コロナ禍で急速に進んだ企業のデジタルシフト。いずれの業界でも各社がさまざまな課題にぶつかり、試行錯誤した結果が今、少しずつ目に見える形になってきている。例えば、独自の人材サービス業を展開するスポーツフィールド社では顧客企業データの整備をきっかけに、アナログからデジタルへの移行を推し進めた。

11月10日に開催された「Sansan Innovation Summit 2021」では、スポーツフィールド社 高橋幸江氏が登壇。本稿では、「自分たちはテクノロジーに強い必要はない」と思っていた同社が、コロナ禍に伴う緊急事態宣言前後に取り組んだデジタルシフトについて語った内容をレポートする。

アナログであることが誇りの企業が直面した課題

体育会系出身者やスポーツ経験者に特化した人材サービス業を展開するスポーツフィールド社は、社員自身も全員”スポーツ人材”である点を特長とする。高橋氏は「(スポーツと同様に)試合の流れを読んで、チームメイトを信頼し、ベストなパスを送ることが仕事でもできている」と、社風について語る。だからこそ「テクノロジーに強い必要はない。むしろアナログであることを誇りにすら思ってきた」(高橋氏)のだ。

スポーツフィールド社 高橋幸江氏

スポーツフィールド社 高橋幸江氏

そんな同社では2014年にSansanの名刺管理ツールを導入したが、その利用は一部に限られていた。しかし従業員数の増加に伴い、2019年の秋頃から名刺の読み取りに超過費用が発生するようになり、利用状況とコストの妥当性について検証が始まったのだという。これと並行して取り組んでいたのが、顧客企業のデータ整備だ。高橋氏は、「”正”となるデータがない状態だった」と当時を振り返る。

加えて、「契約書の原本では企業の情報変更に対応できない」「従来、用途別にデータを管理していたため、項目の不一致や不足がある」といった課題も浮上していた。これらの解決策として挙がったのは「皆でデータをきれいにしていく」アナログ解決か、数千万円のコストをかけてデータ処理を行う方法である。しかし、いずれにせよ完璧な状態にしていくのは難しいと判断し、一部で導入した後うまく活用できていなかった名刺管理ツールと再度向き合うことにした。高橋氏はその理由を「過去データの照合と、新規発生データの登録の二軸で運用することが可能だったから」だと語る。新規のデータは名刺を”正”とし、2014年から蓄積していた過去のデータは帝国データバンクのデータを”正”として照合することにより、顧客企業のデータ整備の道筋が見えたのだ。こうして、スポーツフィールド社は2020年4月、緊急事態宣言下でSansanの全社導入を行った。