スマートフォンの利用者数が増えている2013年現在、キャリア各社は激増するトラフィックの対応に迫られている。だが、続々と発表されるスマート家電などの新たなモバイルサービスの提供により、ますます通信量が増大していくことが確実となっており、NTTドコモ(以下、ドコモ)では2020年以降のトラフィックは2010年の1000倍以上に増加すると予測している。

10月1日から5日まで千葉県・千葉市の幕張メッセで開催されているアジア最大級のIT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」において、ドコモは次世代移動通信技術「5G」について紹介している。同社が進める最先端の通信ネットワーク技術といえる「5G」 の通信とは、どのようなものなのだろうか?

CEATEC JAPAN2013のドコモブース。新時代のウェアラブル端末「インテリジェントグラス」やドコモの端末と通信を使った人口統計システム「モバイル空間設計」など注目度が高い展示で話題になっている

「5G」通信のキーワードは「高周波数帯の活用」

5G通信における高周波数帯の活用について説明をしているドコモの齋藤祐也氏

CEATEC JAPAN 2013の開催初日となる10月1日、ドコモブースでは、同社無線アクセス開発部の齋藤祐也氏が「5G」通信についてプレゼンを行なった。齋藤氏の話によると、ドコモの次世代超高速通信は高周波数帯を活用したシステムになるという。

現状、700~900MHzのプラチナバンドに注目が集まっているが、5Gは5~10GHzの帯域を使っての通信を検討しているという。現在の3GHz帯以下の周波数帯が飽和状態にあるため、現在使われていない帯域に着目したというわけだ。この高周波数帯は、広い帯域が使用できるため高速大容量通信が可能になるという利点がある。しかし、利用する上でクリアしないといけない問題もあるという。

扱うのが難しい高周波数帯を活用するドコモの方法とは?

高周波数帯をモバイル通信に利用するのは簡単なことではない。というのも、700~900MHzの電波が遠くまで届いて建物の中でもつながるというメリットがあるため現在脚光を浴びているが、高周波数の電波だとその逆だからだ。「遠くまで届きにくい」「利用者まで届きにくい」ため、既存の帯域と同じように基地局で流して快適なサービスを提供するのは難しい。

ドコモは、この問題を基地局のエリアに高周波数帯専用のアンテナを立てて小範囲のエリア「スモールセル」を作ることで解決するという。その内容とは、既存の基地局のエリアを「マクロセル」と規定。5G通信では、マクロセルでは現在使われている低周波数帯で広範囲にやりとりする一方で、基地局内に100のスモールセルを作って高周波数帯の通信を行なう。これにより、前述の問題をクリアできるという。

つまり、基地局によるマクロセルで既存の周波数帯をカバーしつつ、高周波数帯によるスモールセルで高速通信を行なうという、低周波数帯と高周波数帯それぞれの特性を生かした二段構えのシステムで運用していくというわけだ。さらに利用者に電波を届くようにするため、多数のアンテナ素子を使ってスモールセル内の電波を指向性の強いビーム状にし、利用者に向け送信する方法が考えられている。

基地局によるマクロセルと高周波数帯のスモールセルによる次世代通信のイメージ図。つながりやすさを損なうことなく、大容量高速通信が利用できる

現在の通信(左)と、5G通信(右)の様子をシミュレーションして比較。暖色に近いほど通信の転送量が高い。また、右の黄色い部分は高周波数帯の電波を利用者に向けて送信しているところ

CEATEC AWARD 2013で受賞! 評価の理由とは?

スモールセルという小さな範囲での通信網の構築に加え、指向性が強い状態にすることで可能になる、高周波数帯を使った高速大容量通信。これがドコモが考えている5G通信の姿だ。激増するトラフィックに対応し、今後ますます広がるであろう動画やクラウドサービスの利用においてもストレスを感じない通信が期待されるが、ドコモでは2020年の東京五輪の時までにはこの通信を体感できるようにしたいとしている。

この5G通信、CEATEC AWARD 2013の総務大臣賞の受賞が本日10月1日に決定した。利用が難しい高周波数帯を低周波数帯と組み合わせて使うという着目点と技術の独創性が評価された形だ。現在、通信業界においてプラチナLTEやマルチバンドがホットなキーワードになっているが、次は高周波数帯が高速通信の主役になるかもしれない。