スマートフォンのカメラ性能が進化したことにより、デジタルカメラの販売数が減少しています。デジタルカメラも最近ではPCに接続してリモート会議時のWEBカメラになる機能を搭載するなど、新しい使い方をユーザーに提唱しています。またボケの効いた写真やマクロ撮影もスマートフォンでできるようになりましたが、高性能な交換レンズを取り付けたデジタルカメラにはまだまだ敵いません。

とはいえ撮影した写真をその場で加工してすぐにアップロードできるスマートフォンの手軽さにはデジタルカメラでは体験できないものです。そこでスマートフォンの利便性をデジタルカメラに取り込んだ製品がまもなく発売になります。カールツァイスの「ZEISS ZX1」です。

ZEISS ZX1はフルサイズセンサーを搭載したコンパクトサイズのカメラです。製品そのものは2018年に発表されましたが、ようやく実製品が発売となります。

  • カールツァイスのZEISS ZX1

    カールツァイスから登場するZEISS ZX1

カメラ性能は申し分なく、3,740万画素のフルサイズセンサーに「ZEISS Distagon 35mm f/2 T*」レンズを搭載。かなり美しい写真の撮影が期待できます。内部メモリは512GB、RAWファイルなら約6,800枚、JPEGなら約5万枚を保存可能とのこと。本体にはUSB Type-C端子を搭載し、充電などもスマートフォンと同じケーブルが利用できます。

本体背面には4.3インチ1,280x720ピクセルのディスプレイを搭載しています。そして公式には明らかにされていないようですが、Android OSが動きます。Adobeの写真加工アプリ「Lightroom CC」がプリインストールされており、この背面ディスプレイを使ってその場で写真の加工が可能なのです。PCの無い環境でも最高の写真を作ることができるというわけです。

  • 4.3インチディスプレイを搭載、Android OSが動く

Android OSの他の機能はまだ不明ですが、Wi-FiとBluetoothを搭載しているため、スマートフォンやPCへのファイルの転送も専用アプリは必要なく、撮影した写真や動画をそのまま送れるのでしょう。また写真のバックアップもGoogleドライブなどのストレージサービスへシームレスに送ることもできそうです。もし、Lightroom CC以外のアプリをインストールできれば、さらに凝った加工も可能になるでしょう。Android OSを搭載したことでデジタルカメラの使い方が大きく変わるのです。

実はAndroid OSを搭載したデジタルカメラはZEISS ZX1が最初ではありません。最近ではデジタルカメラ用交換レンズを手掛けるYongnuo(永諾)社がキヤノンEFマウントレンズを取り付けられるAndroid OSカメラ「YN450」を発表しています。なお製品化は不明で、中国のECサイトで販売されているとも言われています。レンズメーカーである同社としてはカメラ本体をグローバルに販売するほどのリソースが無いのかもしれません。

この分野はサムスンが最も熱心で、今から7年も前、2013年にはレンズ交換式のミラーレスカメラ「Galaxy NX」を発表しました。また同じころにはコンデジスタイルの本体にAndroid OSを搭載した「Galaxy Camera」を2モデル発売。さらにはスマートフォンの背面にコンデジのようなズームカメラを搭載した「Galaxy K Zoom」なども展開しました。サムスンは過去にデジカメ事業も展開しており、キヤノンやニコンなど大手メーカーと対抗する為にデジタルカメラの操作性を高めようとGalaxyシリーズのスマートフォンのラインナップにデジタルカメラを加えたのです。

  • レンズ交換式のAndroid OSカメラ、Galaxy NX

しかしいずれの製品もヒットはしませんでした。当時のAndroid OSとハードウェアの性能が低く、撮影した写真の加工はPCで行ったほうが仕上がりは上だったからでしょう。また通信回線が遅く通信料金も高かったため、3GやLTEを内蔵したモデルもありましたが写真をアップロードしたりバックアップするのには時間がかかり現実的ではなかったのです。

しかし今やスマートフォンの性能はPCとあまり変わらなくなりました。それと同時にスマートフォンアプリの性能も大きく向上しています。通信速度もより高速になり、クラウドの利用も当たり前になりました。

たとえばAdobeの動画編集ソフト「Premiere Rush」はスマートフォンとPCで作業した動画をリアルタイムにクラウド経由で同期可能、スマートフォンでもカットや文字入れなどの編集操作もできます。PCが無くともスマートフォンだけで動画を撮影して編集、そしてバックアップとYouTubeへのアップロードもできる時代なのです。

  • Premiere Rushならスマートフォンでも動画編集が可能、クラウド共有も即座

ZEISS ZX1が搭載するCPUやAndroid OSのバージョンは不明ですが、Lightroom CCが動くということからある程度高いスペックとメモリ容量を搭載しているのでしょう。またスマートフォンと同じアプリが動くため操作性も悪くありません。スマートフォンユーザーが本格的なカメラを使いたいと思ったときに、シームレスな操作ができるZEISS ZX1は他社のデジタルカメラよりも使いやすいかもしれません。

デジタルカメラも高画質な写真や動画を撮れるだけではプロユースの高級なツールになってしまい、一般消費者が手を出しにくいものになってしまいます。スマートフォンと同じ操作性、アプリが使える高性能な製品ならば、スマートフォンとの共存も十分図れるでしょう。ZEISS ZX1の発売は間もなくの予定。価格は高くなるでしょうが、スマートフォンのカメラ性能に飽き足らない人には興味あるアイテムとなるでしょう。