前回まで、さまざまな切り口でペーパレス化によるメリットを説明してきました。今回から、実際にペーパレス化を実現するためのソリューションについて紹介します。

ペーパレス化のソリューションには特効薬はない

テクノロジーは変革の手段であり、それ自体が終わりではありません。将来の明確な目標を設定し、そのビジョンに基づいた戦略に焦点を当てるべきです。

しかし残念ながら、ペーパレスを実現するソリューションを導入するにあたり特効薬はありません。最大の問題点は、ペーパレス化が非常に多くの選択肢もたらし、過剰なほど多くの期待を寄せ、さまざまな働き方を提示するため、想像を超えた大きな不確定要素が生じることです。

よって多くの経営者や管理者は、技術や製品などテクニカルな課題に圧倒され、どこから始めるべきかが不明確になってしまいます。まずはソリューション選定に必要な要素を考えてみましょう。

成功する多くのペーパレスプロジェクトは明確な目標を持っています。ペーパレスを目指すにあたり、コスト削減・効率化・合理化などは目標にあらず手段でしかありません。まずはコスト削減・効率化・合理化により、どこにたどり着こうとするかを考える必要があります。

例えば自社だけでなく、従業員・ビジネスパートナー・顧客など、企業に携わる「人」の利益につながる電子化戦略をペーパレスの目標に挙げるとします。米T-Mobile社が全米の店舗において顧客との契約を電子化したことは1つの良い例です。

T-Mobile社は、契約をペーパレスにするだけでなく、契約後のバックエンドプロセスとも連携して電子化したことに加え、顧客の不満を解消し、顧客満足度の向上につなげることに成功しました。

ペーパレス化を実現するソリューション

では、ペーパレス化を実現するソリューションにはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれのステップにおいて、どのような要素が含まれているのかを紹介します。

1. 紙を電子化するためのソリューション

紙を電子化するためのソリューションは、ビジネスの電子化に取り組むための最初のステップになります。昔は限られた手段しかありませんでしたが、技術が高まるにつれて以下のようにさまざまなハードウェアで電子化が行えるようになりました。

  • コピー機
  • スキャナ機
  • OCRソフトウェア
  • スマートフォン/タブレット

このステップでは煩雑な作業が発生しがちなため、手軽かつ自動的に、次に挙げる電子ファイルのインフラソリューションや電子ファイルを利用するためのデバイスと連携できることが、選定のポイントになります。

2. 電子ファイルのインフラソリューション

以下が電子ファイルを活用するための主なインフラソリューションになります。

  • 文章管理アプリケーション(例 : Evernote、Onenote、Simplenote、etc.)
  • クラウドプラットフォーム(例 : Box、Google Drive、OneDrive、Salesforce、AWS、Azure、etc.)
  • グループウェア(例:Office 365、サイボウズOffice、G Suite、Slack、etc.)
  • eシグニチャ(例:DocuSign、Adobe Sign、CloudSign、etc.)
  • eビリング(例 : stripe、PayPal、etc.)

電子ファイルを保存、閲覧、送受信するための、文書管理アプリケーションやクラウドプラットフォーム、グループウェアはペーパレス化おいて必須と言っても過言ではありません。これらのソリューションにより、ペーパレス化の基本的なメリットである、ブラウザ上での検索やクラウド上でのデータの管理、電子ファイルによるコミュニケーションがいつでもどこでも行えるようになります。

また、署名処理だけではなくあらゆる合意形成プロセス(例えば社内稟議、情報の受取確認、情報収集など)を電子化するeシグニチャや、請求プロセスを電子化するeビリングなど、ワークフローを電子化するソリューションは、ビジネスの変革に直結します。

これらのインフラソリューションは非常に多様で、多くのベンダーから提供されています。上記のようにペーパレス化を成功させるためには、目標を設定することが重要です。

インフラソリューションが共通して備える、アクセシビリティ(いつでもどこでもアクセスできる)やアヴェイラビリティ(該当する情報を容易に検索・取得できる)、ユーザビリティ(使いやすく、電子ファイルの加工や統合がし易い)、インテグレーション(APIが充実し他のサービスと連携しやすい)、セキュリティを設定するビジネスの目標に合わせて精査すべきです。

3. 電子ファイルを活用するデバイス

昨今の働き方改革とテレワークの促進により、タブレットやスマートフォンのビジネス活用は高まっています。タブレットやスマートフォンは、上記の紙を取り込むためのソリューションだけでなく、電子データやワークフローを提供するクラウドプラットフォームにアクセスする重要な役割を担っています。

真のペーパレス化のためのソリューション導入には、顧客満足度につながる複数面の評価が必須

まとめますとペーパレス化によるデジタル変革、ビジネスの完全な変革であり、組織全体のトランザクションをオンラインや、そのほかのデジタルテクノロジへ移行します。デジタル変革はより効率的に顧客にサービスを提供し、コストを削減し、より良い顧客体験を提供するため、ペーパレス化するビジネスプロセス、アクティビティ、オペレーション、およびインフラストラクチャを一から見直すことがスタートラインになります。

真のペーパレス化ではビジネスの一面だけでなく複数の側面を評価し変更する必要があります。最も効果的で有益なことは、組織内の部門、つまり個々の従業員から経営層までのプロセス、アクティビティ、資産などのすべてのビジネスに接続された要素を変更しなければいけません。

その理由は顧客への製品やサービスの提供につながっているすべての活動やプロセスは、変革の候補とみなされるからです。そして、変革には使用される資産や技術、作業方法、データが含まれます。これらの相互接続されたすべてを変革し、新鮮な思考を適用することで、お客様に喜ばれるタイムリーな体験を提供できます。

真のペーパレス化は、ただ単純に既存の紙ベースの文書をデジタル化するだけではなく、これまでのプロセスを可能な限りオンライン上に置き換えることから始まります。ペーパレス化を最大化するためには、顧客第一のアプローチで、上記に挙げたソリューションを組み合わせるべきでしょう。

デジタルへの移行を心得ながら、より効率的な新しい作業方法を生み出し、ビジネス要件のあらゆる角度から既存のプロセスを再評価する必要があります。ペーパレス化を実現する組織は、仕事とビジネスのあり方を改善し、真の働き方の改革も実現しています。このような斬新的なアプローチを取ってこそ、基本的な改善以上のことが望めます。

最後に、ペーパレス化は一度導入したら終わりではなく、継続的に取り組むべきです。「変革」は「進化」になり、組織は継続的に適応し、時代とマーケットに合わせて柔軟に変化することができるようになるでしょう。


ドキュサイン・ジャパン シニア・セールス・エンジニア 蛯子晃仁
ドキュサイン(DocuSign)は、電子署名とペーパレスソリューションのプラットフォームです。ドキュサインを使うことで、時間や場所、デバイスに関係なく、クラウドで文書を送信、署名、追跡、保存を可能とし、セキュアな環境の下、業務のペーパレス化を実現します。ドキュサイン・ジャパンは、米DocuSignの日本法人です。