ガートナー ジャパンは4月25日~27日、「ITインフラストラクチャ、オペレーション・マネジメント & データセンター サミット 2018」を都内にて開催した。本稿では、ガートナー ジャパン リサーチ ディレクター阿部恵史氏による講演「日本のDevOps:破壊者に勝ち、破壊者となるために」の内容をレポートする。

なぜ今、DevOpsなのか?

「いかにビジネススピードにITを追随させるか」という観点から注目を集めているDevOps。アジャイル、コラボレーション、自動化を利用して、早く、安く、より満足のいくサービスを継続的に提供するためのビジネス主導のアプローチだ。

近年は、デジタル化に向けた取り組みとして国内でも実践しようとする動きが見られ始めている。登壇した阿部氏はまず、国内と海外のDevOpsへの取り組みにどのくらいのギャップがあるかについて、ガートナー調査を基に次のように解説した。

「グローバルでは41%の企業が何らかのDevOpsの取り組みをしていますが、日本では11%に留まっています。DevOpsに取り組む予定がないという企業はグローバルで19%だったのに対し、日本は28%です。この数字に私は衝撃を受けました。海外ではテーマの細分化と共に議論が次のステージへ進んでいるのに対し、日本では未だにやる、やらないの議論が中心です」(阿部氏)

ガートナー ジャパン リサーチ ディレクター阿部恵史氏

ではなぜ今、DevOpsなのか。

阿部氏は、ビジネスがデジタル化し、テクノロジーが企業競争力を左右するなか、戦略的テクノロジーを駆使して、いかに早く、安く、より満足のいくサービスを提供できるようにすることが重要になってきたことを指摘。実際、グローバルではITの安定的な維持・管理に主眼を置く「モード1」から、ITをビジネス成長の戦略的ツールとして最大限に活用し、革新のためのシステムに取り組む「モード2」へと踏み出している企業が増えているとした。

「例えば、米国の大手小売業のTargetでは、開発運用チームが別々だったサプライチェーンマネジメントとEコマースを統合しました。スモールチームを結成し、CI/CDなどの環境を整備し、基幹システムへのデータアクセスを標準化するAPIを開発。毎週80の機能をデプロイできるようになり、その結果、インターネット販売の売上は42%増え、店舗からの28万件以上の注文にも対応できるようになりました」(阿部氏)

Targetの創業は1902年。海外ではそんな老舗企業までがDevOpsに取り組むなか、「現状困っていない」「うちには関係ない」「時間、お金がない」として取り組みを拒否するのでは、企業として生き残れない状況なのだという。

「グローバルでは歩みが加速していて、競合の参入に困ったときには手遅れです。自分たちがやらなければ競合がやります。すぐにも創造的破壊者への道を目指すべき時期に来ているのです。しかもDevOpsは、日本企業こそ得意なアプローチです。Kanban、Andon Cord、Dojo、Poka-Yokeなど日本のカイゼン文化に由来する考え方が数多くあります」(阿部氏)