片手だけではスマホを操作できない!
Unihertz TitanにTORQUE G03という“重量級”デバイスを好んで使っている筆者も悪いのですが、たとえ軽めのデバイスであったとしても、イマドキのそれなりに広い画面を持つスマホは「片手で本体を持ちもう一方の手(できれば利き手)で画面をフリックする」というスタイルでないとまず使えません。
しかし、発症した直後の筆者は、右手が自由に使えませんでした(この状態は発症してから2週間ほど続きます)。左手もスマートフォンを持つだけで精一杯です。ぽちっとボタンを押したりタップすることはできても、スッスッと画面をなぞるフリックは片手操作では困難でした。さて、どうしましょう。
この状況を解決してくれたのが、Facebookのメッセージで使える音声通話機能でした。普段から携帯電話を通話で活用していて連絡先に仕事先や知り合いがしっかり登録されているなら、かけたい相手の名前をタップするだけで済むのですが、普段から「携帯電話の連絡先は情報漏えいが心配」と思っていた筆者はデバイスのローカルに連絡先を登録していませんでした。
そのため、電話をかけることができません。加えて、これはもう個人的な主義主観というごくごく限られた事情なのですが、イマドキ主流の通話手段であるLINEも“ごくごく限られた人(主に身内)”しか登録されておらず、仕事仲間はおろか、友人ともつながっていません。コミュ障、ここに極まれり。
唯一、多くの人とつながっていた音声通話手段がFacebookのメッセージでした。これなら、タップで相手を選んでタップで通話を始めることができます。
こうして、その時点で仕事を受けていた相手の“ほとんど”(一部、Facebookでつながっていない仕事先もあり、その方にはしばらくの間、直接連絡を取ることが叶わなかった)に事情を説明できました。
文字が打てない状態で窮状を伝える最後の手段
しかし、その時点で仕事をいただいていなくても、これまで取引のあった相手から仕事を依頼される可能性はあります。依頼の連絡が入ったらできるだけ早く返信をしなければなりません。状況を説明して断りの連絡を入れるならまだしも、音信不通のままでは、相手に迷惑をかけてしまいます。
しかし、今までお世話になった方々全員にそれぞれ連絡を送ることは、メールなら可能でもメッセージの音声通話機能では物理的に不可能です。とはいえ、メールで同報送信するにしてもSNSで今の状況を発信するにしても、ある程度の長さの文章を書かなければなりません。
このとき、ふと思いついたのが「動画を撮影してSNSで発信する」ことでした。幸いにして倒れた直後から会話をすることはできていました。スマートフォンのカメラで現状を説明する動画を撮影してSNSに投稿する操作なら、片手でも可能です。
片手でスマートフォンのカメラを動画モードで起動してからスマートフォンを持ち上げて自分を映し、現状を伝えるメッセージを話し、話し終えたらスマートフォンを降ろしてカメラの動画撮影を止める。こうして撮影した動画をSNSに投稿したことで、何とか仕事でつながっていた方々に自分の状況を伝えることができました。
投稿した動画によって、私が脳出血で倒れたことを仕事関係者の皆さんに知らせられましたが、同時に、仲間たちにも自分の状況を知ってもらうことになりました。すると、多くの仲間がお見舞いのメッセージを送ってくれたのです。このときは本当にうれしく、そして、たくさんの力をもらいました。
こうして文字や言葉にしてしまうと“月並み”な表現になって恥ずかしくなってしまいますが、それから長い入院生活を送ることになる私にとって一番の支えになったのが、SNSで仲間からいただいたアクションやコメントだったのです。
仲間に自分の気持ちを伝えたい、外にいる仲間とつながっていたい、という思いが、その後治療やリハビリに取り組む希望の原動力であったといっても過言ではありません。