MicrosoftがWEBブラウザ「Microsoft Edge」をリリースした。2018年末にEdgeをChromiumベースで再構築する方針を発表、翌4月に最初のプレビュー版を公開して以来順調にアップデートを続けており、いよいよ正式リリースの運びとなった。そこで今回は、EdgeのMac版をレビューしてみたい。SafariにもChromeにもない機能の数々は、多くのMacユーザにとって新鮮に映るはずだ。
そもそもMicrosoft Edgeとは
EdgeのMac版と紹介したが、Edgeにはいくつかの開発途上版が存在する。独自機能を紹介するうえで、この辺りの理解は不可欠となるため、かんたんにまとめておこう。
まず、Edgeには今回公開された正式版のほかにBeta版とDev版、Canary版が存在する。後3者はMicrosoft Edge Insider Channelsで公開されており、Canary版は毎日、Dev版は1週間、Beta版は6週間ごとにアップデートされる。実験的な機能・カッティングエッジな機能は更新頻度がかなり多いCanary版(これが言いたかった)で試され、Dev版、Beta版とステージを上げつつ安定性を高めるという図式だ。
身も蓋もない言いかたをすると、現状EdgeはMacユーザにとって第2位の、どころか第3位にも届かない縁の薄いWEBブラウザだ。Windowsを併用しているユーザはさておき、Macにはかなり以前からChromeやFirefoxが存在するので、いまさら積極的に手を出す理由がない。Windows版のEdgeには、WEBページをInternet Explorerのエンジン(IE 11相当のTrident)で閲覧できる「IEモード」が用意されているが、Mac版ではサポートされないため、業務上のニーズも高くはない。
しかし、EdgeではTouch Barやダークモードをサポートするほか、ショートカットキーの整備などmacOSへの最適化が進められている。ブックマークや履歴をSafari/Chrome/Firefoxからインポートできるほか、Microsoftストアや(動作保証はないものの)Chromeウェブストアで配布される機能拡張を利用できるなど、実質的に「Chrome+α」なブラウザとしての機能を備えている。
Macユーザが使うメリット
Beta版の時期を含めてMac版Edgeを利用した感想だが、ユーザがどのような機能を望むか次第では"手に馴染む"WEBブラウザになる、という印象だ。MacだけでなくiPhoneユーザでもある場合、Safari/iCloudにWEBサイトのパスワード管理を委ねている都合上、Safariから完全に乗り換えることは難しいが、日々のブラウジングにEdgeを使うという選択はあっていい。
理由のひとつが、「マイニュース」。新規タブに表示される内容としてニュースを選択しておくと、msn.comがピックアップしたニュースが表示されるのだ。Safariの場合、新規タブにはお気に入り/よく閲覧するサイトのアイコンが表示されるだけで、意識してアクセスしないかぎりニュースは目に入らないが、政治・経済や芸能に至るまでの最新ニュースをすぐに俯瞰できるのはうれしい。
アンチマルウェア機能にも注目したい。Edgeでは「Microsoft Defender SmartScreen」というセキュリティ機能がデフォルトで有効化されており、マルウェア/フィッシングサイトに接続しようとすると、赤い画面で警告してくれる。Safariのデータはないが、フィッシングサイトからの防御率はChromeの87%、Firefoxの70%に対しEdgeは99%(2017年NSS Lab調べ)と高く、期待してよさそうだ。
プライバシーを徹底できるところもポイントだ。履歴やパスワード、Cookieを手動削除する機能はどのWEBブラウザにもあるが、Edgeにはブラウザーを閉じるたびに自動消去するデータを選択する機能が用意され、しかも閲覧履歴やダウンロード履歴、パスワードやCookieなど選択できる項目が多い。アクセス後に画像などキャッシュは残したいがCookieは消したい、といった変則的な設定もできるなど、ユニークな機能といえるだろう。
正式版には未実装のため、Canary版で試すことになるが、「コレクション」もいい。閲覧中のページをサイドパネルに登録していくブックマーク的機能だが、サイト名/サムネイルのほかに自作のメモを貼り付けておくこともできる。Windows版ではExcelやWordにエクスポートする機能も用意されているが、この"メモの混在が"が地味に便利で、ありそうでなかった機能といえる。
少々駆け足での紹介となったが、2003年が最後のリリースとなった「Internet Exploer for Mac」以来のMicrosoft製WEBブラウザは、全体的に手堅い印象。エンジンにChromiumを採用するなどオープンソースを軸としつつ、セキュリティ/プライバシー機能を充実させるといった独自性があり、Canary版やDev版などビルドを細かく分けたテスト体制も安定性/レンダリングの確かさにつながっている。今度は、長くともに過ごせそうだ。