HoloLens入学式の裏にあったドワンゴ開発者の苦闘

[2017/05/22 08:30]星原康一 ブックマーク ブックマーク

開発ソフトウェア

4月5日に東京都港区のニコファーレで開催された「平成29年度 N高等学校ネット入学式」。複合現実(Mixed Reality : MR)対応HMD(Head Mounted Display)「Microsoft HoloLens」を使い、ウルグアイ前大統領 ホセ・ムヒカ氏らが仮想的に登壇するなど、新たな教育スタイルに挑むN高らしい演出は大きな話題を呼んだ。

実はこの入学式、インフラ開発を担当したドワンゴにとって非常に大きなチャレンジであった。

ドワンゴ 第二サービス開発本部マルチデバイス企画開発部 先端演出技術開発セクション セクションマネージャ 岩城 進之介氏

というのも、HoloLensをリアルタイムに多数台同時活用したのは世界初。開発元のMicrosoftに問い合わせても「そういった使い方は想定していない」との回答で、現実と仮想の世界が交じり合う空間を70人規模で共有できるかどうかはやってみないとわからないという状況に置かれていた。

しかも、担当エンジニアがHoloLensに触れたのは今年1月下旬。まったくの新ジャンルにおいて、検証、基盤構築、コンテンツ制作、テスト、運用準備までを約2カ月間で終えなければならないという、極めてタイトなスケジュールの中で挑んだのである。

「当然ながら開発過程では予期せぬこともありましたが、そこも含めて新技術に触れられる喜びを感じながら進められました」と語るのは、”HoloLens入学式”を自ら企画し、開発を進めたドワンゴ 第二サービス開発本部マルチデバイス企画開発部 先端演出技術開発セクション セクションマネージャの岩城 進之介氏である。

果たして岩城氏のチームは”HoloLens入学式”にどう挑んだのか。プログラミングスキルはもとより、エンジニアとしての能力の高さが伺えるエピソードが満載なので、挑戦の様子をご紹介していこう。

ニコ生でスカウトされた先進エンジニア


――まずは岩城さんの経歴を簡単に教えてください。

岩城 ドワンゴに入社したのは2011年1月ですね。前職では組込み向けの開発を行う企業に勤めていました。大口顧客からの発注が止まったある日、社長以外全員解雇という事態になり、転職することになりました。

当時、趣味としてニコニコ生放送で配信しており、その中で不採用の”お祈りメール”が届いたことをお知らせしたところ、ドワンゴの社員の方から「うちに来たら?」というコメントをもらいました。そこからとんとん拍子に話が進み、ドワンゴで働くことになりました。

――そんな経緯で入社されたんですね(笑) ドワンゴ入社後はどんなお仕事をされていたのでしょうか?

岩城 最初の所属はニコニコ生放送の開発チームでした。趣味の一環でニコニコ生放送を現実世界に持ってくる取り組みをしていたため、ニコファーレ立ち上げ時には会場のシステム開発を任されました。

その後は、初音ミクら、ボーカロイドがステージに上がる、ニコファーレのAR(拡張現実 : Augmented Reality)ライブシステムを開発したり、2015年 NHK紅白歌合戦における小林幸子さんの衣装を開発したり、とネットと現実を融合するような仕事に携わっています。

――御社Webサイトの経歴を拝見したところ、電王戦にも関わっていらっしゃるようですが?

岩城 そうですね。電王戦では、わかりやすいところだと、将棋ソフトが出力した一手を、駒を指す腕型ロボットに伝える仕組みなどですね。またそれと連動した、持ち時間のカウント制御も担当しています。

そのほか、放送用に対局状況を整理するシステムなどもあり、そちらもうちのチームで開発しています。

――岩城さんのチームには何名いらっしゃるのでしょうか?

岩城 私を入れて9人のチームです。先端演出技術開発セクションという部署で、「ネットとリアルの世界を融合し、その価値を高める」というテーマで働いています。

HoloLensこそ求めていたデバイス


――本題に入ろうと思いますが、今年のN高入学式ではどういう経緯でHoloLensを使うことになったのでしょうか?

岩城 昨年、Gear VRを使った”VR入学式”を実施したのですが、そこで感じた課題をHoloLensなら解決できると思ったので、私から提案しました。

――なるほど。そもそも昨年の“VR入学式”はどのように企画されたのでしょうか?

岩城 “VR入学式”は、ドワンゴの教育事業部から相談を受けて実施しました。

VR/ARを使った教育というのは以前から腹案として持っていたんです。ソードアートオンラインやゲームウォーズといった小説にそういったシーンがあり、未来の教育に有効な技術だろうという考えがありました。社内チャットツールなどでそういった発言をしていたので、VR入学式の依頼はうれしかったですね。

※ N高は学校法人角川ドワンゴ学園によって運営されているが、ドワンゴの教育事業部(当時)によって準備が進められていた。

――VR入学式も大成功に見えましたが、課題もあったわけですね?

岩城 昨年の入学式ではGear VRを使いました。VR用のHMDなので周囲は見えません。そこで、沖縄本校の奥平校長らが祝辞を述べるシーンなどでGear VRを装着し、それ以外では外して参加するという使い方でした。

やはり現実感に乏しい部分があるのは否めませんし、今後、教育にどう生かしていくかという点でビジョンが描きづらいというのが実情です。

そんな折にHoloLensが登場しました。HoloLensなら透過型のディスプレイなので、参加者全員で空間を共有できます。現実世界の中に投影できるので、大きさや距離感なども表現できるでしょう。聞いた瞬間に「これだ!」と思いましたね。日本での発売が決まったときに今年のN高入学式に使えないかと相談しました。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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4月5日に東京都港区のニコファーレで開催された「平成29年度 N高等学校ネット入学式」。インフラ開発を担当したドワンゴにとって、このイベントは非常に大きなチャレンジであった。
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4月5日に東京都港区のニコファーレで開催された「平成29年度 N高等学校ネット入学式」。インフラ開発を担当したドワンゴにとって、このイベントは非常に大きなチャレンジであった。

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