良品生活が手掛ける「無印良品」はシンプルな生活雑貨や衣類、健康を意識した食品などが人気です。その人気は日本だけではなく世界中に広がっており、海外の店舗数は日本国内より多い500店舗以上を誇ります。様々な製品を展開する無印良品ですが、海外で電動式の自転車「素-MS01」を発売しました。

  • 無印良品とホンダが共同開発した「素-MS01」

素-MS01は無印良品とホンダが設計し、生産はホンダの中国工場(新大州本田)で行われます。そのため残念ながら販売は中国国内限定。しかも販売数は5,000台のみとのこと。4,980元(約10万円)と高価ながら、無印良品らしいデザインとホンダ開発による使いやすさを兼ね揃えており、日本でも欲しいと思う人がいるのではないでしょうか?

  • 街乗りにちょうどいいサイズ

素-MS01はホワイトまたはブラックのボディーに17型のホイールを搭載。ハンドル中央のディスプレイは速度とバッテリー残量を表示するだけと必要最小限のデザイン。エンジンはスマートキーにより自転車に近づくだけでロック解除されます。バッテリーは脱着式で重さは5.6kg、取り外して手軽に自宅で充電できます。1度の充電で最大走行距離は65キロメートル、駅までの通勤通学用途や週末の買物に使う程度なら週に1回か2回の充電で十分でしょう。なお最高速度は時速25キロです。

  • 本体の重さは約54kg。日本でも販売してほしい

無印良品は日本でも自転車を販売していますが、その歴史は古く最初の製品は1982年に発売されています。自転車にはライトや泥除け、カゴなどが最初から付属していることが当たり前ですが、無印良品は「必要なパーツを必要な人が取り付ける」というキット方式を採用しました。この新感覚の自転車は1980年に生まれた無印良品のブランド認知度を一気に広げる立役者にもなったのです。その10年後、1992年にはチェーンの無いシャフト式自転車も発売し「ベルト外れの心配がない」「裾が汚れない」ことからこれもヒット商品となりました。家の中だけではなく外出中にも使いやすさを考えた製品を投入するという無印良品のコンセプトは、今回発売された素-MS01にも引き継がれています。

  • 無印良品の名を知らしめた22型自転車

この無印良品の製品開発コンセプトは他の移動機関との協業も生み出しています。フィンランドのスタートアップ「Sensible 4」が開発した自動運転バス「GACHA」のデザインを無印良品が担当しているのです。GACHAは個人向けの自動車ではなく、公共交通機関として開発された小型のバス。自動運転のレベル4(特定条件の下で完全自動運転、人間の監視あり)を目標に開発中で、フィンランドでは2019年から実証テストが行われています。

  • 小型の自動運転バス「GACHA」

日常生活における「空間」とは、自宅であれば生活をするところであり、会社ならば仕事、学校なら学習のための場所ですが、豊かな生活を送ったり、効率的に仕事をするためにはそれらの空間を快適で心地よい場所にするべきでしょう。無印良品は雑貨やインテリア製品、あるいはステーショナリーで自宅や会社を快適な空間に変えてくれるだけではなく、今度は移動する空間や体験も心地よいものにしようとしているのです。

  • GACHAの室内。シンプルだが無機質なものではない

GACHAは渋滞知らず、待ち時間も最小で自宅から好きな場所へと人々を運んでくれます。商用化される際は5G通信により都市の様々な情報とリンクし、車内にいながら天気予報や最新ニュース、レストランの混雑状況やデパートのセール情報などを入手できるようになるでしょう。無印良品のデザインはその空間をさらに心地よいものに変えてくれるのです。

GACHAは定員16名で最大速度は時速40キロ、1回の充電で100キロメートル以上走行できます。充電はケーブルだけではなく別途床下に無線充電アンテナを設置すればワイヤレス充電にも対応。充電台の上に駐車しておくだけで充電することも可能です。

  • 定員は16名。地域のラストワンマイルの足に最適だ

GACHAは2022年5月に千葉県千葉市の花見川団地で実証テストが行われました。フィンランドの技術と日本のデザインの融合から生まれた新しい自動車がついに日本にも逆輸入のような形で上陸したのです。同団地では自宅から駅までではなく、最寄りのバス停までという「ラストワンマイル」の移動手段として自動運転小型バスの導入が検討されているとのこと。確かに駅までとなると走行距離も長くなりますし乗客数も増え、自動運転とはいえ定時運転もままならないかもしれません。玄関を出てGACHAで最寄りのバス停へ、そこからダイレクトに駅に向かいショッピングモールで買物したり、電車で都心に向かう、そんな複数の交通機関をシームレスにつなぐ手段としてGACHAは注目されているのです。

  • 検見川団地での実証実験

無印良品はGACHAの開発を通して車両デザインだけではなく地域や街のデザインにも協力していく感がです。いずれは無印良品が設計した街が生まれ、老若男女あらゆる人たちがそこでの生活を希望して殺到する、なんて時代がくるかもしれません。ぜひ豊かな都市設計を日本でも進めてほしいものです。

  • GACHAを使った無人移動式コンビニもいずれ実用化されそうだ