マイナビニュースは12月3日~4日、Webセミナー「マイナビニュースフォーラム 2020 Winter for データ活用」を開催した。「ニューノーマルに備えるデータ戦略」をテーマに掲げた同セミナーでは、ウィズコロナ/ニューノーマルへの移行が始まる今、積極的なデジタル化を進める企業の取り組みや、経営戦略を考察する上でのヒントとなる多数のセッションが実施された。

本稿では、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス 執行役員 グループCDO 舩曵真一郎氏が登壇したセッション「インシュアランス・イノベーション~データを活用した新たな保険ビジネスの姿~」の模様をレポートする。

なぜデジタライゼーションなのか?

保険ビジネスは、将来のリスクに備えるサービスを提供するという性質から、もともとデータ活用との親和性が高い。ビックデータを基に最新の分析アルゴリズムを活用することで、顧客のリスクを可視化し、事故の予防やリスクの低減、適切な保険商品の提案などにつなげることができる。

登壇した舩曵氏はまず、データ活用の取り組みの前提として、なぜMS&ADグループが経営戦略の中心にデジタライゼーションの推進を位置付けているのかについて解説した。

「COVID-19などの感染症拡大やサイバー攻撃など、保険業界を取り巻く環境とリスクは大きく変化しています。こうした変化に対応していく上で、デジタライゼーションの推進は不可欠だと考えています。また、新しい解決策を導きだすためには、社会的課題の解決に向けたMS&ADグループの価値創造ストーリーを社員全員が理解し、協調して機動的に取り組むことも重要です。必要な人材を確保し、外部の知見やネットワークを活用したオープンイノベーションを促進することも大切だと考えています」(舩曵氏)

舩曵真一郎氏

MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス 執行役員 グループCDO 舩曵真一郎氏

そこで、改革のためのデジタルトランスフォーメーション(DX)、新しいビジネスの創造に向けたデジタルイノベーション(DI)、国内と海外双方のノウハウを相互に展開するデジタルグローバリゼーション(DG)の3つの領域を定義し、人材育成やシステム基盤のデジタル対応、デジタルガバナンスなど、体系的に態勢を構築しながら、グローバルベースでデジタライゼーションを推進する。

体系化

AIやビッグデータ分析を活用した代理店ビジネスの高度化

DX取り組みの1つとして、グループ傘下の三井住友海上は、AIを搭載した代理店営業支援システム「MS1 Brain」を開発し、2020年2月から活用している。

「我々が目指しているのは、お客さま一人一人に最適な提案を行い、お客さま本位の業務運営を実施することです。また、営業社員の業務効率化を進め、役割を変革/高度化していきたいと考えています」(舩曵氏)

MS1 Brainでは、代理店が保有する顧客情報や保険会社が保有する契約/事故データ、企業情報などの外部データを組み合わせて顧客のニーズを予測分析し、より少ないアプローチでより多くの成約に繋がる方法を示唆する。

例えば、サイバー保険の提案などでは、これまで、ターゲットリストを作成して総当たりするようなやり方をするケースが多かった。これに対し、MS1 Brainを活用すると、AIが「どの顧客に何を提案すればよいか」をお薦め度合いと合わせて提案してくれるため、優先順位を付けて効率良く提案を行えるようになるといった具合だ。