ガートナー ジャパンは4月23日~25日、「ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス 2019」を都内にて開催した。

本稿では、日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部CTO兼クラウド・アプリケーション・サービス事業部 部長の二上哲也氏が登壇した講演「デジタル変革 第二章を実現する、ハイブリッド/マルチクラウド活用術」の模様をレポートする。

“次”に突入するデジタル変革

「デジタル変革は今、第2章(Chapter 2)に突入しています。第1章と第2章の違いは、受け身の変革から攻めの変革へと変わったこと。外圧に対する受け身のデジタル変革から、自分たちで攻めていく姿勢がより鮮明になってきました」

二上氏はこう講演を切り出し、その具体的な変化として、実証実験やPoCの段階からサービスを本格展開するフェーズに移ってきたことを紹介。また、基幹システムのデジタル化やミッションクリティカルシステムのクラウド化も進展しており、特にクラウドは、マルチクラウド化/ハイブリッドクラウド化が主流になっていることを指摘した。

「IBMが世界113社のお客様を対象に行った調査では、複数のクラウド環境を使用している企業は全体の94%、複数のパブリッククラウドを使用している企業は67%に達していました。こうしたハイブリッド/マルチクラウドの利点は、『迅速で柔軟なリソース確保が可能なこと』『データ機密性やコストに合わせた柔軟な最適配置が可能なこと』『各クラウドの得意分野を使い分けできること』にあります」(二上氏)

日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部CTO兼クラウド・アプリケーション・サービス事業部 部長 二上哲也氏

IBMではこうしたハイブリッド/マルチクラウドの進展を踏まえ「第2章へのクラウドジャーニー」を顧客に提案しているという。クラウドジャーニーとは、クラウド活用を成功に導く道筋のことで、「クラウド戦略策定」「クラウド移行」「クラウドアプリ構築」「クラウド管理とガバナンス」という4つのフェーズで構成されている。

例えば、クラウド戦略策定では、現状分析から目標確認、アプリごとの方針作成、次世代アーキテクチャ策定を行っていく。方向性が決まったら、VMwareの移行やミドルウェア移行、UI/US移行、コンテナ移行、API化、基幹接続など、どの部分の移行が適切かを判断しながらクラウド移行を進める。

そして、クラウドアプリ構築では、新規構築やアプリケーションの再構築、DevOpsの実現、マイクロサービス化などを実施。さらにクラウド管理とガバナンスではマルチクラウド管理/運用、クラウド利用課金管理、アーキテクチャガバナンスを支援していく。

「IBMのあるグローバルのお客様は、オンプレにある5,000台のサーバを5~10年かけて徐々にクラウドに移行しています。あるシステムは新規構築、あるシステムはアプリケーション再構築といったように仕分けをしながらロードマップを作り、それに沿って移行を進めています。日本のお客様のなかにも、そうした移行に取り組む企業が増えてきました」(二上氏)

日本の多くの企業において、第2章へのクラウドジャーニーのなかで最初に課題になるのが「クラウド戦略策定」だという。戦略策定にあたっては、コスト削減やアプリケーション開発力向上、IT構造改革、ビジネスの改革/創出、セキュリティ対策といった課題に対して、適切な戦略/構想を具体的なタスクとして策定し、推進していくことが必要になる。

クラウド戦略では課題に対し、具体的なタスクを策定/推進しなければならない

二上氏は、IBMではこのクラウド戦略の策定を『現行IT環境の理解』『アプリ/ポートフォリオ分析』『ソリューション選定/次世代アーキテクチャ策定』『移行方針及びビジネス・ケース作成』『移行の実行計画策定』の5つのステップでサポートしていることを言い添えた。