2023年3月3日、Meta(メタ)の日本法人であるFacebook Japanは、SHIBUYA109エンタテイメントと業務提携し、SHIBUYA109渋谷店の8階に「Creator Collaboration Space(クリエイターコラボレーションスペース)」をオープンしました。おもにInstagramで活動するクリエイターを支援するための場所となり、一年間にわたってさまざまなプログラムを用意しているそうです。

  • SHIBUYA109渋谷店にオープンした「Creator Collaboration Space」

クリエイター向けのプログラムは、Instagramをマスターするためのセミナー、ARエフェクト作成ワークショップ、次世代クリエイターレーベル「cryptex(クリプテックス)」との共同プログラムで行うNFTのワークショップなどがあります。

さらに、Metaとクリエイター、そしてSHIBUYA109エンタテイメントが運営する若者マーケティングチーム「SHIBUYA109 lab.」が手を組み、クリエイターとの協業を考えている企業へのマーケティングプランを提供するなど、ビジネス面での活動も予定されています。

  • Creator Collaboration Spaceでは、ビジネス向けマーケティングプランも始動します

Z世代と呼ばれる若者(おおよそ1990年代後半から2010年ぐらいまでに生まれた人)は、ほかの世代に比べてクリエイターの声を重視する傾向があるとのこと。メーカーからの情報や知り合いからの口コミと同じくらい、クリエイターの情報を参考にしています。若者向けの商品を扱っている企業としては、クリエイターの影響力を生かしてマーケティングを行いたいのでしょう。

プラットフォームとして見たSNS側にも、魅力的なクリエイターに利用されることには大きなメリットがあります。こうしたクリエイターがプラットフォームを利用すれば、魅力的なコンテンツが集まり、ユーザー数と滞在時間の増加を見込めます。それにより、広告をはじめとした収益アップが期待できます。

そこで、YouTubeやLINEといったSNSに分類されるサービスも、クリエイター支援に向けて機能を拡充しています。

ショート動画で加速するクリエイターエコノミー

クリエイター支援といえば、代表格はYouTubeでしょう。YouTubeは2008年4月にクリエイターが広告収入を得られる「YouTubeパートナープログラム」を開始し、いわゆる「YouTuber」を数多く創出してきました。2020年11月までの3年間に、YouTubeがクリエイター、アーティスト、メディア企業に支払った金額は、300億ドル以上にのぼるそうです。

この「YouTubeパートナープログラム」が更新され、2023年2月1日からショート動画「YouTubeショート」で活躍するクリエイターも、YouTubeパートナープログラムに参加できるように資格要件が変わりました。今後はSuper Thanks、Super Chatなどのファンディングにも対応する予定だそうです。

  • YouTubeパートナープログラムがアップデートされました

LINEは、LINE VOOMへの投稿で広告収益を得られる「LINE公式アカウント」に、新カテゴリーの「LINEクリエイターアカウント」をスタートしています(2022年6月)。ショート動画「LINE VOOM」の投稿に広告を掲載、グッズを販売、投げ銭といった機能を提供していますが、執筆時点では著名人向けのアカウントです。2023年の春には、一般クリエイター向けも提供予定となっています。

「LINE VOOM」は、Zホールディングス傘下のLINEとヤフーが動画配信サービス「GYAO!」とLINE LIVEを2023年3月31日に終了し、経営資源を集中して強化するサービスです。LINE VOOMでのクリエイター支援がますます加速していくと思われます。

手軽に撮影できるショート動画の流行によって参入障壁が低くなり、クリエイターを目指す人も増えていることでしょう。Metaが展開する「Creator Collaboration Space」における企業との協業、YouTubeやLINEが提供する収益化プログラムなど、クリエイターが収入を得る方法も多様化しています。

しかし、昨今のYouTuberにまつわる報道にもあるように、動画を投稿して誰でも稼げるわけではありません。魅力的で質の高いコンテンツを構築できる、そして続けられるクリエイターが生き残る時代へと変わってきています。クリエイターを取り巻く経済圏を「クリエイターエコノミー」と呼び、どのように発展していくのか、注目していきたいと思います。