さて、ペンタブレットのメリットがわかったところで、実際の機種選びに移ろう。ワコムのペンタブレットには、普及型の「Banboo」シリーズ、上位機種の「Intuos4」のふたつのシリーズがラインナップされている。はたしてこの2機種の違いはどこにあるのだろうか
軽い筆圧での反応に大きな違い
まず、Intuos4はBanbooシリーズと比べて、倍の筆圧感知レベルがある。ただ、筆圧感知はBanbooでも実用上、差し支えのない性能で、普通に使っていればその差はほとんど感じられない。ただ、圧倒的な差が感じられるのが、軽い筆圧での反応。BanbooとIntuosでは筆圧センサーの方式が異なり、Intuosではごく軽い圧力でも確実にパソコンに伝わるよう調整されている。ブラシやペンの入り、抜きといった表現は従来のペンタブレットでは苦労させられたが、Intuos4では、それがごく自然にできる。薄塗りを塗り重ねるといった表現もリアルにできる。
回転、傾きに対応している&オプションのペン
ペンの傾き、回転に対応しているのはIntuos4だけだ。アプリケーション側が対応している必要があるが、平筆やカリグラフィペンなどがIntuos4の場合、ペンの傾き、方向でコントロールできる。また、その性能を利用したワイヤレスマウスや、特殊形状のペンなどオプションペンが多く用意されているのも最上位機種ならでは。同じペンを追加購入し、それぞれのペンで異なる筆圧設定をして使い分ける、といったこともできる。
ファンクション機能の違い
描く以外の補助的な操作を行う、ファンクション機能にも大きな違いがある。Banbooはペン以外に、指で直接、盤面をタッチしたりスライドさせることで、スクロールなどの操作が可能。ファンクションボタンは4つ搭載されている。これに対しIntuos4はフィンガーアクションは非搭載だが、ボタン8つに加え、ホイールパッド、ラジアルメニューなど選択肢が広い。
どちらも一長一短があり、好みも分かれるところだが、ここで判断基準として考えたいのが、制作時に複数のアプリケーションを使うかどうかだ。Banbooの環境設定では、各ボタンに1種類の機能しか割り当てることができない。これに対しIntuos4ではアプリケーションごとでファンクションや筆圧感度などの設定を変えることができるのだ。使うアプリケーションが異なれば、登録しておきたいコマンドも当然異なる。複数アプリでタブレットを使いたいなら、Intuos4を選ぶべきだろう。
機種の選択
Intuos4の購入を決めたら、次に迷うのがサイズだ。Intuos4には、「Small」、「Medium」、「Large」、「Extra Large」の4サイズがある。Extra Largeは設置面積が非常に大きく、VFXスタジオなど特殊業務向けと考えていいだろう。一般用途であればSmall~Largeで選ぶことになるだろう。
描画面積の比較。比率がややワイドだが、Extra LargeがほぼA3、LargeがA4、MediumがA5、SmallがA6サイズ。ただし、本体面積はそれぞれ、約倍になるので購入前に設置場所の広さをを確認しよう |
選ぶポイントとしてはまず、利用するモニタサイズ。13インチ前後のノートPCであれば、Smallでも小さすぎることはないだろうが、グラフィック作成目的であれば、モニタも大きなものを利用している人が多いだろう。20インチ前後ならMediumモデルが一般的。ちなみに筆者は27インチのiMacでMediumモデルだが、盤面が小さすぎて困る、ということはない。
次に自分が描く絵のタイプによる違いを考えよう。アナログで絵を描くときに、手首だけ動かして描くタイプか、腕全体を動かして描くタイプなのかだ。前者はマンガ、マンガイラストなど、線画ベースの作画、後者は油絵に代表される、絵の具を塗り重ねていくタイプの描き方。後者の描き方に慣れている人にとっては、SmallやMediumサイズは小さく感じる場合があるのでワンサイズ上がオススメ。あとは設置面積での判断となるが、大きなサイズはひざの上で立てて使う方法もある。設置方法については次回、紹介予定。
サイズが決まったら、バンドルソフトの要・不要もチェックしよう。Small、Mediumには、「PhotoShop Elements」、「Painter Essential」、「Painter SketchPad」がバンドルされたモデルがある。バンドルソフトの有無による価格差は3,000円なので、ひとつでも持っていないアプリケーションがあるようなら、バンドル版がお得だ。
Illustration:まつむらまきお