El Capitanシリーズの4回目は、「消えた機能」をテーマにお届けする。なぜ、どうしてあの機能が消えたのか、代替機能はあるのかないのか、そのあたりも踏まえて解説してみよう。

Finderの「確実にゴミ箱を空にする」が消えた!

El CapitanのFinderは、UIにも機能にも大きな変更点はない。コンテキストメニューでファイル名の変更が可能になったとか、コンテキストメニューを表示しているときにoptionキーを押すと「○○○をコピー」が「○○○のパス名をコピー」に変化する(ファイルそのものではなくフルパスをコピーできる)とか、TIPS的な変更点はあるが、操作性に影響を及ぼすほどではない。

とはいえ、「確実にゴミ箱を空にする」メニューが消えたことは気になる。愛機を譲り渡すときはともかく、ゴミ箱を空にすることはあっても毎回念入りに消去するほどの慎重派ではないが、なぜなくなったか理由は知っておきたい。

AppleのWEBサイトを探したところ、「OS X El Capitan v10.11 のセキュリティコンテンツについて」なる文書を発見。その記述によれば、フラッシュストレージ使用時などある条件下でゴミ箱にあるファイルを安全に削除する保証ができない、ついては「確実にゴミ箱を空にする」を削除した、とのこと。 さらに調べると、日本の脆弱性対策データベースに「Apple OS X の Finder の確実にゴミ箱を空にする機能における重要な情報を取得される脆弱性」という文書が。記憶の糸をたどれば、数年前のセキュリティイベントで(詳細は失念してしまった)「確実にゴミ箱を空にする」で消去したファイルを相当な割合で復元できたという実例もあり、以来安全確実な機能とみなされなくなっていたことも事実。そのような背景から、機能の修正/改良ではなく機能そのものを取り去る方向で対処したということらしい。

Finderとは離れるが、「確実にゴミ箱を空にする」の代替機能としてはTerminalから「srm」コマンドを使う、という手がある。消去の確実さという意味では「確実に...」と同じだが(実際の処理はsrmコマンドで行われていたのだから当然)、下取りに出すMacから情報が漏れやしないかと気になる向きには、存在を知っておきたいコマンドといえる。

Finderから「確実にゴミ箱を空にする」メニューが消えた

ゴミ箱を長押しすると現れるメニューからも「確実にゴミ箱を空にする」が消えている

Disk Utilityの「アクセス権の検証・修復」が消えた!

第142回で触れたとおり(リンク)、El Capitanの「Disk Utility」からアクセス権の検証/修復機能が消えた。画面デザインが大きく変わったことに目を奪われがちだが、rootlessモードの効果によりシステム領域のファイルパーミッション(アクセス権)が固定化されたことがシステムのあちらこちらに影響を及ぼしていることがうかがえる。

もっとも、GUI部分からアクセス権の検証/修復機能が取り除かれたに過ぎず、実際に処理を行う部分は「repair_packages」コマンドとしてシステムに残されている。/binや/sbin、/usr/binが除外されるなど、rootモードの導入により対象範囲は大幅に狭まったが、プリンタ関連ユーティリティ -- /Library/Printers以下にインストールされているので検証/修復できる -- の調子がおかしい場合には試す価値があるだろう。

アクセス権を検証する(管理者権限要)

$ sudo /usr/libexec/repair_packages --verify --standard-pkgs

アクセス権を修復する(管理者権限要)

$ sudo /usr/libexec/repair_packages --repair --standard-pkgs

Disk Utilityにエラー修復機能は残るが、アクセス権の検証/修復機能は消えた

repair_packagesコマンドを直接実行すれば、rootモードの管轄外の領域はアクセス権を検証/修復できる

Safariのリーダーモードにある「ズームイン/アウト」ボタンが消えた!

Safariの「リーダー機能」は、広告などWEBページ上にある本文とは直接関係ない要素(立場上、不要とか邪魔と言ってはいけない)を非表示にして、テキストを読みやすくするためのもの。この機能で再構成可能なページにアクセスすると、URLバー左端に「三」のようなボタンが現れるはずだ。

それがEl Capitanになってから、ページ上部のズームイン/アウトボタン(大小の「A」)が消えた。本文とは直接関係ない要素が消えてもフォントサイズを調整できなければ魅力半減、環境次第ではかえって読みにくくなるかもしれない。

しかし、問題ない。ページ上からズームイン/ボタンは消えたが、URLバー右端に似たデザインのボタンが見えるはず。これをクリックすると……フォントサイズだけでなく背景色、フォントデザインまで変更できてしまうのだ。「リーダー機能 v2.0」とでもいいたくなるこの新機能、いちど試してほしい。

ページ上からズームイン/ボタンは消えたが、新設されたURLバー右端のボタンからフォントサイズ調整や背景色、フォントデザインの変更が可能になった