米Amazonが温暖化対策の投資基金「Climate Pledge Fund」の第1ラウンドの投資先を発表した。

Amazonは昨年9月に、同社の事業を通じて排出するCO2を2040年までに実質ゼロにする「The Climate Pledge (気候公約)」を発表、そして今年6月にClimate Pledge Fundを立ち上げた。しかしながら、同社の環境への取り組みに対して、グリーンウォッシュ……環境に配慮している見せかけではないかというような懐疑的な反応が少なくなかった。というのも、データセンターや配送で大量の温室効果ガスを排出していると長年指摘され続け、昨年には「Amazon Employees for Climate Justice」という社員による抗議活動に広がった。そのタイミングでのThe Climate Pledge宣言だったためだ。Amazonの環境対策は見せかけか、それとも次代を見据えた戦略なのか、その試金石として最初の投資先が注目された。第1ラウンドの5社は以下のような顔ぶれだ。

  • CarbonCure Technologies: 世界のCO2排出量の大きな部分を占めるコンクリート焼成過程で発生するCO2を、大気中に流さずにコンクリートに封じ込め、強度を損なうことなくセメントの使用量を減らせる技術を開発している。Amazonはバージニア州の第2ヘッドクォーターを含む多くの拠点ビルでCarbonCureコンクリートを使用する。
  • Pachama: 衛星画像のAI解析などで森林によるCO2の吸収を把握、植林や森林保護プロジェクトの価値を検証して、それらのサポートを通じて組織や個人がCO2排出量を相殺できるマーケットを実現する。AmazonはRight Now Climate Fundによる投資など、自然ベースのCO2削減ソリューションのモニターや評価にPachamaの技術を利用する計画。 Rivian: 「Skateboard」というバッテリー、パワートレイン、サスペンション、操舵類などを揃えたした共通プラットフォームを基にした電気自動車を開発している。AmazonはThe Climate Pledgeを発表した際に、10年で100,000台の電気自動車をRevianから購入する計画を明らかにした。
  • Redwood Materials: Teslaの元CTOが創設。リチウムイオン電池や他の電子廃棄物を価値の高い金属や素材にリサクルし、循環型サプライチェーンにつなげる。Amazonは電気自動車や他の事業で用いているバッテリー、電子廃棄物にRedwoodのリサイクルプロセスを導入する。
  • Turntide Technologies: 高価な素材やレアアースを用いずにエネルギー消費を最大64%削減できるスマートモーターを開発する。AmazonはTurntideのモーターを同社の施設に導入してテストしており、これまでのところ良好な結果を得ているという。
  • Rivianの電気自動車プラットフォーム「Skateboard」

    Rivianの電気自動車プラットフォーム「Skateboard」

Amazonが掲げるClimate Pledge基金の大義は「Amazonと他の企業がCO2排出削減の目標達成できる新たな技術の成長を支援すること」だが、全ての投資がAamzonへのリターンになっているところが実にAmazonらしい。

CO2排出が経済成長に根づいた仕組みができあがっている状況で、CO2排出量削減だけを目標にしてもうまく回っていかない。経済活動と両立するような環境・エネルギーのイノベーションが求められる。発表と共にビジネス系のポットキャストなどに出演したAmazonのMatt Peterson氏は、過去に温暖化対策のベンチャー投資が失敗 (同氏はメルトダウンと表現)を繰り返してきたことを指摘、その上で「このプロジェクトにおいて私達は供給ではなく、需要の観点からアプローチしています」と述べていた。Amazonがゼロカーボンを実現するために何が必要か自問しながら、そのソリューションとなる会社を探す。「この観点から適切な会社を見つけることができれば、すぐにでもAmazonがそのテクノロジーの顧客になります。これは何よりも持続可能な投資方法だと思います」(Peterson氏)。

米国エネルギー情報局によると、2019年に米国のエネルギー消費で再生可能エネルギーが石炭を上回った。これは1885年以来、130年以上ぶりのこと。今年1月にMicrosoftが2030年までに「カーボンネガティブになる」と宣言したが、CO2の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにするカーボルニュートラルを超えて、ゼロ以下を目指す企業が現れ始めている。

  • 石炭を用いた火力発電の減少、風力発電と太陽光発電の伸びで、米国で再生可能エネルギーの消費が石炭を上回った (US Energy Information Administration)

    石炭を用いた火力発電の減少、風力発電と太陽光発電の伸びで、米国で再生可能エネルギーの消費が石炭を上回った (US Energy Information Administration)

その背景にあるのは、CO2排出量を抑えながら経済成長を可能にする"技術の民主化"である。世界の共通課題である気候変動対策を長期的に展望すれば、誰もがCO2排出からの脱却を迫られる未来がやってくる。その時に脱CO2を前提としたビジネスへと転換する会社や組織を支援して脱CO2経済を推進する存在になる。そのための技術、知識と経験を蓄えていく。社会が抱える大きな問題に取り組み、そのソリューションとなる技術で応え続けてきたIT大手が今、脱CO2に力を注ぐ理由である。

先週、立憲民主党の枝野代表の「後ろ向きのデジタルじゃなくて、前向きの自然エネルギー」という発言が論争を巻き起こした。演説の動画を見てみたが、全体を通して聞くと、デジタル化を「後ろ向き」と批判しているのではなく、デジタル化の遅れを取り戻すだけでは不十分、これからの成長可能性として自然エネルギーを推進しようという主旨であるのが分かる。ただ、政権との違いをアピールしたいあまり「後ろ向き」という演説内容にそぐわない言葉を使ってしまい、その一言に焦点を当てた報道によって混乱した。結果、肝心の日本の自然エネルギー技術の価値が伝わらない議論に発展してしまったのは残念だ。