note、BASE、UUUMなどクリエイターエコノミーを推進・支援する7社は7月8日、都内で記者会見を開き、クリエイターエコノミー協会の設立を発表した。同日から会員企業の募集も開始している。
あらゆる人々がクリエイターになり、経済活動を行う支援する仕組みが必要
冒頭、note 代表取締役CEOの加藤貞顕氏は「インターネットが登場して四半世紀が経過したが、この間、個人の力の拡大はずっと続いている。その結果、行動様式や経済活動が変化し、大きな違いは従来は消費者だったが、生産者・販売者となり、双方向的な経済活動になっている点だ。また、”クリエイター”(発信者・販売者・生産者)という言葉の意味が変化しており、ごく一部のプロの表現者を表す言葉だったが、現在は誰でもコンテンツや商品などを作成・発表・販売ができるようになっている。これはクリエイターの概念が広がり、すべての人がクリエイターになれる時代になったことを意味している。そして、このようなクリエイターの周囲に形成された経済圏がクリエイターエコノミーだ」と話す。
クリエイターエコノミーが広がった背景には、SNSや文章・写真・動画などを発信するプラットフォームを通じて、多くのクリエイターがネット上で活躍するようになり、広告収入だけでなく、コンテンツやスキルの販売、ECなどクリエイターが直接収益を得られる仕組みが広がっている。また、業務マネジメントや事務手続きなど活動に必要な支援を行うサービスも増えており、こうした幅広いジャンルのサービスがクリエイターエコノミーの発展を支えているという。
インターネットの発展で誰でも自由に表現できるプラットフォームが数多く生まれており、大きな企業や団体ではなくとも、個人が支持層や顧客とつながることで、収益を得られるようになっている。職種や立場にとらわれず、これまで消費者だった人々が生産者・販売者にもなる、双方向の経済活動がオンラインを中心にスタートしている。
NeoReach Social Intelligence APIとInfluencer Marketing Hubの共同調査によると、クリエイターエコノミーの総市場規模は約1042億ドル(2021年5月時点)と推定されている。コロナ禍により、外出制限やオンライン取引が増加したことで、これらの流れは加速し、SignalFireが2021年に発表したレポートによると、クリエイターであると自認している人は世界で5000万人に達し、少なくとも200万人以上がフルタイム以上の収入を得ているという。国内でも多くの人々がクリエイターとして、生計を立てるようになっている。
これまでの法律や社会制度の多くは、誰もが買い手にも売り手にもなりうる双方向の取引を前提にはしていなかったが、クリエイターエコノミーの活性化には既存の枠組みや考え方の転換、個人や小規模事業者が活動を続けるための支援も必要となっている。
加藤氏は「オンラインで過ごす人々の拡大は止まることがなく、ネット上に暮らすようになるだろう。そのときに、あらゆる人々がクリエイターになり、経済活動を行う支援する仕組みが必要となるため、協会を立ち上げた」と力を込めた。
BASE 代表取締役CEOの鶴岡裕太氏は「協会のミッションとして『クリエイターが活動しやすい社会環境をつくり、その自由かつ安全な活動を促進する』を掲げた。2018年以降から明確にクリエイターの活動が増加したが、これまでのモノを売る人と買う人は別のものであるという定義がされており、現在の常識とギャップが生まれているためクリエイターが自由かつ安全に活動できる環境を構築する。クリエイターの権利・自由を担保する活動を行う」と述べた。
クリエイターエコノミー協会の活動内容とは
同協会では、クリエイターエコノミーの普及・促進とその活性化に向けて、さまざまなアクションを実施していく。代表理事はBASE、note、UUUM、会員企業は正会員がCAMPFIRE、Voicy、ココナラ、マネーフォワードとなり、アドバイザーは国際大学 グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授となる。
活動内容は「クリエイティブ活動の普及・促進」「クリエイターの保護」「クリエイターの活躍を促進するための政策提言」の3点を挙げている。
クリエイティブ活動の普及・促進では、今後は誰もがクリエイティブ活動を行い、それを必要としている人々に価値を届け、収入を得ることもできる時代を迎えるため、これらを広く世の中に伝え、クリエイティブな活動の普及・促進を目指す。また、クリエイターが活動を続ける上で知っておくべき情報の啓発も併せて行う。具体的には、クリエイターエコノミーに関する情報発信、各種勉強会やイベントの実施、政府・行政機関への働きかけを予定している。
クリエイターの保護については、個人で活動することの多いクリエイターは、誹謗中傷の矢面に立たされたり、仕事の依頼主から利用されたりしやすい立場にあ、特に突然注目されて才能を見いだされる人は、そうしたトラブルへの対策が不十分なままで、さまざまなリスクに晒される事態がしばしば発生してきたという。
これまで、買い手の保護にスポットライトが当てられていたが、フリーランスの環境整備と同様に売り手にもなるクリエイターの保護について、行政・関係団体と連携する。具体的には、誹謗中傷対策の検討および各プラットフォームでの対策実施、クリエイターを保護するようなルールづくりなどを予定。
クリエイターの活躍を促進するための政策提言に関しては、クリエイターの活躍を促進するためには、クリエイターの活動を支えるプラットフォームやサポート事業の存在が不可欠となることから、クリエイターが活動しやすい基盤を整備するためには、新たな商習慣に合わせた新しいルールの用意や、必要以上に規制をしないこともポイントになる。そたのめ、クリエイターエコノミーの実態を把握しつつ、行政・関係団体と連携し、具体的にはクリエイターの活動を阻害する法規制の緩和やクリエイターの活動を促進する新たなルールづくりを予定している。
UUUM 代表取締役社長執行役員 兼 CEOの鎌田和樹氏は「7社が手を取り合ってクリエイターが活動しやすい世界を作っていく。各社がクリエイターに対して取り組んできたことが手を取り合うだけでも多くのクリエイターにアプローチでき、その結果、これまでにないサービスや企業が参画などで啓蒙活動を通じながら、クリエイター活動できるような世界を作っていければと考えている」と展望を語っていた。