5月24日、Javaをテーマにした国内最大級のカンファレンス「Java Day Tokyo 2016」が東京都品川区の東京マリオットホテルで開催された。米OracleでJava SE/ME 開発部門 シニア・ディレクターを務めるBernard Traversat氏や、Java EE エバンジェリストのDavid Delabassee氏をはじめ、国内外の著名エンジニアが集い、Javaの最新技術が披露された。

本稿では、同カンファレンスの基調講演の模様をご紹介しよう。

Java 9の目玉「Project Jigsaw」

来年3月のJava 9リリースを控える中で開催された今回のJava Day Tokyo。基調講演でもやはりJava 9の話題が中心となったが、技術仕様の解説だけでなく、IoTやロボットを使ったデモンストレーションも披露されるなど、Javaの世界の広がりを改めて印象づけるセッションとなった。

注目を集めるJava 9の紹介役を務めたのは前述のTraversat氏である。Traversat氏は、大きな変更点として、長きにわたって議論と開発が続けられてきたProject Jigsawが組み込まれることを説明。ソースコードの依存関係を記述する階層構造に「モジュール」という概念を導入することを改めて解説した。

また、Traversat氏は、「The Java Shell」(JEP 222)と呼ばれるインタラクティブなツールが導入されることも紹介。こちらは、REPL(Read-Evaluate-Print Loop)を実現するもので、インタプリタ型言語のようにコードを逐次読取り、結果を出力するというもの。現時点では、Javaプログラミングの学習を効率化するうえで有効と見込まれている。

米Oracle Java SE/ME 開発部門 シニア・ディレクター Bernard Traversat氏

JDK 9の概要

そのほか、Java 9のさらに先のリリースをターゲットにした開発プロジェクトとして、「Valhalla」と「Panama」の2つを紹介。Valhallaにより、Value型と呼ばれる型が定義可能になり、メモリフットプリントの改善につながるという。

また、Panamaでは、C言語のように、OSネイティブの機能をJVMから利用可能にする。Traversat氏は、「アプリケーション開発者がハードウェアの機能を使いやすくする」という、Javaを生み出した開発者らが打ち出したコンセプトをさらに具体化するものと紹介した。

Traversat氏は最後に「OpenJDKの活動は皆様の協力により成り立っている」と強調。プログラムの開発や、EA(Early Access)版のフィードバックで、ぜひとも貢献してほしいと訴求した。

マイクロサービスがプログラミングを大きく変える

続いて登壇した米Oracleの開発ツール部門 プリンシパルを務めるGeertjan Wielenga氏は、NetBeansの最新機能を紹介。前述のJigsawへの対応が進められることに触れ、”module-info.java”ファイルの記述や、モジュール間の依存関係を可視化する機能などが搭載されていることをデモンストレーションで示した。

そのほか、NetBeansがHTML・CSSにも対応し、Chromeと高いレベルで連携できることにも言及。HTML・CSSの記述を、ドラッグ&ドロップなどのUI操作を交えながら進められるほか、変更内容が即座にChromeに反映されるデモンストレーションも披露した。

米Oracle 開発ツール部門 プリンシパル Geertjan Wielenga氏

NetBeansではJigsawの対応を進めている

また、Java EEについて説明したDelabassee氏は、サーバサイドプログラミングの潮流を解説。影響力の大きいものとして、クラウドとマイクロサービスの2つを挙げた。

特にマイクロサービスに関しては、「アプリケーションの開発方法が大きく変わる」とコメント。一枚岩の大きなサービスから小さいサービスの集合体になり、ステートフル中心からステートレス中心に変わる。実行環境もオンプレミス中心からクラウド中心へと移り、開発・運用体制は縦割りだったものが、小さな専門チームが協力して進めることになると予見した。

Java EEでは、こうした流れを受け、モジュール対応により実行環境の最適化やパッケージモデルの簡素化を図るほか、サーキットブレイカーの統合、SwaggerおよびMavenの統合、Concurrency APIの導入、リソースの利用上限設定機能の対応などを進めていくという。

米Oracle Java EE エバンジェリスト David Delabassee氏

次世代Java EEの方向性

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