日本マイクロソフトは5月26日~27日、アプリケーション/Webの開発者や企業のIT管理者などのエンジニアを対象とした技術カンファレンス「de:code 2015」を、ザ・プリンス パークタワー東京にて開催した。

カンファレンス初日、約140分にわたって行われた基調講演には、米マイクロソフト Azureチームのコーポレートバイスプレジデント ジェイソン・ザンダー氏や、同社デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズムグループのシニアディレクター ジョルジオ・サルド氏らが登壇。モバイル、クラウド、IoT・ビッグデータといった環境におけるインフラストラクチャ、iOS/Androidアプリの開発やOSS活用などの多岐にわたる最新のマイクロソフトのテクノロジについてデモンストレーションを交えながら紹介した。

本稿では、Windows 10アプリのプラットフォーム「Universal Windows Platform(UWP)」の話題を中心にレポートする。

「Universal Windows Platform」でアプリをすべてのデバイスへ

マイクロソフトは、デスクトップ、モバイル、ホログラムなどさまざまなデバイスに対し、ひとつの経験を提供する「One Windows」というビジョンを掲げており、基調講演後半に登壇したサルド氏によると、Windows 10は10億台のデバイスをターゲットとしているという。

このビジョンを実現するものとして、アプリケーションプラットフォーム「Universal Windows Platform(UWP)」がWindows 10に採用されている。同じアプリケーションを異なるデバイスで動作させることが可能な「UWPアプリ」のデザイン、開発、デバッグをトータルでサポートするものだ。

米マイクロソフト デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズムグループ シニアディレクター ジョルジオ・サルド氏

「Universal Windows Platform」は、デスクトップやモバイルだけでなく、XboxやIoTまであらゆるデバイスをカバーする

デザイン面でいうとたとえば、日本マイクロソフトの高橋忍氏が紹介した「楽天トラベル」のUWPアプリは、デバイスのディスプレイのサイズに合わせてUIが変化する「レスポンシブデザイン」をベースに作られており、同一の情報を異なるデバイスごとに最適な形で提供することが可能だ。

レスポンシブデザイン

デバイスに応じて最適なUIを提供する

「楽天トラベル」のアプリ レスポンシブデザインをベースに作られているため、画面の大きさによっても表示される内容が変わってくる

また、Windows 10では、Windowsランタイムが再構成された。UWPは、Windowsカーネルと各開発言語の間に位置しており、UWPアプリではひとつのバイナリが複数のデバイスで動作する。UWP APIは統一され、ワンパッケージで2500以上の新たなプラットフォーム機能が利用できる。高橋氏はそのいくつかの機能についてデモンストレーションで紹介した。

UWPはWindowsカーネルと各開発言語の間に位置している

2500を超える新しいプラットフォーム機能

新しいマップコントロールでは、俯瞰図を表示して、ピンを立てることができる。また、3Dの地図も表示できる。

俯瞰図にピンを立てる

3D地図

「MapControl」で機能を追加

3Dマップの表示にはMapControlのスタイルを変える

このソースコードをみてみると、「MapControl」を貼っているだけであることがわかる。3Dマップを表示させる場合も、MapControlのスタイルを変えるだけで、コーディングは必要ない。さらに、デスクトップとWindows Phoneの表示を比べてみると、レスポンシブルなデザインになっていることもわかるだろう。

左がデスクトップアプリ、右がWindows Phoneアプリの表示 レスポンシブルデザインに対応していることがわかる

UWPが対応しているのは、PCやタブレット、スマートフォンだけではない。XboxやHoloLensにも対応しており、たとえばDirectXで書かれた3DビューをHoloLensで表示させると、ユーザーの前にホログラムとして現れ、さまざまな角度からみることができる。

デモンストレーションとして、DirectXで書かれた3DビューをHoloLensで表示させた際の動画が紹介された

これは、ユーザーをカメラオブジェクトとみなし、右目用と左目用の視野角の情報を常にアップデートすることで左右の情報を作り、レンダリングするという仕組みになっている。

右目と左目の視野角の情報を常にアップデートしている

またサルド氏は、既存のコードをUWPに移行させるためのツールキット「ブリッジ」についても紹介。Windowsストアでアプリを公開するために、WebサイトをUWPアプリ化することができる機能について、Webブラウザ上で動作するフライトシミュレーターを用いたデモンストレーションを行った。

右上にXboxの通知が表示されており、アプリ化されたことがわかる

さらにブリッジでは、既存の.NETおよびWin32ベースのWindowsアプリケーションをパッケージ化することに加え、既存のAndroid/iOSアプリのソースコード(Java/Objective-C)を利用し、UWPアプリを構築することもできるという。

.NETおよびWin32ベースのWindowsアプリケーションをパッケージ化

ブリッジはその名が示すように、Windowsとほかのプラットフォームとの「橋渡し役」というわけだ。

“Empower every person and every organization”

日本マイクロソフト 平野拓也氏 7月より同社代表執行役社長に就任予定

基調講演の冒頭では、日本マイクロソフトの平野氏が、「マイクロソフトはこれまで、ユーザーをWindowsにお招きしたあと、そこに壁を立てて囲い込んでしまっていたかもしれない」と過去を振り返った。

しかし平野氏は「我々は、PC中心の考え方から、人を中心とした考え方に変化している」と、過去との決別を表明したうえで、iOS/AndroidやLinuxなど、競合とのパートナーシップを強化させていることを説明しつつ、「すべての人と組織が、より多くのことを成し遂げられるように」という同社のビジョンを提示した。

本稿で取りあげたUWPも、このビジョンに沿うものになっていることがおわかりいただけたのではないだろうか。