注目を集めるEOSL/EOLハードウェア保守サービス

ITコストに厳しい目が向けられるなか、メーカー保守切れ(EOSL/EOL)ハードウェアの保守サービスに注目が集まっている。これは、メーカーサポートが終了したハードウェアについて、メーカーとは別の事業者が、故障部品の提供やオンサイトでの修理、メンテナンスを行うというサービスだ(EOSLはEnd of Service Life、EOLはEnd of Lifeのこと)。

通常、メーカーによるサポートが終了すると、ハードウェアは新品へとリプレースされることになるが、経営環境が厳しさを増す昨今では、そのための予算をつけることもままならないのが実情だ。そんななか、EOSL/EOLハードウェア保守サービスを活用することで、システムの安定稼働と延命を図る企業が増えているのだ。

全国のチェーンストア向けに棚卸のトータルサービスを提供し、業界シェア約80%(同社調べ)を持つエイジスもそんな企業の1社だ。同社の顧客は、コンビニ、スーパー、GMS、百貨店、ホームセンター、書店など約2000社、棚卸サービスを利用する店舗数は年間13万店舗を数える。街中で見かけるほとんどの店舗で同社の棚卸サービスが利用されていると言ってもいい。

そんな同社が、自社サービスを支えるIT機器について、"メーカー保守切れ"という課題に直面したのは今年2月のこと。同社のサービスで利用しているデルのPowerEdgeサーバ約60台が、2010年度、2011年度に順次保守切れを迎えようとしていた。そこで、同社は、リユース(中古再生)機器大手、データライブが提供する「DELL PowerEdgeサーバ EOSL/EOLハードウェア保守サポート」を契約。リプレースに伴うITコストを削減しながら、システムを安定稼働と延命に成功したのだ。

EOSL/EOLハードウェア保守サービスを利用することは、企業にどんなメリットをもたらすのか。エイジスで情報システム部長を務める福田久也氏と、データライブの山田和人氏の対談から、同サービスの魅力を探る。

エイジス


1978年に設立された老舗の棚卸サービス事業者。業界シェアは実に約80%(同社調べ)に上る。2003年には韓国に「エイジスビジネスサポート株式会社」を創設してグローバル化に対応。現在は、大連、上海、台湾、マレーシアにも拠点を構える。

顧客企業は約2000社、サービス実施店舗数13万5623店(2011年3月期実績)。2011年6月末現在で全国83箇所に営業拠点を持つ。

URL: http://www.ajis-group.co.jp/index.html

メーカー保守切れに対応する"唯一"の選択肢

――ハードウェア保守サービスを契約したきっかけを教えてください。

エイジス 情報システム部長の福田久也氏

福田: サポート保守契約の期限切れにどう対応しようか検討していたところ、データライブさんのサービスを見つけたんです。Webサイトには当時、HPとOracle(Sun)のハードウェア保守サポートしかなかったんですが、ダメ元で「デルのサーバは対応できませんか」と聞いたら、「OK」との返事をもらった。もう、即決でしたね。

山田: デルについては、ちょうどサービスを開始しようとしていたタイミングでした。デルのサーバは、企業のサービス提供基盤としてデータセンターなどで利用される例が増えていて、問い合わせも多かったんです。

山田: ところで、私ども以外ではどのようなサービスを検討されていたのですか。

福田: ハードウェア保守に入る代わりに、サーバが故障したときなどに保険金がでる保険サービスを検討していました。実は、それ以外の選択肢はなかったんです。EOSL/EOLハードウェア保守サービスという存在も初めて知ったほどです。ですから、「そんな便利なサービスがあったんだ」と喜んで、すぐに問い合わせたわけです。

福田: そもそも、こういったサービスを行う事業者さんは多いのでしょうか。

山田: 国内では、私ども含め数社しかありません。デルに関しては当社だけです。欧米では、セカンダリーマーケットと呼ばれるリユース/中古市場が成熟している関係で、EOSL/EOLハードウェア保守サービスも充実しています。メーカー保守が切れたら、必ずしも新品にリプレースするのではなく、リユース品を活用することが一般的になっていますね。

――契約したサーバはどういった用途に使っているものですか。

福田: 社内のサーバルームに設置したラックマウント型サーバ60台のうち30台でEOSL/EOLハードウェア保守サービスを契約しています。グループ会社に提供しているシステムや、Lotus Notes/Dominoで構築している情報共有基盤など、情報系システムなどが主ですね。それ以外でも、当社が提供している棚卸に関するサービスなどで、データライブさんのリユース品を活用しています。クラスタを組んだ本番環境で稼働している機器もあります。利用してみて実感したのですが、本当にいい機材が揃っていますよね。

山田: 特に調達は得意にしておりまして、国内50社、海外700社のパートナー企業から、さまざまな部品を調達できる体制を敷いています。新品の調達ソースとは違い、パートナー同士がグローバルで在庫を共有しているので、例えば、20年前のハードウェアの電源とか「よくそんなの見つけられるよね」と言われるものを見つけてくることもできます。セカンダリーマーケットに流れている新品未開封の製品を最短5営業日で調達できることが強みの1つです。

新品リプレースと比べてコストは10分の1に

――棚卸サービスというのは具体的にどんなものなのでしょうか。

福田: 当社のスタッフが実際の店舗に赴いて、商品の棚卸を行うというものです。商品のバーコードをスキャンしてデータを取得し、それをPC上にアップロードして集計、在庫情報の報告書、データを納品します。国内外含め多くのお客様とお付き合いがありますので、毎日日本のどこかで棚卸サービスを提供していることになります。棚卸のレコード数は、年間16億レコードを超える規模です。それ以外にも、改装や季節ごとの棚替え、カスタマーサービスをチェックする覆面調査サービス、賞味期限のチェックや清掃、補充などチェーストアの店舗運営に関するトータルサービスを提供しています。

データライブ 代表取締役の山田和人氏

山田: そうしたサービスに関わるシステムやデータの管理も、すべて自社でやっていると伺いましたが。

福田: はい。情報システム部は国内約40名で主に企画設計を担当し、実際の開発は大連の約50名のスタッフがオフショア開発を行うという体制です。ソフトウェアだけでなく、商品情報をスキャンするハンディターミナルなどのハードウェアも、大連で開発製造しています。データについても、以前は、データセンターを借りていましたが、現在はすべて自社で管理しています。すべて自社で行うことは、我々の強みの1つです。ただ、その反面、維持管理コストをどうまかっていくかが課題になります。今回、データライブさんのサービスを利用した背景にも、そうしたコストの問題がありました。メーカーのサポート期限が切れたからといって、すぐに新品へリプレースしようとしても、台数が台数なので稟議が通りにくんですね。

――実際には、どのくらいのコスト効果が得られたのでしょうか。

福田: 正確な試算はしていないのですが、30台のサーバハードウェアに、OSのライセンスコストやミドルウェアの改修費などを含めると、新品へのリプレースと比較して、10分の1にまでコストを圧縮できたはずです。社長賞をもらってもおかしくない額ですね(笑)

山田: ソフトウェアがまだ使えるのに、ハードウェアのライフサイクルに沿って、そっくり入れ替えるというのは、日本特有の習慣になっていますね。

福田: そうでしょうね。実は、当社もソフトウェアはほとんど変わっていません。Lotus Notesのバージョン4.5が現役で動いている。でも、ハードウェアに関しては、十数年来、買い替え、買い替えでやってきました。今回、そうした方向性を変えて、実際に効果を実感したので、今後は、さまざまな機器で、保守サポートやリユース品の活用を進めていきたいと思っているところです。

壊れることを前提に、リユース品で機器を冗長化

――実際にサービスを受けられて、どう思いましたか。

福田: 幸か不幸か、4月にサービスを受けてから、故障はまだ発生していません。といっても、いつでもオンサイトに修理に来てくれて、部品をすぐに交換してくれるという安心感はとても大きいものです。当社のシステムは、壊れても近いうちに代わりのパーツが手に入りさえすれば問題がでないように組んでいます。また、私自身、「新品でも使ったとたん中古だよね」という考えを持っています。ですから、データライブさんのように、リユース品を豊富に扱っていて、さらに、保守サポートまで提供していただけるというのは、願ってもないサービスなのです。

山田: かつてのように機器の故障率が高かった時代はまだしも、最近のハードウェアは故障率も下がりましたし、クラウドのように「壊れたら予備機を入れ替えるのが前提」のシステムづくりが進んでいることを考えると、ハードウェア保守に対する発想を変えてもいい時期に来ていると思います。実際、「まだ使えるから、なんとか延命したい」というニーズは年々高まっています。

――今後、どのようなシーンでサービスを活用していけそうですか。

福田: 例えば、システムの冗長化にリユース品を活用できると思っています。特に今夏は、節電、停電がシステムに与える影響を考慮しておく必要があります。現在、関西の拠点を使って、ハードウェアの冗長化を進めようとしているところで、そこで、リユース品や保守サポートを使おうと思っているところです。

山田: 実際、東日本大震災後は、そうしたニーズが増えていますね。冗長化というのは、はがゆい予算といいますか、そのまま構築するとITコストが倍増してしまいかねない性質のものですから、投資判断が難しい。その際に、当社のサービスを利用していただければと思っています。