今回は、CO2削減活動を支援するため、データセンター(DC)を含む事業のあらゆる部分のエネルギー削減を検討しているグローバル展開する会計事務所(以下、A社)の導入例を紹介します。

A社の既存のDCは、低排出ガスの天然ガス発電システムを使用して電力の半分近くを生産しているほか、発電機の排熱を環境へそのまま排出する代わりに、冷却装置に分配して空調システムに絶えず冷却水を供給し、IT機器の最適温度を維持するなど、さまざまな取り組みを行っています。

また、DC内のエネルギー効率化対策として、サーバの仮想化、ホットスポットの排除、過冷却やそのほかのエネルギー非効率性の排除に加え、穴あきタイルやブランキングパネルを使用して、熱気がキャビネット内に流れ込んだり、コールドアイル側に流入したりすることを防いでいます。

ビジネスが成長し、いくつかの企業買収が完了したことで、A社はDC運用をティア3のコロケーション施設に拡張することを決定しました。DCチームは、ラック構成と電源分配の設計方針を検証し、新旧両方のDCに新しい効率化ツールを導入する機会を得ました。

課題

A社の新しいコロケーションサイトは、本番環境と災害復旧環境の両方の役割を担います。既存DCにある重要なアプリケーションは、新しいサイトに複製されます。将来的には、両方のDCで同等の生産性を達成することが目標です。

新しいコロケーションサイトへの移行と同時期に、A社はサーバ環境をブレードサーバと仮想化環境に移行し、面積当たりの電力密度を高めました。ブレードサーバが設置される高密度構成のラックでは、高電圧の電力が必要になります。従来の低密度の2~4kWのラックは、ラックブレードサーバが満載された6~8kWのラックに置き換えられました。仮想化への移行により、本社のDCでは多くのラックスペースが解放されましたが、電力容量の制約が懸念されていました。

新しいコロケーションサイトには、将来拡張のための十分なフロアスペースと電気容量(5000平方フィートのスペースと約1メガワットの電力)がありましたが、電力消費と冷却の管理が懸念されていました。もう一つの課題は、異なるラック構成をサポートするラックPDU(Power Distribution Unit)と電力容量を決定することでした。

インフラ導入の合理化・迅速化を図るため、A社は異なるアプリケーションに対応する標準のラック構成を作成しました。例えば、ある1つのラックはCisco UCSシャーシ、プライマリのフラッシュストレージ、バックアップストレージで構成されます。別のラックには、プライマリのフラッシュストレージとバックアップストレージを備えた3~6つのUCSシャーシがあります。A社は、計画立案および潜在的な問題を積極的に排除するために、パワーチェーンとDC環境を一目で把握することを望んでいました。

ソリューション - インテリジェントなパワーチェーンと計測

そこでA社は、新しいコロケーションDCのためのPDUと監視ソリューションを探していました。これまでA社は、基本的なPDUとリモート電源パネルまでの電力を測定する分岐回路監視ソリューションを選択していました。しかし、このソリューションではエネルギーの使用量や容量についての詳細は提供されません。

新しいサイトではラックや機器レベルで、より下流の電力を細かく計測したいと考えました。ITチームは、さまざまなベンダーのラックPDU製品の相互接続テストを実施しました。50アンペアの三相インテリジェントラックPDUの導入により、コストを倍増させることなく効果的にラックの密度を倍増させることができます。三相PDUは、UPSからラックまでの電圧変換時のエネルギー損失を排除できるので、エネルギー効率も向上します。

PDUから収集されたリアルタイム情報は、DCIM(Data Center Infrastructure Management)ソフトウェアで分析されます。DCIMツールは電力容量とエネルギー消費を監視することに加えて、DCのヘルスマップ、電力解析、冷却チャート、潜在的な問題のアラートを提供するのに役立ちます。

「インフラがどのようになっているのかを視覚化して確認できるようになると、例えばコロケーションサイトに新たに12台のラックを設置したいといった場合に、サーバメーカーのスペック情報ではなく、正確な消費電力情報を使用して迅速な分析を行い、インフラの決定を下すことができます。スペック情報は状況によっては問題ないかもしれません。しかし、フルサイズのブレード、多数のコア、および多くのメモリを搭載すると、電力をたくさん消費することになります。負荷下で実際に何が起こっているのかを知りたいでしょう。そのため、コンセントレベルでの計測可能な機器は役立ちます」(A社DCオペレーション担当のディレクター)

ベンチマーキング

ラック内の構成が同じであっても消費電力は異なるため、DCIMツールの情報が有効です。

「DCIMツールから収集された洞察は新旧両方のデータセンターで役立っています。DCIMツールが作成する、ラック内の電力容量など、さまざまなレポートを使用しており、注目すべきものを簡単に見ることができます。黄色は注意が必要、赤は重大な閾値に達することを意味します。また、レポートを使用して、なぜラックを30アンペアから50アンペアに更新する必要があるかを実証しています」(A社DCオペレーション担当のディレクター)

A社のDCにはIT機器を保護するために、気流、温度、湿度を管理するセンサが装備されていました。温度センサは、ラック上部での還気の温度を測定するために配置されています。CRACユニット近くの温度を監視することにより、センサはすべてのCRACを稼働させる必要がないことを示し、冷却コストを削減することができました。また、センサはホットスポット排除するのにも役立ちます。

より多くのアプリケーションが導入されるにつれてラックが増えるとPDUも増えます。そのため、ITチームはPDUを接続するためのスイッチポート数の状況、ネットワーク接続、バックアップ接続など、インフラの制約に注意を払っています。スイッチポートとIPアドレスを節約するためは、PDUのカスケード機能が有効で、A社ではこれを採用しています。

まとめ

「分散した複数のDCを管理するためにDCIMモニタリングツールと、インテリジェントPDUによる統合管理プラットフォームを構築し、DCインフラの視覚化が可能となりました。電力容量を理解することで、サービスを維持、迅速に構築する際の信頼性を得ることができました。それは車にガスゲージを持つようなものです。私たちはリアルタイムな電力使用量とインフラのパフォーマンスを把握できています」(A社DCオペレーション担当のディレクター)

Raritan Blog

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