前回、前々回ではSAFeの概要をお伝えしましたが、今回からは4回に渡り、SAFeの組織構造とロール、イベント、成果物に着目して、SAFeの詳細を紐解いていきます。各回は以下のようなテーマでお届けする予定です。
- 第4回:SAFeの階層構造とConfiguration
- 第5回:SAFeのロール
- 第6回:SAFeの成果物・ツール
- 第7回:SAFeのイベントとPIプランニング
まずは流し読みをして全体像のイメージをつかんでいただき、個別の課題解決アプローチのなかで不明な用語が出てきたら、第2~7回を適宜参照いただければと思います。
では早速、今回のテーマ「SAFeの階層構造とConfiguration」について説明していきましょう。
階層構造 - 3つのレベルとその概要
SAFeの組織構造は、最大で3つのレベルで構成されます。全体像(Big Picture)と各レベルの名称/役割は、以下の通りです。
SAFe 5.0のBig Picture(Full SAFe Configuration)/出典:米Scaled Agileの公式サイト |
Configuration - 4種類のレイヤーの組み合わせ
SAFeは、適用する組織の規模や目的に応じて、3つのレベルを組み合わせて使います。これを「Configuration」と呼び、SAFeでは4種類のConfigurationが定義されています。
各Configurationの目的や特徴は以下の通りです。
Configuration (○:含む、×:含まない) | ||||
---|---|---|---|---|
Essential SAFe | Large SolutionSAFe | Portfolio SAFe | Full SAFe | |
概要 | 最も基本的なConfigurationで、単一のART、通常50~125名で構成されます | 複数のARTを構成し、複数の技術分野が関わる場合や戦略的にARTを分けて管理したい場合などに適用します | Essential SAFeに財務的な観点を加え、リーンアジャイルな企業を編成したい場合に用います | 最も包括的なConfigurationであり、大規模なリーンアジャイル企業を編成したい場合に適用します |
ポートフォリオレベル | × | × | ○ | ○ |
ラージソリューションレベル | × | ○ | × | ○ |
エッセンシャルレベル | ○ | ○ | ○ | ○ |
SAFeの公式導入手順(Implementation Roadmap)では、最初は単一ARTのEssential SAFeでの開始を推奨しており、それに向けた組織整備の手順を示しています。また、Essential SAFeを導入した後、Large SolutionやPortfolio SAFeに拡張し、その後Full SAFeを適用するといったように、段階的に適用する組織の規模や範囲を拡大することが可能です。
* * *
今回は、SAFeの階層構造を理解していただくため、組織構造のレベルとConfigurationについてお伝えしました。SAFeには複数のConfigurationが用意されており、組織の目的や成長度合いに応じて、適宜Configurationを見直して適切な組織構造に変えていけることがご理解いただけたと思います。
次回は、各レベルの役割に応じて、どのようなロールが定義されているのかご紹介します。
著者紹介
近藤陽介 (KONDOH Yohsuke) - NTTデータ システム技術本部 デジタル技術部
Agileプロフェッショナルセンタ
総合的な顧客体験・サービスの創出のための「方法論」、それに必要な技術・ツール・環境をすぐに利用できるようにする「クラウド基盤」、そして、それらを十分に活用するための「組織全体にわたる人財育成やプロセス改善のコンサルティング」を提供することでDXを支援するデジタル技術部に所属。
業務では、このうちの「コンサルティング」において、大規模アジャイルフレームワーク「Scaled Agile Framework(SAFe)」などを活用し、DXを実現しようとする企業が抱える課題を解決するためのアプローチを共に考え、お客様の組織/プロセスの変革を支援している。