今回のテーマは「リアルタイム」
ここ数ヶ月の間に注目が集まっているワードが「リアルタイムウェブ」だ。ウェブの世界を巡るスピード感はどんどん高まっており、ライブ感が重視されるようになっている。その際たるものとして、Twitterのリアルタイム検索が知られている。同様にGoogle Waveのようなリアルタイムコラボレーションプラットフォームや、PubSubHubbubやRSSCloudにも注目が集まっている。
そこで今回はコラボレーションやリアルタイムを実現するWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェアに注目したい。これからのウェブを牽引する、注目のサービスと技術があるはずだ。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『Team Apart』 Webカメラ必須! フェイスtoフェイスのコラボアプリ
『EtherPad』 オンラインテキストエディタで共同作文!
『Google Mobwrite』 コラボアプリを独自に実現したいなら
『Tornado Web Server』 リアルタイムウェブの実現に欠かせないサーバ
Webカメラ必須! フェイスtoフェイスのコラボアプリ
名称 | Team Apart |
---|---|
URL | http://teamapart.com/ |
『Team Apart』はWebベースのコラボレーションアプリケーションを提供している。リアルタイムに特化しており、Webカメラを使って双方の顔を見つつ、一緒に作業を行なえるようになっている。メモを同時に編集したり、ホワイトボードを使ってドローを行なうこともできる。また、ローカルにあるOffice文書ファイルをアップロードして閲覧することも可能だ。
フェイスtoフェイスを意識しており、リアルタイムであることが必須になっている。Webカメラが必須になるが、インターネット会議や遠隔地との共同作業で役立つのではないだろうか。特に同時とあって、作業をサボることもできないだろう。
現在クローズドベータ中であり、ユーザ登録を申請後に招待メールが送られることになっている。気になる方は登録してみてほしい。
オンラインテキストエディタで共同作文!
名称 | EtherPad |
---|---|
URL | http://etherpad.com/ |
『EtherPad』はオンラインのテキストエディタアプリだ。同時に複数人での修正が可能で、その修正内容もリアルタイムに反映されていく。修正者の色に合わせて文字がハイライト表示されるので、誰が編集しているのかすぐに分かるようになっている。編集は行単位ではなく、文字単位で差分が表示されるようになっている。また、編集のほかにチャットを行なう機能もある。
自動保存の機能があり、修正されていく様子を時間軸とともに見ることができる。テキストと簡易的な文字装飾のみ可能となっているが、それでもコラボレートしながら文章を作成していくのは面白い。EtherPadは有料のWebアプリケーションで、月8ドルのWeb版のほか、1ユーザ99ドルのダウンロード版も提供されている。
リアルタイムに編集して一つの文章がみるみる出来上がっていく様子はとても面白い。インターネットならではの楽しさが味わえるはずだ。
コラボアプリを独自に実現したいなら
名称 | Google Mobwrite |
---|---|
URL | http://code.google.com/p/google-mobwrite/ |
EtherPadのような動作を自分のWebアプリケーションでも実現してみたいと思ったら、『Mobwrite』を使いたい。Mobwriteはフォームのオブジェクトを登録すると、そのオブジェクトを監視し、同じページを見ているユーザにデータ変更を通知、同期するソフトウェアだ。
テキストエリアの修正であれば、その内容が適切にマージされて反映される。チェックボックスやドロップダウンにも利用できる。また、デモアプリケーションとして表計算のようなコラボレーションアプリケーションも利用できる。
利用については独自のデーモンのほかに、Google App Engineを使って動作させることが可能だ。なお、CPU負荷は利用時常に発生するので6.5時間のGoogle App Engineの制限ではすぐにリミットに達する可能性があるのでご注意いただきたい。
リアルタイムウェブの実現に欠かせないサーバ
名称 | Tornado Web Server |
---|---|
URL | http://www.tornadoweb.org/ |
リアルタイムウェブを実現する上で重要なのはWebサーバの存在だろう。リアルタイムウェブではほぼ常にWebサーバに通信が発生し、ロングポーリングも活用される。従来のWebサーバとは異なる視点が求められるため、FriendFeedでは自分たちのサービス用に新しいWebサーバを開発した。それが『Tornado Web Server』だ。
Tornado Web Serverは、web.pyやDjangoを使ったWebアプリケーションに比べて数倍のリクエスト数を処理する能力がある。Cookieや非同期処理、外部認証などに対応し、Google App Engine上でも動作させることができる。同時に1,000ものコネクションをさばくことができるとのこと。
高性能で多数の接続を同時に処理できるWebサーバがあってこそ、リアルタイムウェブを推進することができる。FriendFeedのサービスを通じて鍛えられたTornado Web Serverであれば、その性能はお墨付きと言えそうだ。
いかがでしたか?
遠隔地とのコラボレーション、更新後にすぐに反映されるRSSリーダー、今まさに起こっているトレンドを見ることができる検索など、リアルタイムに求められる範疇は広い。もともと地理的、時間的束縛の薄いインターネットではあるが、能動的なサービスであるだけに、リアルタイムになったときの生産性、即時性の高さは計り知れないものがある。オフィスでもコンピュータの前で作業し続け、チャットやメッセンジャーを立ち上げ続けている人は多いだろう。その一歩先、作業自体をオンラインで同時に行うようになったらメールでの連絡もいらず、たたき台を作ってミーティングして修正するといった手間もなくなってしまうかもしれない。
リアルタイムウェブは今後、見逃せないキーワードのひとつになるだろう。今回紹介したようなリアルタイムウェブを体感するサービス、利用するためのソフトウェアにも注目が集まるはずだ。
著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。