2016年1発目となる今回は、引き続き「MPD」について。全体像の説明とサーバの導入/初期設定は前回完了しているので、今回は各種カスタマイズとクライアントの紹介を行いたい。
設定を見直そう
前回、MPDの設定ファイル(~/.mpd/mpd.conf)を提示するだけで終えてしまったが、今回はカスタマイズ用のポイントを絞りいくつか解説を加えたい。
まず、インストールしたMPDでなにができるかを確認しよう。Homebrewで公開されているコンパイル済のMPDは、DSDやFLACなど各種のデコーダプラグインが有効な状態のため、現在流通しているオーディオファイルの大半はそのまま再生できる。Terminalで「mpd -V」を実行すると、「Decoders plugins」以下にデコーダと対応拡張子が表示されるので(デコーダは優先度が高い順に表示される)、どのデコーダが使用されるか気になる場合は確認しておこう。
MPDのカスタマイズは、適当なテキストエディタで設定ファイル(~/.mpd/mpd.conf)を編集して行う。USB DACへの出力など音声信号はシステム標準のフレームワーク「Core Audio」を使うOS Xの場合、他のOSに比べると改変余地は小さいが、カスタマイズのポイントを表に挙げておくので、必要なときはここを見直してみよう。
mpd.confをカスタマイズするときのポイント | ||
項目 | 内容 | 初期値 |
music_directory | 楽曲保存用領域 | ~/Music |
playlist_directory | プレイリストファイル | ~/.mpd/playlists |
auto_update | music_directoryの変更に応じてDBを自動更新するスイッチ | yes |
auto_update_depth | auto_updateの監視対象とするディレクトリ階層 | 4 |
audio_output | デコードした音声の出力先 | type "osx"、mixer_type "software" |
bind_to_address | IPv4アドレスを使用するための設定 | 127.0.0.1 |
user | ログインするユーザ名 | OS Xに登録済のユーザID |
クライアントを用意しよう
前回説明したとおり、MPDはシステムのバックグラウンドで稼働するサービスであり、クライアントからの指示を受けて楽曲の再生/デコードおよびオーディオデバイス(OS Xの場合CoreAudio)への出力を行う。MPD自体にUIはないため、別途UIを装備したクライアントアプリを用意しなければならない。
クライアントアプリとサーバ(MPD)は一定のプロトコルで通信を行うため、TCP/IPによる通信が可能であれば特定のプラットフォームには依存しない。プロトコル自体は単純で、「play」や「stop」といった文字列を送信しているに過ぎない。デフォルトでは、6600番ポートで命令を受け付けているため、ローカルホスト(手もとのMac)でMPDを動作させている場合は、次のようにtelnetで命令を伝えることも可能だ。
$ telnet localhost 6600
ここではOS X版クライアントを2つ紹介するが、スマートフォンアプリ(ex. iOS/Android/Windows Phone)もいくつか存在するのでそれを利用しても構わない。再生指示を担う"リモコン"という位置付けのアプリであり、音質や再生フォーマットの種類に違いは生じないが、アルバムアートワークの表示の有無など使い勝手に影響するため、吟味のうえ使用してほしい。
MpcOSXは、シンプルなGUIを持つクライアントソフト。デフォルトの設定では、接続先のサーバに「localhost」が設定されているため、手もとのMacでMPDを稼働させている場合はただ起動するだけで利用できる。UIはシンプルで、特に説明する必要もないだろう。
アルバムカバーの表示機能がない、アーティスト/アルバム単位でしか選曲できない(ジャンルや年代などの基準で分類できない)など必要最低限の機能しかないが、プレイリストの作成など音楽を愉しむにはじゅうぶん。動作も軽く、最初のMPDクライアントとしては悪くない選択だ。
このCantataは、基本的な曲操作やプレイリスト機能はもちろんのこと、曲情報を通知センターに表示する機能、曲/アーティスト名をもとにアルバムカバーを自動検索し取得する機能、レート機能やインターネットラジオ対応など充実した機能を備える。いまや過去のデバイスだが、Apple純正の赤外線リモコン「Apple Remote」のサポートもうれしい。iTunesと比べるとやや垢抜けない印象のUIだが、ハイレゾ再生が可能などメリットのほうが大きい。
なお、OS X向けMPDクライアントとしては「Theremin」も知られており、こちらもアルバムカバー自動取得機能を備えているが、開発動向を見るとCantataのほうがアクティブであり(Thereminは1年以上更新されていない)、その意味で安心感がある。機能の豊富さからいっても、Cantataのほうがお勧めだ。