日本時間の10月28日未明、Macユーザに衝撃が走った。それは、スペシャルイベント「hello again」で発表された新しい「MacBook Pro」。理由はもちろん、シリーズ最薄最軽量でもThunderbolt 3でもない、ファンクションキーがあった場所に「Touch Bar」が搭載されたことだ。

さようならファンクションキー、こんにちは「Touch Bar」

新MacBook Proは、従来ファンクションキーがあった部分に「Touch Bar」を搭載する。縦1センチ程度の細長い領域だが、ここにマルチタッチ対応のOLEDディスプレイと指紋認証機構「Touch ID」を配置することで、従来にないユーザエクスペリエンスを実現する。

具体的な用途は、AppleのWEBサイト(リンク)で公開中のスペシャルムービーを見れば一目瞭然だが、「キーボードに配置された動的なメニューバー」とでも表現すればいいだろうか。前面で動作しているアプリケーションに応じて、Touch Barの表示内容は動的に変化する。つまり、アプリケーションレベルでカスタマイズ可能なソフトウェアキーボード領域というわけだ。

Appleはこの機能を実現するために、「NSTouchBar」というAPIを用意した。発表会では、Adobe Photoshop CCのデモが行われていたほか、Microsoftなど著名ソフトベンダーも対応を表明している。開発者向けWEBページも公開されているので、開発者登録が完了していれば自由に利用できる。ユーザへの浸透は意外に早いのではないだろうか。

新MacBook Proはファンクションキーを廃止、代わりにマルチタッチ対応のOLEDディスプレイ「Touch Bar」を配置した(エントリモデル除く)

Touch Barに表示される内容は、アクティブなアプリケーションに従い自動的に更新される

「Touch Bar」はどう使われるか

以上がTouch Barのあらましだが、よく考えてみれば表示装置であり、入力デバイス以外の用途もありそうだ。パッと思いつくだけでも、株価情報のティッカー、ニュースのヘッドライン、などが考えられる。SNSの通知領域としても活用できそうだ。画面をタッチすれば反応するのだから、モグラ叩きのようなゲームにも応用できるかもしれない。メニューバー的用途に限定して考えるのは惜しいような気もする。

だが、AppleはTouch Barをあくまで入力装置と捉えているようだ。「macOS Human Interface Guidelines」の該当ページ(リンク)には、「ディスプレイではなくキーボードおよびトラックパッドの拡張として使うべし」という主旨の文章がある。Touch Barはセカンドディスプレイにあらず、前述したようなティッカーの類いに使うべきでない、とはっきり示されているのだ。

しかも、カラーの使用は最小限にして物理キーボードのサイズ/色に似せるべし、コピー&ペーストなどよく知られた作業用のキーは配置すべからず、などと注文が多い。審査をクリアしないかぎり世間に存在すら知られないiOSアプリとは異なり、Mac App Storeでの提供を諦め敢えて従わないという選択肢もあるだろうが、次第にAppleが望む方向へと収れんしていくはず。むしろ、今後iMacなど他のシリーズに波及するかどうかに注目したい。

Appleが定めるガイドラインでは、カラーの使用は最小限にすべしとされている

Touch Barの右端はTouch IDの領域として使用される(電源キーは廃止された)

ESCキーが消えたことの意味

冒頭に「さようならファンクションキー」と書いたが、正確にいえば「ファンクションキー+α」で、筆者を含む一部Macユーザは「+α」により大きな関心がある。そう、物理ESCキーの廃止だ。

ふだんCocoa Emacsで原稿を書く筆者にとって、ESCキーは定位置になくてもなんとかなる存在だが(init.elでCommandキーをMetaキーにアサインしている)、Vim派にとっては深刻な問題のはず。新MacBook ProのTouch BarでもESCキーは表示できるが、同時にFnキーを押さなければならない。これまでは左薬指(小指の人もいるだろうか)を伸ばせばよかったところが、右手でFnキーを押す必要が生じたのだ。

反響を予想してか、AppleはmacOS Sierra 10.12.1でESCのキーアサイン機能を追加しているが、これでは問題の解決にならない。アサインできるのはCaps Lock/Control/Option/Commandキーで、いずれも従来のESCキーの位置からは遠いためだ。長年Vimを愛用するユーザの"手癖"に応えることは難しいだろう。

とはいえ、Touch Barの左端だけが物理キーという構造は合理的と思えない。一度取り去ったキーを同じ位置に復活させることもないに違いない。新MacBook Proのキーボードが自分の"手癖"に馴染まないと確信するのならば、機種選定の段階から再検討するしかないのかもしれない。

macOS Sierra 10.12.1のシステム環境設定「キーボード」パネルでは、ESCをCaps Lock/Control/Option/Commandキーにアサインできるようになった