MVNO(仮想移動体通信事業者)の日本通信から、3G方式に対応した「b-mobile 3G hours 150」が発売になった。端末は日本初登場となる中国ZTE製だが、気がつけば日本では3社目の中国メーカー製品となる。海外メーカーが進出しにくい日本市場だが、データ通信分野では中国メーカーが着々と勢力を拡大しているようだ。
世界中で採用される中国メーカーの3Gモデム
ZTEの名前は、日本では全く知られていないだろう。しかし海外では、すでにメジャーメーカーとして世界中でビジネスを展開している。ZTEは中国で最大手に位置する通信関連メーカーであり、日本に端末やインフラ設備などをイー・モバイルに納入しているHuaweiのライバルでもある。消費者が目にする携帯電話端末を見ても、Vodafoneグループ向けにローエンド端末をOEM供給するなど、大手事業者からもその製品品質は十分認められているのだ。
また中国内ではCDMA端末で高いシェアを取っており、これまでの出荷台数累計は800万台を超えている。今年になって中国移動が開始した中国独自開発の3G方式「TD-SCDMA」にも、Linuxベースの音声端末とデータ通信モデムを供給するなど、その技術力も高い。「中国のマイナーメーカー」ではないのは当然で、海外の展示会でも毎回必ず展示ブースを見かけるほどだ。
さて、日本でもここ数年で海外メーカーの端末が増えてきている。しかし海外で発売された同類のモデルが、日本では大幅に遅れて登場することが一般的だ。これは日本では通信事業者が独自の仕様を設定するため、海外メーカーがそのまま海外のモデルを日本に納入することができないからだ。コンテンツサービスへの対応にしても、海外では共通の「WAP(Wireless Application Protocol)」規格に適応していればどのメーカーも平等に市場に参入できる。しかし、日本では事業者が提供するコンテンツを再生できるように仕様の変更や対応が必要となる。そのため海外で大ヒットした端末であっても日本向けには投入までに時間がかかってしまうのだ。このことは、海外メーカーが日本市場に参入する際の大きな壁にもなっている。
一方、コンテンツサービスを重視していないイー・モバイルは、海外の端末をそのまま日本向けに導入している。HTCのEMONSTERなどは、周波数帯を変更した以外ハードウェアは海外と全く同一のものである。このように日本の通信事業者の独自仕様に対応する必要がないのであれば、海外メーカーの端末をそのまま日本に導入することは容易だ。特にデータ通信モデムは、W-CDMAという規格に則っていれば技術的にはどのメーカーの製品であっても日本で利用できるはずである。
イー・モバイルも日本通信もメインビジネスはデータ通信であり、自社専用のサービスに見合った製品を開発する必要もなければ、日本メーカーの端末をあえて導入する必然性も無い。気がつけば両社からは3つの中国メーカーのデータ通信モデムが販売されており、この分野では中国メーカーが着々と勢力を増している。今後はほかの通信事業者も中国製のデータ通信端末を導入する動きがおそらくあるだろう。たとえばNTTドコモが現在発売しているUSBモデム「FOMA A2502 HIGH-SPEED」は韓国AnyData製で、すでに海外メーカーの製品だ。後継機に中国メーカー品がラインナップされる可能性もあるかもしれない。
中国メーカーの音声対応端末は日本で売れるか
多機能・高性能な端末は日本メーカーの十八番であり、中国メーカーがワンセグやおサイフケータイ機能などに対応する可能性は無いだろう。しかし、「メールと通話だけできればよい」と考えるライトユーザー向けには、端末価格の安い中国メーカー製品が市場参入できる可能性は十分ある。特にメイン端末ではなく2台目需要などなら、機能より価格を重視する消費者も多いだろう。小さい子供やお年寄りに持たせる用途としてならば、ベーシックな機能と低価格を兼ね揃えた中国メーカーの音声端末でも構わない、と考える消費者も出てくるかもしれない。
海外の実例を見ても、Vodafoneが発売しているHuaweiやZTEのローエンド端末は、プリペイド対応で、端末の価格はほぼ無料である。通話とメッセージサービスだけ利用できれば良いユーザーにはこれで十分である。プリペイドであるため、導入コストも毎月の維持費もほとんどかからないというメリットもあり、「安かろう悪かろう」というイメージではないのだ。
また中国メーカーも最近ではOSにWindows Mobileを搭載したスマートフォンをリリースしている。いずれはHTCのように中国メーカーのスマートフォンが日本で発売される日が来るかもしれない。すなわちエントリー向けのローエンドとビジネス向けのスマートフォンという、日本メーカーがやや弱い分野の製品であれば今後中国メーカー製品が日本で勢力を増す可能性もあり得るだろう。