日本HPは30日、コンシューマ向けのノートPC/デスクトップPC新製品を発表し、合わせて発表会を開催した。同社の直販サイトHP Directplusでの販売はすでにスタートしており、店頭では10月2日以降順次発売される。ノートPCの最上位ラインアップとして新ブランド「ENVY」を投入し、第1弾としてサウンドに特化した「HP ENVY14 Beats Edition」を公開したのが最大の目玉となった。
「パソコンは人間の可能性を引き出し、楽しいと感じてもらうツール」
発表会では、取締役 副社長執行役員 パーソナルシステムズ事業統括の岡隆史氏が、HPのPCビジネスに対する姿勢を語った。まずキーワードとして「The Computer Is Personal Again」という言葉を提示し、「人間が持つ可能性あるいはアイデア、その人ごとの能力・思考といったものを引き出す、そしてその過程の中で『楽しい』と感じてもらうためのツールとして、製品を提供していきたい」とその姿勢を表現した。
その要素としては、所有したときに喜びを感じさせる素材、形、高級感、さらには他にないような尖った部分、新しい何かを重視しているという。具体例としては、質感、飽きの来ないデザインなどを挙げ、さらに一歩進めたファッションとの融合などもその取り組みのひとつだとした。
また、タッチインタフェースについても、日本HPでは4年以上前から取り組んでいるとし、新しいテクノロジの中で「ちょっと面白い」というものを製品に取り入れている一環として紹介した。
最後に、「今日の新製品発表会の中で、お客様の『もっとこうなればいいのに』というニーズに対して、HPがどのよう答えを提供するのかをご紹介したい」と締めくくった。
「Pavilion」で築いた土台の上に「ENVY」を展開
製品説明は、パーソナルシステムズ事業統括 コンシューマービジネス本部 コンシューマー製品部 部長の中原和洋氏が行った。はじめにノートPCの新ブランド「ENVY」を、既存の「Gシリーズ」「Pavilion」の上位に位置する最上位ラインとして紹介。ワールドワイドでは2009年9月に発表された「ENVY」ブランドを日本国内ではこのタイミングで展開することになった理由については、「昨年の段階では個人向けPCの市場に再参入して3年目で、まだまだGシリーズ・Pavilionで土台を作る必要があった。その後、ラインアップも増え、HPの存在感もある程度出せたということで、これを区切りに『ENVY』の展開を行うことにした」と説明した。ENVYについては、この製品限りではなく、米国ですでに複数の製品が発売されていることもあり、今後も展開していくという。
その日本における第1号製品として披露されたのが、ヒップホップミュージシャンのDr.DreがプロデュースするBeats Audioのシグネチャーモデルである「HP ENVY14 Beats Edition」。この製品については、「これまでノートPCでは、軽量化やスリム化が重視されてきたことが否めない。しかし、ユーザーのライフスタイルは少しずつ変わっている。ノートパソコンで音楽を聴く、という傾向が広がってきている」とし、そういったユーザーに向けて「HP ENVY14 Beats Edition」を発売することになったと語った。
具体的なDr.Dreとの共同開発の内容については、HPのデジタルシグナルプロセッシング技術を用い、Dr.Dreがチューニングを行った。また筐体にアルミニウム素材の使用、スピーカー配置や共振の計算などを行っており、「ソフトとハードのトータルで迫力の重低音と高音域までクリアなサウンドを実現できた」という。
低音域にパワーがあり、高音域はすっきり
ここで、「HP ENVY14 Beats Edition」の音響的分析を行った日本音響研究所 所長の鈴木松実氏がその分析結果について解説。鈴木氏によれば、「HP Pavilion Notebook PC dv6a」との比較において、低音域で「HP ENVY14 Beats Edition」の出力が大きく上回って重量感のある音になっており、また中音域から高音域にわたってはフラットにレベルが高いために聴きやすいという。筐体についても、「共鳴をうまく使った設計」と評価した。
鈴木氏は「HP ENVY14 Beats Edition」について、「私はいつもノートPCと外部スピーカーを持ち歩いているが、この製品なら外部スピーカーはいらない。私も購入しようかと思っている」と語った。
分析結果のチャート。鈴木氏は750Hz前後の低音域と5,000Hz以上の中~高音域をポイントとして指摘した |
「HP ENVY14 Beats Edition」の音響特性において、筐体の設計も重要なポイントだという |
「『HPE390jp』はゲームユーザーにとって最初に手に入れるべき武器」
次に紹介したのはゲームPC。2008年にHPが個人向けミニタワーPCを発売した時点からゲーム認定PCを展開してきたことに触れ、その延長線上にある製品として、同じ9月30日に発売となった「ファイナルファンタジーXIV」の対応モデル「HP Pavilion Desktop HPE390jp」を紹介。「PCはゲームユーザーにとって強力な武器。強い武器を持たないと、なかなかゲームには勝てない」「『HPE390jp』はゲームユーザーにとって最初に手に入れるべき武器」とした。
その他のラインナップについては、「HP Mini」の新シリーズであるデュアルコアAtom搭載で10時間のバッテリ駆動を実現した「HP Mini 210-2000」、新デザインを採用したノートPC「HP Mini 110-3100」「dv6i/dv6a」「HP G62」、オールインワンPCの新シリーズ「HP Omni 100」、新デザインのオールインワンPC「HP TouchSmart 310」を紹介。その他のモデルについても、タッチ機能のソフトのバージョンアップ、タワー型に内蔵されるテレビチューナーが10倍録画に対応したことなどを新機能として挙げた。また、アフターサービスの強化ポイントとして、量販点向けモデルに「HP安心サポート365 30日版」が標準添付となることなどを発表した。
「3Dについては機をうかがっている状態」
質疑応答では、3D対応についてどう考えているかという質問に対して、「米国ではENVYの3Dモデルを販売しているので、素材はある。日本ではコンテンツの普及を含め、機をうかがっている状態」とした。また、日本のタブレットPC市場について「次のコアセグメントという認識はある。ただ、日本のユーザーの要求レベルは高いので、十分な準備を整えて進めたい」と前向きな姿勢を見せた。
また、今回東京生産のモデルが増えたことに関連して、「生産拠点を日本に持つということについては常に議論がある」としながらも、メリットとして「納期の問題、品質コントロールのしやすさ」を挙げ、「販売ボリュームが増える中で、拡張の方向性」であるという。
コンシューマ向けPCビジネスの状況については、「正直、まだまだ足りないと感じている」といい、「日本のノートPC市場固有のニーズに対して、グローバルでビジネスを展開する日本HPがまだ対応できていない」という分析を示した。今回および来春の新製品でラインナップを拡大するとともに、HP製品を展示する店舗の拡大を図っていきたいとした。
なお、本日発表の各モデルの詳細については以下の記事で個別にご紹介している。
■日本HP、ノートPCの新ブランド「HP ENVY」を創設 - 第1弾モデルも登場
■日本HP、スペックを底上げした2010年冬モデルのノートPC
■日本HP、新デザインで高性能な10.1型ミニノートPC「HP Mini 210-2000」
■日本HP、20型オールインワンPC2機種発表 - 「Touchsmart 310」「Omni 100」
■日本HP、ハイエンドミニタワー「HPE」シリーズ冬モデル - SSDモデルも設定
■日本HP、低価格デスクトップPC「p6000」シリーズの冬モデル - 29,820円から
■日本HP、スリムタワーPC「s5000」シリーズ冬モデル - 量販店モデルを拡充
■日本HP、オールインワンPC2機種の冬モデル - ソフト/オプション強化など