仏モバイル端末ベンチャーのWiko(ウイコウ)は日本法人「ウイコウ・ジャパン株式会社」を設立し、日本市場に参入することを明らかにした。第一弾の端末としては、SIMフリーで低価格モデルの「Tommy」を2月25日より投入する。

仏モバイル端末ベンチャーのWiko(ウイコウ)は日本法人「ウイコウ・ジャパン株式会社」を設立し、日本市場に参入することを明らかにした。第一弾の端末としては、SIMフリーで低価格モデルの「Tommy」を2月25日より投入する。

フランス2位の急成長中メーカー

Wikoは2011年に創業した、フランスのモバイル端末製造メーカーだ。2012年に最初の端末をフランス国内で発売し、現在は世界33カ国で販売しており、日本が34カ国めの市場進出となる。発売以来各地で好評を博しており、フランスでは市場シェア2位(約19%)、西ヨーロッパでも5位と、iPhoneやアジア圏の人気ブランドに比肩する人気を集めている。2016年には累計販売台数が1,000万台を超えており、2年で販売台数が2倍の伸びを記録するなど、急成長中のベンチャー企業だ。

創設からわずか5年で欧州を代表するメーカーに成長する成功を収めている

日本市場参入については、日本がハイエンド志向である特殊なマーケットであることは十分承知しつつも、2020年の東京オリンピックを目標に国がネットワーク環境の整備に力を入れていることや、MVNOの成長でSIMフリー端末のマーケットが拡大していることから参入のチャンスであると判断。また、世界的に見ても非常に先進的な日本の通信インフラを通じてノウハウを積み重ね、グローバル展開に活用したいという思惑もあるとのことだ。

Android 6.0搭載のクアッドコアモデル

Wikoの日本市場参入製品となったのは、クアッドコアのSoCを搭載した「Tommy」だ。価格は14,800円(税別)とローエンド帯の端末だが、VoLTE対応や対応チャネルの範囲(後述)など、スペック面では他社のローエンド端末を上回る機能を持っている。実勢価格的にはFREETELのPriori4やZTE Blade V6あたりと競合することになる。また、ローエンド端末としては珍しく、OSにはAndroid 6.0 Marshmallowを採用している。

Wikoによると、Tommyはもともとヨーロッパのキャリア各社からの声を元に開発された端末で、ヨーロッパの若年層の使い方を参考にしているという。日本でもターゲットは10~20代の若年層であり、通話よりもSNS、そしてInstagramやゲームといったエンターテインメントを重視する使い方を想定。「エンターテインメントガジェット」という位置づけで販売していくという。

本体デザインはシンプルだが、背面のカラーは6色で展開する。発売当初はWikoのコーポレートカラーでもある「ブリーン」(Bleen:BlueとGreenからの造語)と「フレッシュレッド」、「トゥルーブラック」の3色展開で、「サンイエロー」「ホットピンク」「クールグレー」は後日投入される予定。カバーは工具無しで簡単に外すことができるが、多色への交換は前提としていない。

「初音ミク色」といったほうがわかりやすそうな「ブリーン」がメインカラー。カラフルで楽しそうなイメージ作りには成功している。ちなみにフレッシュレッドとトゥルーブラックにはレザー調のシボが入っている

カラーはほかに「フレッシュレッド」、「トゥルーブラック」を用意。のちに「サンイエロー」「ホットピンク」「クールグレー」も投入予定

カメラのリングにもカバーと同色で着色されているため、カバーだけを交換すると違和感が残ってしまう。こういう細かいところまできちんと処理されている点は好ましい

スペック面ではクアッドコア・1.3GHzのSnapdragon 210(MSM8909+)を搭載。Snapdragonシリーズではローエンド向けの32bit SoCで、日本国内ではAndroid搭載のフィーチャーフォン(いわゆるガラホ)への搭載例が多い。メインメモリーは2GB、フラッシュROMは16GBで、今時の端末としてはメインメモリーがやや少なめなので、一度にたくさんアプリを起動すると若干動作が重くなる可能性はある。発表会場でデモ機に触れた限りでは動作はスムーズだったが、できれば使わなくなったアプリはこまめに終了させながら使いたいところだ。ディスプレイはHD解像度(1280x720ドット)の5インチ・ISP液晶パネルを採用。ストレージには内蔵のフラッシュROMのほか、microSDカード(最大64GB)も利用できる。カメラはメインカメラがソニー製撮像素子を採用した800万画素、インカメラは500万画素となっている。

本体下側にmicro USB端子を搭載

カバーを外すとバッテリーが交換できる。バッテリーの容量は2,500mAh

microSIMスロットとmicroSDスロットがカバー下に用意されている

LTEの対応バンドは「B1」「B3」「B8」「B18」「B19」。発表会では明言されなかったが、各社共通のB1だけでなく、ソフトバンクのみが利用している「B8」(900MHz帯)とauのみが利用している「B18」(800MHz帯)に対応しているため、SIMフリー端末としては非常に珍しく、主要3大キャリアすべてに対応する可能性が高い。3GはWCDMAのみだが、VoLTEに対応しているため、auで音声通話が利用できる点も、au対応していると思われる根拠となっている。なお、SIMカードはmicroSIMに対応。カードスロットは2つ用意されているが、設定で切り替えて使うもので、同時待ち受け・同時利用(DSDS)対応ではない。無線LANはIEEE 802.11b/g/nに対応する。

仕上がりや細部のディテールを見ると、国産メーカーとも、アジア系のメーカーとも異なる、欧州ブランドならではの個性が感じられる。残念なのはフラッシュメモリーの容量の少なさだが、価格的に考えると止むを得ないところか。これについてはmicroSDによる拡張や、クラウドへのファイル保存を活用してほしいとのことだった。

対応バンドの広さが期待通りに機能すれば、マニア的にも楽しめる端末になりそうだ。デザインのよさも合わせて、今年前半の端末としては台風の目になりそうな予感がある。なお、Wikoジャパンの前田浩史社長によれば、Tommy以外にも年内にあと2~3機種を投入したいとしており、どのような端末が投入されるのかが期待される。