新経済連盟は4月7日、8日、グローバルカンファレンス「新経済サミット2016」を開催した。2013年の初開催から数え、3回目の開催となる同カンファレンスには、今年も世界の新経済/産業を牽引する多くの起業家やイノベーターが集結し、金融やIT、医療などさまざまなテーマで活発な議論を交わした。本稿では、8日に行われた基調講演の模様をお届けする。

次なるコンピューティング・プラットフォームの”波”は?

Playground Global CEO アンディ・ルービン氏

Playground Global CEO アンディ・ルービン氏

基調講演に登壇したのは、”Androidの父”として知られるアンディ・ルービン氏だ。氏はAndroidをGoogleに売却し、自身もGoogleで勤務した後、ハードウェア系スタートアップ企業に対する資金提供を目的としたPlayground Globalを創業。現在、CEOとして事業を展開している。同社の特徴は、社内に技術部隊を設け、起業家の製品開発を技術面からも支援する点だ。ルービン氏はこれをサーフィンにたとえ、「1人で波を起こそうとパドリングするより、皆で大きな波に乗ったほうが楽しいでしょう?」と微笑む。

「ロボット工学と人工知能がついに結ばれる」と題された氏の講演では、冒頭、10~15年ほどのサイクルで繰り返されるコンピューティング・プラットフォームの”波”について語られた。

「インターネットは、WindowsやGUIがなければ成功しなかったでしょう。モバイルの進化によって、インターネットを持ち歩けるようになりました。このように、プラットフォームはお互いに関連しながら派生して成長し、次の”波”になるのです」(ルービン氏)

Platform Cycles(Cont’d)

ただし、こうした波の誕生にもタイミングというものがある。では、次なるコンピューティング・プラットフォームの波は何なのだろうか。ルービン氏は「私はAI(人工知能)だと思う」と語る。

「先日、AIであるアルファ碁がプロ棋士に勝ちました。AIの歴史はまだ始まったばかりですが、タイミングがすべてうまく合いさえすれば、モバイルやインターネットの勢いを超え、次の産業革命にもなりうると思っています」(ルービン氏)

氏によれば、その際にAIの”頭脳”となるのはクラウド・プラットフォームであり、センサによって収集された膨大な量のデータを元に学習することで、将来的にはより重要な判断を行えるようになるという。これをロボット工学と組み合わせることで、実世界で行動でき、人間と連携して仕事をするロボットが可能になるわけだ。

そこでルービン氏がステージに招き入れたのが、かつてGoogleに買収された日本企業SCHAFTの元CEOであり、現在東京のロボティクスチームでマネジャーを務める中西雄飛氏である。中西氏は、開発中のロボットが狭い場所やさまざまな自然環境の中を移動したり、パイプを踏んでも転ばずにバランスを保ったりするデモ動画を紹介するとともに、ステージ上で最新のプロトタイプを披露した。

中西氏は、ステージ上で最新のプロトタイプを紹介。ちなみに、このロボットに名前はまだないそうだ

中西氏らはロボットの足と移動性能にフォーカスし開発しており、二足歩行ロボットが持つメリットとして「人が歩ける場所は、どこでも移動できる潜在能力がある」と語る。まだ具体的な用途は想定していないものの、台車や掃除機といったアプリケーションとの組み合わせのほか、アームを付けることでより複雑な使い方も考えられると説明した。

デモを踏まえ、ルービン氏は「抜本的にコンピュータサイエンスの世界が変わろうとしています。線形的なプログラミングの時代は終わり、データから学ぶニューラルネットワークが台頭してくるでしょう」と語気を強める。

それでは、そのときエンジニアは何をしているのか。氏は「20年後、エンジニアはAIの頭脳(クラウド)に新しいことを教える先生になっていると思います。私の息子たちがロボットに対して何かを教え、まったく別の新しいことができるようになる。そんな未来を夢見ています」と語り、講演を締めくくった。