APIエコノミーを理解するための三つのポイント

【連載】

APIエコノミーの作り方

【第1回】APIエコノミーを理解するための三つのポイント

[2016/12/13 12:00]正野 勇嗣 ブックマーク ブックマーク

  • 開発ソフトウェア

開発ソフトウェア

連載目次

APIエコノミーとは

AIやブロックチェーンなど、Fintechは毎日のように世間を賑わせており、これまでのビジネススキームを壊す、いわゆる破壊的イノベーションの側面を持ち合わせています。

世の中の大規模システムに目を向けてみると、API(Application Programming Interface)による資産の再利用がFintechの一角を担っており、レガシーとも揶揄されるメインフレーム活用(レガシーモダナイゼーション)アプローチの一つとして注目されています。

これまで、APIは「プログラム間」の入出力を定義するインタフェースであり、プログラマーの世界に閉じた言葉でした。ぐるなびが「Google Maps API」を使って地図を表示した例は最も有名なAPIの例ですが、近年ではFoursquareUberの「配車API」を使うことで、お店やプレイスポットの検索のみではなく、タクシーの配車まで行うという事例も出てきました。

このように、APIで繋ぐ対象を単なる「プログラム」ではなく、「システム」「ビジネス」とすることで新たな価値を生み出す経済圏(エコノミー)のことをAPIエコノミーと呼びます。市場規模は260兆円とも言われ、大きな期待が集まっています。

本連載では、マネーフォワードなどのFintech企業による事例を交えた「ビジネス面」や、クラウド・マイクロサービスなどの「システム面」の技術向上などを踏まえてAPIエコノミーを解説します。

APIが繋ぐ対象の変化(プログラムからシステム・ビジネスへ)

APIエコノミーを理解するための三つのポイント

APIエコノミーを理解するには、まずは以下の3点を理解する必要があります。

  1. 「デジタルビジネス」におけるオープンイノベーションの潮流とプラットフォームビジネス(SoE)
  2. 「レガシーシステム」の課題とAPIエコノミーによる解決のアプローチ(SoR)
  3. APIの実態である「REST API」など、「マイクロサービス」の登場による生産技術の進化

連載第1回では1点目について説明します。

「デジタルビジネス」におけるオープンイノベーションの潮流

Uberの「配車API」とFoursquareの連携によるAPIエコノミーの事例や、個人の住宅を民宿として貸し出すAirbnbの「民泊」のようなシェアリングエコノミーの事例など、デジタルビジネスが本格化してきています。

デジタルビジネスは、ガートナーによると「仮想世界と物理的世界が融合され、モノのインターネット (IoT) を通じてプロセスや業界の動きを変革する新しいビジネス・デザイン 」と定義されています。SMAC(Social service、Mobile、big data Analytics、Cloud)を中心としたデジタル技術を組み合わせて、新しいビジネスが生み出されてきています。

2016年9月29日に、Uberはレストランの料理をUberに登録された配達員が配達する「Uber Eats」サービスを開始しました。これにより、これまで配達を行っていなかったレストランの料理を自宅で楽しむことができるようになります。

また、2016年11月17日に、Airbnbが「Trips」を発表し、「体験(Experiences)」「スポット(Places)」といった機能が追加されました。Tripsは旅に関わるさまざまな機能を持つもので、例えば「体験」においては、東京での盆栽ツアーなどその土地ならではの体験が楽しめます。このような体験型のサービスは他にも「仕事旅行」「asoview」といったものがあります。

このように前述の「配車API」「民泊」の成功にとどまらず、従来の境界をまたいだ新しいビジネスが、次から次へと加速度的に生まれてきています。

2016年版のDisruptor 50においてUberは1位、Airbnbは2位に位置付けられ、これまでのビジネスの常識を打ち壊すDirsruptor(創造的破壊者)・破壊的イノベーションとなっています。ビジネス環境のめまぐるしい変化にいち早く追従し、新しいものを素早く提供する手段として、「オープンイノベーション」と呼ばれる企業の枠組みを超えた共創が注目されています。

開発の現場に目を移しても、SpringTERASOLUNAなどソフトウェア開発で利用される部品がオープンソースとして公開されたり、IPAの非機能要求グレードなど各社の開発事例に基づくノウハウが公開されたりするなど、オープンイノベーションによって新しいビジネスを生み出そうという機運が高まってきています。

SoRからSoEへ、APIは公開する時代に

これまでのシステムを構築する手段は、SOA(Service Oriented Architecture)やEA(Enterprise Architecture)など、比較的企業に閉じたものが中心でした。

近年、SoR(System of Record : 記録するためのシステム)とSoE(System of Engagement : [顧客らとの]関係性を強化するためのシステム)という概念が出てきています。誤解を恐れずに言うと、SoRは基幹系等の企業に閉じたシステムを指します。それに対してSoEは、SNSやソーシャルアプリなど企業・個人間をまたがったシステムを指します。

SoEにおいては、さまざまなAPIが公開され、システム間をサービスでつなぐことでアプリケーションを構築していく風潮があります。NTTドコモが携帯電話のネットワークから人口統計情報を提供する「モバイル空間統計API」を神戸市に公開し、特定エリアの時間帯ごとの性別・年代の人口分布情報をスマホサービス開発に活用しています。

また、金融機関においては、口座の残高照会APIを特定企業に公開し、新しいサービスを創出するケースも出てきました。例えば、SBIネット銀行のAPIとマネーフォワードを連携した会計アプリなどはその一つです。

プラットフォームとしてのAPIエコノミーの形態

APIに関する動きを挙げると、今年9月には、GoogleがAPI開発に関わる顧客やプラットフォームを持つ「Apigee」の買収を発表しました。また、Twilioは通話やSMSのレイヤ向けの自社開発APIをKDDIやUber・Airbnb・Lyftといった国内外の企業に提供しています。シティバンクは「Citi Mobile Challenge」というオープンイノベーションの取り組みの中でバンキングに関わるAPIを提供しています。

このようにAPIを単体で活用していくというよりは、複数のAPIをプラットフォームとして提供していく形態が今後も進んでいき、Google PlayやApp Storeのような形でマーケットプレイスとして確固たる地位を築くものが出てくる可能性があります。

標準化の動きとしては、2015年11月にマイクロソフトやグーグルなどによって結成されたOAI(Open API Initiative)が注目です。OAIは、SwaggerベースでのREST API標準化を目指しています 。

また、APIを公開する範囲及びマネタイズのモデルは以下の3種類あり、プラットフォームとしてのAPIエコノミーのビジネスモデルの考え方はそれぞれ大きく異なってきます。

  • パブリックAPI :
    社外に無償で提供するAPIであり、直接的な課金はありません。それ自体がビジネスにはなることはありませんが、ブランド力向上、開発案件のきっかけ作りいった効果が見込まれます。いわば間接的な課金を想定します。
  • コミュニティAPI :
    契約を交わしたパートナーなどの限られた範囲に、原則課金の上で公開します。「プラットフォームビジネス」としての可能性が期待される領域です。
  • プライベートAPI :
    社内向けに提供するAPIであり、直接的な課金はありません。パブリックAPIと同様、直接的なビジネスにはなりませんが、既存部品再利用の推進により開発生産性の向上などを目的とします。

*  *  *

SMAC技術やDisruptorなどにより、デジタルビジネスにおけるビジネスのスピードは加速度的に上がってきています。APIエコノミーに関して、ビジネスを加速させるプラットフォームとして捉えて活用していく流れが今後も強まっていくと考えられます。

Fintechの領域においても、2015年10月に欧州委員会がPSD2(revised Payments Services Directive)を採択し、口座にアクセス可能なXS2A(Access to the Account) APIのTPPs(Third Party Providers)への公開を義務付けています。

日本では全国銀行協会により「オープンAPIのあり方に関する検討会」が設置され、今年度中にオープンAPIに関する方向性が提示される見込みであり、今後の動きから目を離せません。

次回は、システム開発における大きな潮流である「レガシーモダナイゼーション」の切り口でAPIエコノミーを説明します。

著者紹介


正野 勇嗣 (SHONO Yuji) - NTTデータ シニア・エキスパート

2011年頃まで開発自動化技術のR&Dに従事。その後、開発プロジェクト支援やトラブルシューティング等に主戦場を移す。「ソースコード自動生成」に加えて、JenkinsやMaven等の「ビルド自動化」、JsTestDriverやSelenium等の「テスト自動化」を扱うようになり、多様化する開発自動化技術動向に興味。

最近は第四の自動化であるInfrastructure as Code等の「基盤自動化」の魅力に惹かれている。開発自動化技術に関する雑誌・記事執筆も行う。2児のパパ。

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https://news.mynavi.jp/itsearch/2016/12/13/api/api300-250.jpg
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