パナソニックグループは、Panasonic Group IR Day 2025を開催。同グループのソリューション領域における取り組みについて説明した。
パナソニックホールディングス グループCEOの楠見雄規氏は、「パナソニックグループは、ソリューション領域において、確固たる強みがある事業を持ち、稼ぐ力を高めることができるポテンシャルを持っている」と切り出し、「ソリューション事業の本質は、収益に持続的に貢献し、持続的に対価をいただき続けることである。お客様のビジネスの収益への貢献における共創力と、パナソニックグループのオペレーション効率における競争力が稼ぐ力に直結する。パナソニックグループには、トップシェアの事業を含め、グローバルで戦える事業が多いが、依然としてハードウェアの売り切りのビジネスが多く、持続的にお客様の収益に貢献するという点では、強化の余地が大きい。だが、データセンター向け蓄電池、電設資材事業、SCMソフトウェアの3つの事業については、そうした貢献ができはじめている」と指摘した。
AI需要で伸びるデータセンター向け蓄電池
ひとつめの「データセンター向け蓄電池」では、パナソニック エナジーの只信一生社長が説明し、「安全な電池を核とした電源システムでお役立ちを最大化することができる。パナソニックエンジーは、データセンター向け電源ソリューションプロバイダーを目指す」と宣言。2028年度には、売上高で8000億円規模を計画し、ROICで20%以上を目指す計画を明らかにした。2025年度の売上高は2000億円台後半を見込んでおり、約3倍に拡大させる。
また、楠見グループCEOは、「パソナニックエナジーの技術により、ラックごとの最大消費電力をサーバーのピーク電力よりも低く抑えて、データセンター全体の契約電力を低く抑えることができ、データセンターの事業者の収益向上に貢献できる。AIサーバーの急速な進化に伴う新たな電力課題の解決のために、蓄電システムの技術と機能を進化させ続けることで、データセンターの継続的な安定稼働を担保する」と述べた。
世界のAIサーバー市場は、2023年には520億ドルだったものが、2028年には2240億ドルへと急成長することが見込まれている。パナソニックエナジーでは、AIサーバー領域で採用されることが多い分散型電源方式に対する需要が拡大していること、AI学習などの大規模演算の増加を背景に、電源ソリューションへの要求が高度化していることに着目。24時間365日稼働のための電源バックアップとしての用途だけでなく、電力ピーク抑制、電圧変動の平滑化などが求められて領域で、技術的な特徴を発揮できるとみている。
只信社長は、「高出力や変動吸収などの高度なマネジメントを実現した電源ソリューションが求められており、その際には、サーバーに近接できる分散型電源が有効である。パナソニックエナジーは、分散型電源が普及する前から、ハイパースケーラーなどの業界リーダーと強固な関係を築き、共同で開発を進めており、電源課題を先読みし、他社に先駆けて必要とされる機能から仕様に落とし込んだ提案を継続的に行ってきた。セルからモジュールまでの一貫した開発、生産体制も市場から評価されている。この分野では8割のシェアを獲得している」と語る。
また、2028年度の目標としている売上高8000億円のうちの8割以上が、Award(製品の開発推進および受注合意案件)となっており、「既存商品をしっかりと供給するとともに、キャパシタを使用したCBU(キャパシタバックアップユニット)や、電源専用ラック向けBBU(バッテリーバックアップユニット)といった次世代商品の市場投入により、成長を図る。売上高8000億円の実現に向けた基盤はすでにある」とも語った。
同社では、今後の事業強化施策として、「供給体制の整備」と「次世代に向けた提案、開発力の強化」の2点に取り組むことを示す。
「供給体制の整備」では、グローバル供給拠点として、日本、北米での生産能力を迅速に拡充。効率的な投資により、急増する需要に対して柔軟に対応するという。
「車載電池の生産拠点を含めて、既存生産拠点の活用を進める。足もとの需要の急増には日本の生産拠点で対応しつつ、中期的には北米展開を進めることになる」という。
日本では、既存拠点でのライン拡充や、車載電池の生産ラインを改造して、2026年度第1四半期から生産を開始。2028年度に、セルの生産能力を、2025年度比で約3倍に増強するという。また、北米では、セル生産に関しては、車載電池の生産拠点であるカンザス工場の一部を活用することを検討。モジュール生産では、メキシコ工場の既存ラインの増強と、第2エリアの新設を検討している。
また、「提案力、開発力の強化」では、システムとデバイスの両面で社内外のリソースや技術を活用し、より高度な電源ソリューションを提供することを示しながら、「BBUからシェルフやラックに進化させるとともに、デバイスの進化も図る」と述べた。
電力負荷変動の吸収に向けて、スーパーキャパシタを開発し、現行シェルフと互換性を持つCBUシステムとして提供する考えであり、2026年度からの生産を予定している。また、データセンター内電力の効率化については、高電圧対応の電源専用ラックという新たな形態を想定。高出力デバイスを内蔵したシステムの提案を行うという。
人材リソースの大幅なシフトや、パナソニックグループ間の連携による電源システム技術者の増強も図る。パナソニックインダストリーとの連携による独自キャパシタの開発、量産も進めることになる。
インド市場を成長エンジンに育てる電設資材事業
「電設資材(電材)事業」に関しては、パナソニック エレクトリックワークス社の大瀧清社長が説明。国内電材では、2030年度にソリューション販売比率を50%に高める一方、海外電材の売上成長を計画し、海外売上げ比率を、2024年度の23%から、2030年度には35%にまで拡大する。また、海外電材の成長エンジンと位置づけるインド市場においては、2024年度の売上高1000億円を、2030年度に2000億円に倍増させる計画を打ち出した。
電材事業におけるソリューションとは、施主や設計者に対して、ウェルビーイングやエネマネなどのニーズに応える件名提案、エンジニアリング、保守メンテナンス、サービスの売上げを指している。
「国内電材は、ソリューションが半分を占める事業構造に変えることで収益性を高める。海外電材はインド市場を牽引役とし、同市場でポジションを獲得する」と述べた。
国内電材市場は、市場規模が微増で推移するが、エネルギーマネジメントやウェルビーイングに関する高付加価値商品の構成比が3割にまで拡大するとみており、その一方で、海外電材市場は、インドが日本を上回る市場規模に拡大することが想定されている。
「電材事業は、海外での売上成長と、国内での収益力強化の両輪によって持続的な事業価値向上を実現する」と語った。
また、楠見グループCEOは、「建物が使われる間に生み出す価値である『ライフタイムバリュー』を高めるソリューションに、レイヤーアップを図る事業になる」と位置づけ、「建物の利用者のウェルビーイングを向上させつつも、エネルギー消費を最適化することができる」と述べた。
国内電材で展開する「建物ライフタイムバリュー」では、顧客とつながり続け、建物のステージごとに、経済合理性や資産価値最適化、ウェルビーイングなどのソリューションを提供。「竣工前はウェルビーイングやエネルギーマネジメントを軸とした高価値提案をセット販売として進める。また、竣工以降は、エンジニアリング、保守メンテナンス、サービスを強化し、最適化を推進する。これらを支えるのが商品のコネクティッド化になる。ネットワークに接続し、設備の稼働状況や電力使用量、オフィスの温熱快適性、CO2排出量などのデータ活用と制御により、省人化や資産価値向上を支援する。利益率が2桁以上である竣工以降の事業比率を増やすことで、全体の収益性の底上げを図る」という。
海外電材では、インド市場での展開について説明。成長エンジンとする市販電材の強靱化を図り、現在、トップシェアの配線器具をさらに成長させるほか、ライティングを次の柱に育成。インド南部地域の営業体制も強化する。また、提案商材の幅だしや、地方の主要デベロッパーとの連携強化により、マンションや病院、オフィス、スタジアムなどの件名提案を推進。M&Aや少額出資による非連続の成長も見込んでいる。
経営の戦略的根幹、Blue Yonderを中心としたSCMソフトウェア
「SCMソフトウェア」としては、Blue Yonderを中心とした取り組みについて、パナソニック コネクトの樋口泰行プレジデントが説明。「これまで、コグニティブAI、統合プラットフォーム、サプライチェーンネットワークを含むエンドトゥエンドソリューションの開発、整備に投資をしてきた。これにより、Blue Yonderは、SCMソフトウェア業界でのトップブレーヤーになることを目指す」と発言。「戦略投資により、ベースとなるプラットフォームとサプライチェーンネットワークは開発が完了したほか、計画系、実行系、注文&返品管理、AIオーケストレータ&AIエージェントもほぼ完成しており、2026年度には、開発がすべて完了する。新たな製品への移行を促進し、安定的な高い利益創出へとつなげる」とし、フェーズチェンジによる今後の成長戦略に意欲をみせた。
2025年度までを先行投資フェーズとして、3億ドル弱の戦略投資を行った一方、AIの活用によるバックオフィス機能の最適化などにより、2025年度までに、累計で1億5000万ドルのコスト削減を達成。2026年度は収益改善フェーズと位置づけて、開発完了に伴うR&D機能の最適化、AIの活用による人やプロセスの最適化などにより、年間6500万~8000万ドルの追加コストの削減を計画。同時に、オンプレミスや現行SaaSから、新たに発表したコグニティブソリューションや、ネイティブSaaS環境への移行促進プログラムへの投資を加速する。2028年度以降は、利益創出フェーズとして、コグニティブソリューションの販売を拡大することで、総売上高の8割を経常収益に計上するビジネスモデルの実現を目指すという。製品開発に向けた戦略投資は、2025年度がピークになり、2028年度にかけて減少していくことも示した。
「SCMは、経営の戦略的根幹を占めるものであり、不確実性の時代において、SCMを重視する傾向が高まっている。サプライチェーンの状況を把握し、監視し、コントロールするのはソフトウェアとなり、つなげていくのも、最適化するのもソフトウェアである。そこにAIの活用や、サプライヤーおよび配送業者などとのマルチレイヤーでのネットワーキングが加わり、付加価値が増強することになる。SCMソフトウェアは成長領域であり、SaaSでスケールできる市場でありながら、標準パッケージやクラウド比率が低く、ホワイトスペースが大きい。SaaSプレーヤーとして規模を確保できれば高い事業価値を実現できる」と、SCMソフトウェアの市場性を指摘しながらも、「グローバルスケールする標準ソフトウェアの開発では、日本起点で、オーガニックに開発することは難易度が高い。そのため、M&Aによってポートフォリオを追加した。Blue Yonderは、SalesforceやWorkday、ServiceNow、Office 365、Snowflakeなど、各カテゴリーのトッププレーヤーとして高い企業価値を実現している企業と同様のポジションを狙っている」と自信をみせた。
Blue Yonderは、SCP(サプライチェーンプランニング)、倉庫管理、輸送管理、返品管理を自社製品でカバーする最大のSCM専業プレーヤーであることを強調。さらに、仕入先や納入先、配送業者とつなげることができるサプライチェーンネットワーク機能も持つことも示す。また、小売業、製造業、消費財メーカー、物流など、世界の業界上位企業を中心に、3000社以上への導入実績を持っているという。
「業界2番手のManhattanと比較しても、売上高、顧客数、成長率、SaaS売上なども上回っている。時価総額は103億ドルだが、それを上回るとこを目指している」とした。
課題としてあげたのが、買収を繰り返してきたことや、パナソニックコネクト入りするまではプライベートイクイティ傘下であったため、長期的な投資が制限されてきたことによって、「作りが古い」(樋口プレジデント)という点だ。
そこで、インフォア出身のダンカン・アンゴーヴ氏が、CEOに就任して以降、アーキテクチャーを根本から作り直し、ボルトオンM&Aで足りないピースを揃え、生成AIをネイティブに組み込んだソリューションを構築することにしたという。
「ダンカンは、大学卒業後の最初の仕事からSCMソフトウェアに携わり、Blue YonderのCEOに就任して世界一のSCMソフトウェアの会社を作ることを、自らのドリームジョブに掲げている。ソフトウェアをすべてリライトすると決断し、そのタイミングで登場してきた生成AIもきっちりと取り込んだ。買収した5つの企業のソフトウェアもしっかりと統合した。買収した企業のソリューションの統合や、AI機能を組み込んだことで、投資期間が当初予定よりも長くなり、投資額も2億ドルの計画を上回り、3億ドル弱に増額した。だが、これによって、さらに高いところを目指すことができる」と述べた。
Blue Yonderが、新たに発表したコグニティブソリューションは、「Blue Yonderが持つ機械学習、最適化エンジン、ワークフローによって、過去のデータや将来予測に基づいて異常値に達していないかとどうかを固定的に判断するだけでなく、人間に近い感覚で傾向を理解する生成AI機能を組み合わせることで、より強力なAIエンジンを実現すことができた。Blue Yonderでは、1知日250億回の予測が行われており、ここにAIを生かすことで、柔軟で、実行的な精度の高い予測が可能になる」とし、「これを実現するのが統合プラットフォームになり、ここに多くの投資をしてきた。統合データ基盤、マイクロサービスアーキテクチャ、マルチテナント、クラウドネイティブ、イベントドリブンなどを実現している。計画系と実行系が、ひとつのプラットフォームでつながり、発表した5つのAIエージェント同士の連携も行われる。競合他社が、すぐには追いつけないプラットフォームを構築した」と胸を張った。
すでにコグニティブソリューションに対する高い評価が集まっており、これをきっかけに、Blue Yonderを活用してサプライチェーン全体での最適化を図りたいとする案件が増加。100万ドル以上の受注案件は、前年比2.8倍になっているという。
ホンダUSでの包括的な導入実績があるほか、自動車メーカーや飲料メーカーでの導入、パナソニックグループ各社での導入などが進んでいるという。
楠見グループCEOは、「Blue Yonderを買収した時点で、ソフトウェアをリライトしなくてはならないことに、我々が、気がつかなかった。これが投資回収の遅れにつながっている。だが、ダンカンによって、そこに気がついた。強化されたコグニティブソリューションによって、時々刻々と変化するサプライチェーン上の顧客課題を自律的に解決することができ、圧倒的な強みが発揮できる。すでに、パイプラインには手触り感が出ている」と手応えを示した。
また、樋口プレジデントは、「パナソニックグループがソリューション事業に注力することで、収益が単発ではなく継続化し、顧客の離脱コストが高まることによって、継続性も高まる。さらに、価格競争に巻き込まれにくく、利益率が高いというメリットが生まれる」と指摘した。






















