ネットワークセキュリティを専門とするエムオーテックスが運営しているオウンドメディアが「NO MORE 情報漏えい」で、サブタイトルは「情報漏えいの『自分ごと化』プロジェクト。」だ。

エムオーテックスはネットワークセキュリティ総合管理ツール「LanScope Cat」を中心に、スマートデバイスを管理する「LanScope An」などのシリーズを展開している。同社がセキュリティビジネスを行う中でよく感じることは、情報漏えいやセキュリティに対する「他人ごと」感覚だという。

「情報漏えいについて、誰もが被害者にも加害者にもなる可能性があるのに、他人ごとにされている感じがありました。少しでもセキュリティに興味を持ってもらいたいということで始まったのが、『自分ごと化プロジェクト』です」と語るのは、エムオーテックス 企画広報部 副部長の坂本琴音氏だ。

今回取材に対応いただいたエムオーテックス 企画広報部 副部長 坂本琴音氏(右)と企画広報部 Web企画課 グループ長 藤田幸氏(左)

このプロジェクトでは、セキュリティに関する意識調査や実態調査を自社で行ったり、Twitter上でキャンペーンを展開したりと幅広く活動している。昨年末には居酒屋とコラボレーションして、忘年会シーズンの情報漏えい撲滅キャンペーンを実施。リアル店舗で配布されるコースターに啓発メッセージを刷り込み、連動したTwitterキャンペーンも好評を博したという。オウンドメディアとしての「NO MORE 情報漏えい」は、このプロジェクトの活動報告の場でもある。

「情報漏えいに関しては情報システム部門だけでなく、社員一人一人が意識を持ってやらなければ意味がありません。メーカーとしてそういう点を発信すべきではないかと考え、場を探していました。そこでオウンドメディアを立ち上げたのです」と語るのは、エムオーテックス 企画広報部 Web企画課 グループ長の藤田幸氏だ。

実際に「NO MORE情報漏えい」が立ち上がったのは、2014年10月27日。1年半弱が経過した2016年3月現在では、月間PV10万弱、UU6万弱のメディアへと成長した。

エムオーテックスのオウンドメディア 「NO MORE情報漏えい」

外部スタッフの協力を得ながら社内は一人体制で運営

記事のカテゴリは「NO MORE情報漏えいPRJ活動日誌」のほかに、「コラム」、「プロに聞く」、「調査レポート」、「ニュース」と大きく4つある。

「プロに聞く」では専門家へのインタビューを掲載し、「調査レポート」では自社調査や外部の調査についての情報を提供。「ニュース」はセキュリティ関連の事件があった時に速報的な記事を掲載する場所だ。

そして「コラム」には、ライトな読み物を掲載する「おもしろ」、各種ツール等の具体的な利用方法を紹介する「ハウツー」、事例を紹介する「ケーススタディ」というテーマがある。セキュリティという固い話題を主題にしながら、軽妙な読み口のものも多い。

「立ち上げにあたっては、他社のオウンドメディアも研究しました。最初のコンセプトは広報部と外部の協力会社で会議を行って決定しましたが、現在、社内の実働部隊は私一人です」と藤田氏は語る。

実際に記事を執筆するのは外部のライターの場合が多く、ライターとのやりとりは協力会社に任せている。入稿された原稿の確認や社内調整は藤田氏が行い、必要な場合はセキュリティの専門家にもチェックを受けている。

「テーマは毎月定例会を開いて決定します。企画を出すのは社内の場合も協力会社の場合もありますし、社員から次のテーマのアイディアをもらうこともあります。もし、複数企画を立てる場合は、偏りがないようにバリエーションをつける意識はしています。編集経験はありませんが、一読者として分かりづらい点はないか、ちゃんと伝わるのかといった点は気にしています」と藤田氏は語った。

月間の記事公開目標本数は5~6本程度だが、時事ネタである「ニュース」に関してはスピードを優先してリアルタイムな発信を心がけている。

「本業のセキュリティビジネスでは情報システム部門の方としか接点がないので、オウンドメディアではそれ以外の人にもリーチしたいと考えています。ターゲットは一人一人の社員の方ですが、今後、社会人となる学生さんなども意識しています」と藤田氏。幅広く、気軽に読んでもらえる記事づくりが意識されているようだ。

目標の10万PVを突破!順調な右肩上がりを支えるコンテンツ

「NO MORE 情報漏えい」のミッションは、少しでも多くの方にセキュリティに興味を持ってもらうことだ。そのためにはPV/UUを伸ばす必要があり、当面の目標として月間10万PVという数字を掲げていた。現在この目標は達成されているが、当初は遠い目標に思えたという。

「2015年4月頃は、PVはまだ1~2万程度でしたので、10万という目標は正直厳しいと思っていました。数字は順調に伸びていましたが、大きな転機となったのはモデルの五島夕夏さんが、記事チェックをしていただいている徳丸浩先生に1日密着するという『五島夕夏がセキュリティのプロ 徳丸浩先生に一日密着!今すぐ使えるテクニックを盗んできました』という記事です」(藤田氏)

かなりライトな記事だが、セキュリティを「自分ごと化」してもらいたいというポリシーを守り、読みたいと思ってもらえる記事にしようと作った企画が大当たりした。さらに、この記事で初めてサイトに訪れた読者が離れることなく、リピーターとして再訪してくれることや、SNS上のフォロワーになってくれることが、現在のPVにつながっているという。

「SNSでの拡散やコメントを見ていると、コーポレートサイトやプロダクトサイトとのユーザー属性の違いを感じています。記事の内容によってはかなり反響が得られ、いい意味で裏切られることも多いですね」(坂本氏)

オウンドメディアのPVを伸ばすポイントについて聞いたところ、藤田氏は記事内容の充実を挙げた。

「検索流入も多く、過去記事を長く見てもらえているかもポイントです。ハウツーはできるだけ具体的な手順を詳細に紹介しているので、検索にも強く、長く見てもらえる傾向にあります。」(藤田氏)

ユーザーからのコメントも、役に立つ、わかりやすいといったものが多いようだ。

今後も内容の充実を図り、ファンとなってくれるユーザーを増やすことで、エムオーテックスの認知向上と「情報漏えいの自分ごと化」を実現するのがメディアの目標だ。「NO MORE 情報漏えい」のプロジェクト自体を広げてコンテンツ制作につなげたい、エムオーテックスのオリジナリティを追求した記事を作成したいという希望も持っている。

「ライトな記事も多いですが、必ずしも軽いものばかりでないといけないとは思っていません。笑いから入った読者に深い情報にたどり着いてもらうにはどうしたらよいのかを考えています」と藤田氏は語った。