弊社刊行の雑誌「Web Designing」で連載中の「エキソニモのView-Source」は、HTMLのソースとそのレンダリング後の画面をセットで展開するという珍しいアート作品だ。レンダリング後の画面だけを見るとグラフィックデザインのようだが、HTMLソースのほうを見るとインタビュー記事が埋め込まれており、レンダリング後の画面でゲスト自体を、HTMLソースのほうでゲストとエキソニモの関係やバックグラウンドなどを知る事ができるという仕掛けになっている。

雑誌「Web Designing」より

今回の作品のターゲットはetoこと江渡浩一郎氏だ。江渡氏といえば、メディアアート界隈に少し詳しい者なら名前くらいは聞いたことがあるかもしれない。1990年代からインターネットをやっているものなら何度となく彼の作品を見たことがあるのではないだろうか。作品の表すものは一目でわかる。半紙を感じさせる背景色#FFFFFFの上に朱とモノトーンで「今年ノエト」と描かれている。右下のほうにはいま流行りのFacebookいいね!ボタンがある。とりあえず、いいね!してみた。

「今年ノエト」というのは、改めて説明するまでもないことだが、野暮さを全開にしてあえて説明すると「今年の干支」と「今年の江渡浩一郎」というのがかかっている。インタビュー内容も新春特別放談といった感じのなごやかな感じとなっている。内容によればおふたりは旧知の仲だとのこと。

一見、書き初め風な今回の作品だが、個々の要素を見ていくとインタビュー内容に沿ったものになっている。まずは、Web版にアクセスしてみよう。

例えば「エト」の上の横棒は、江渡氏のサイトがインラインフレームで表示されている。また江渡氏に関連する様々なソーシャルアカウントもインラインフレームで「エト」を構成するものとして使われており、Instagram、Twitter、Tumblr、foursquareなどがある。江渡氏にお近づきになりたい方は是非フォローしてみて欲しい。インラインフレームとはiframeというタグを使って他のURLを描画する機能がある。以下はソース。

<iframe src="http://eto.com/" width="450" height="80" scrolling="no"> </iframe>

その他、もうひとつのアプローチとしてインタビュー本文の一部をインラインフレーム的に切り出して表示している箇所もある。左上の「エト」がそうだ。「エ」はエキソニモのエだが、「ト」に見える部分は自己紹介のテキストが切り出されて表示されており、「ト」ではなく「┣」である。罫線だ。ここは一見インラインフレームに見えるが、実はフォームを使って描かれており、inputタグが使われている。

実は僕は江渡氏に一度か二度お会いしたことがある。2000年、processingというプログラムによるスケッチツールのオフが会ったときの話だ。

processingとは、Javaというプログラミング言語をベースに作られた言語で、プログラムを使ってアプリケーションを作るのではなく、アート作品などを作ることが目的の異色の環境だ。当時、一部の人の間で何故かprocessingが盛り上がっており、僕もコミュニティに参加したりしていた。当時、よく江渡氏のことは知らなかったのだが、サイトのレジュメを見てスゴイ人だと思った記憶がある。ちなみに江渡氏のサイトはいろいろ面白いものがあるので是非見てみて欲しい。

今回の作品には、様々な注釈が存在する。ある程度のリテラシーがないとわからない部分があるかもしれない。

※この記事は、『Web Designing』2011年2月号に掲載された「エキソニモのView-Source」の解説記事です。『Web Designing』本誌とあわせてお楽しみください。