Sansanは2月2日、同社の年次カンファレンス「Sansan Innovation Project 2017」を東京都内で開催した。「働き方進化論」をテーマにした同イベントには、試行錯誤しながらも積極的にワークスタイル変革に取り組む企業が参集し、会場は大いに賑わっていた。

ここでは、多数行われた講演の中から、AGC旭硝子 情報システム部長の伊藤肇氏による事例講演「クラウド+モバイル=ワークスタイル変革? ~素材メーカーの奮闘談(まだまだ道半ば)~」をピックアップして紹介しよう。

時の流れと共に変化したクラウド活用の「狙い」

1907年創業のAGC旭硝子は、三菱グループ創業家の岩崎家にルーツを持つ。創業当時、ガラス製造は非常にリスクの高い事業だと言われていたという。その領域であえて、ビジネスを立ち上げた同社には「易きになじまず難しきにつく」というDNAが根付いている。現在ではグローバルで5万1,500人の従業員を抱え、200社の系列会社を有し、世界30カ国以上に拠点を構える大手素材メーカーとしてご存じの方も多いだろう。

そんなAGC旭硝子では、2014年より新たなIT戦略を打ち出し、グループを挙げてクラウド活用とモバイル化を推進している。まずクラウド活用については、インフラにAWSを採用し、ソフトウェア面では名刺管理サービス「Sansan」などSaaSを積極的に活用する。

一方、モバイル化に関しては、本社を中心にスマートフォンを2,000台配備。業務データの安全性確保にはMobileIronのEMM(Enterprise Mobility Management)プラットフォームを利用しているという。

AGC旭硝子 情報システム部長 伊藤肇氏

「クラウド活用の取り組みは、検討開始から含めて約3年経ちましたが、予想を上回るペースで社内に浸透中です。現在、AWSを活用したシステムを次々と構築しています」(伊藤氏)

2014年にクラウド活用を掲げた際、AGC旭硝子は2つの方針を打ち出した。1つは「クラウドファーストであること」、もう1つは「BCP(Business continuity planning)の実現」である。これらの方針を踏まえ、同社が目指したのが「ハードウェアの交換をゼロにして仕事の軸を変え、コストの最適化を図ること」だ。しかし、そこに今、変化が起きているという。

「方針は維持しつつも、その狙いについては2017年に入って大きく変化していることを実感しています。現在では、クラウドファーストによってビジネスに追随するスピードを獲得し、デジタル化に挑むための『武器』を獲得することが最大の目的となっているからです」(伊藤氏)