながります。

世の中のCRDにはどんなものがあるか

さて、世の中のCRDにはどんなものがあるのでしょうか。

以降では、Kubernetesの各ツールがどんなCRD(+Controller)を作っているのか紹介します。実は知らぬ間に使っていた、というものもあるかもしれません。

それぞれのツールがおおよそどういったCRD/CRで構成されているかについて、ざっくり押さえておくと良いでしょう。なお、どのCRDとControllerが協調動作してツールの機能を実装しているのかは、公式ドキュメントやソースをご確認ください。

ツール CRD Controller
Argo CD(DevOps) - Application
- ApplicationSet
- Application Controller
- ApplicationSet Controller
Tekton(DevOps) - ClusterTask
- Condition
- Pipeline
- PipelineRun
- PipelineResource
- Run
- Task
- TaskRun
- Pipeline Controller
Flux2(DevOps) - GitRepository
- HelmRepository
- HelmChart
- Bucketv- Kustomization
- HelmRelease
- Provider
- Alert
- Receiver
- ImageRepository
- ImagePolicy
- ImageUpdateAutomation
- Source Controller
- Kustomize Controller
- Helm Controller
- Notification Controller
- Image Automation Controllers
GateKeeper(Security) - ConstraintTemplate
- Constraint
-(Admission Controller)
Calico(Network) - NetworkPolicy
- TigeraStatus
- Policy Controller
- Namespace Controller
- Serviceaccount Controller- Workloadendpoint Controller
- Node Controller
Kubeflow(機械学習) - Notebook
- PyTorchJob
- TFJob
- Notebook Controller
- PyTorch Controller
- Tensorflow Controller

また、Kubernetesアプリケーションの運用ツールポータルである「OperatorHub.io」にも多くのCRDが登録されています。以下の多くは「Operator」と表記していますが、ここではざっくり「Operator = CRD+Controller」だと理解しておいてください。

分類 登録数 代表的なツール
AI/ML 6 - Kubeflow
- Splunk Operator for Kubernetes
Application Runtime 15 - Akka Cluster Operator
BigData 11 - Spark Operator
Cloud Provider 14 - Azure Service Operator
- IBM Cloud Operator
Database 35 - Cassandra
- Elasticsearch Operator
- TiDB Operator
Developler Tools 25 - Nexus Operator
- Knative Operator
Integration & Delivery 32 - Argo CD
- FluxJenkins Operator
- Spinnaker Operator
- Tektoncd Operator
Logging & Tracing 11 - Istio
- Kiali Operator
- Splunk Operator
- Datadog Operator
Modernization & Migration 1 - Tackle Operator
Monitoring 24 - Grafana Operator
- Prometheus Operator
Networking 12 - Kong Operator
OpenShift Optional 17 - KubeVirt HyperConverged Cluster Operator
- Metering
Security 23 - Sealed Secrets Operator
- cert-manager
Storage 24 - AWS S3 Operator
- Rook-Ceph
Streaming & Messaging 11 - Kubemq Enterprise Operator

※ 上表は2021年9月1日時点の情報に基づいて作成。

* * *

今回は、まず標準リソースとKubernetesのアーキテクチャを説明し、Operatorがどのように動作するのかを紹介しました。また、CRD/CRの具体的な利用方法や、世の中にどんなCRDがあるかを紹介しました。 Kubernetesの特徴の一つは拡張性の高さです。CRDはその中核に位置付けられます。CRDを理解し、その裏にあるアーキテクチャを理解することで、Kubernetesの理解を深めてみてください。

著者紹介


正野 勇嗣 (SHONO Yuji ) - NTTデータ 部長

2011年まで開発自動化技術のR&Dに従事。その後、開発プロジェクト支援やトラブルシューティング等に主戦場を移す。「ソースコード自動生成」に加えて、JenkinsやMaven等の「ビルド自動化」、JsTestDriverやSelenium等の「テスト自動化」を扱うようになり、多様化する開発自動化技術動向に興味。

最近は第四の自動化であるInfrastructure as Code等の「基盤自動化」の魅力に惹かれている。開発自動化技術に関する雑誌・記事執筆も行う。3児のパパ。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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