アイロボットジャパンが、ロボット掃除機「ルンバ」のフラッグシップモデル「Roomba Max 705 Combo ロボット+AutoWash 充電ステーション」を発表した。2025年4月に、「All New Roomba(全てが新しくなったルンバ)」を打ち出し、製品ラインアップを一新したのに続く、新たな製品の投入だ。アイロボットジャパンの挽野元社長は、「アイロボットの技術の粋を集めた製品であり、All New Roombaの完結編になる。そして、掃除機の5台に1台をルンバにする中期目標を達成するために必要な製品になる」と語る。新たなフラッグシップモデルは、家庭用掃除機としては異例ともいえる17万9800円の強気の価格を設定。市場にどう受け入れられるかも気になるところだ。アイロボットジャパンの挽野社長に、4月に発売した新製品の動向や、新製品の狙いなどについて聞いた。

  • アイロボットジャパン 代表執行役員社長の挽野元氏

    アイロボットジャパン 代表執行役員社長の挽野元氏

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製品ラインアップ一新の効果は?

―― 2025年4月に、「All New Roomba」をメッセージに、ルンバ史上では初めてとなる製品ラインアップの一新を図りました。発売後の手応えはどうですか。

挽野 非常にいい手応えを感じています。2025年4月に発売した新製品は、エントリーモデルのRoomba、ミドルレンジのRoomba Plus、フラッグシップのRoomba Maxの3つのカテゴリーにわけ、6機種9モデルで構成していますが、それぞれに購入ターゲットを明確にし、シンプルで、わかりやすい機能と価格の設定を行いました。結果として、自分にあったルンバを、的確に選んでいただくことができています。コントパフォーマンスで選択している人、省スペースを重視している人のほか、ペットを飼っていたり、カーペットが多かったりするため、吸引力を重視するユーザーなど、狙い通りのユーザーに、狙い通りの製品を選択してもらっています。

  • 「All New Roomba」をメッセージに、製品ラインアップを一新

    「All New Roomba」をメッセージに、製品ラインアップを一新

また、発売13週間の実績を見ると、エントリーモデルのRoomba 205 Combo DustCompactorは、従来のRoomba Combo 2 Essentialに比べて、販売台数は約1.8倍となり、ミッドレンジのRoomba Plus 505 Comboは従来のRoomba Combo 10 Max +AutoWashに比べて、約3.2倍の販売台数を達成しています。

―― この実績は、挽野社長の当初の想定に比べるとどうですか。

挽野 全体的に見ても、販売台数は想定以上の結果です。機種ごとに見ても、ほとんどの製品が想定以上の成果をあげています。また、新製品購入者の52.7%がロボット掃除機を初めて購入したと回答しています。新規購入者が半分以上というのも想定外のうれしい結果です。ロボット掃除機の存在を知ってはいても、購入を躊躇する人が多いという実態がありましたが、新製品の投入によって、ロボット掃除機を少し身近に感じてもらえたり、自分に最適な1台が見つけやすくなったりといった効果もあったのではないでしょうか。サブスクリプションモデルの「ロボスマ」を使えば、購入のハードルも下がりますし、ちょっと試してみようかというユーザーをとりこむことができたという実感はありますね。

―― ロボット掃除機に対する需要のステージが、ひとつ上がったと言えませんか。

挽野 新たなルンバが、ロボット掃除機市場全体を盛り上げることには貢献できたと思っていますし、市場の拡大の一助になってといえます。新しいルンバを購入したことで、「生活にゆとりが生まれた」と回答したユーザーは95.4%となり、「部屋の清潔度がアップした」という回答は97.2%を占めています。ユーザー満足度は92.8%と高い水準となっており、新たなルンバが、購入者から高い評価を得ている手応えがあります。生活のスタイルが多様化し、そのなかでも、タイパを追求する商品に注目が集まっています。共働き世帯にしても、子育て世代にしても、タイパが重要な要素のひとつになっていて、家事に関わる時間を減らすために、ミールキットを購入したり、食洗機を利用したり、ドラム式洗濯乾燥機を活用したりといったことで、「自分時間」を作る人が増えています。ロボット掃除機も同様で、ライフスタイルの変化のなかで、掃除に時間を使いたくない、できればロボットにやらせたいというニーズの増加にフィットしたといえます。

―― 販売店の反応はどうですか。

挽野 家電量販店では、4機種を販売していますが、ほぼ同じバランスで売れています。なかでも、新たなごみ圧縮機能を搭載したRoomba 205 DustCompactorが好評で、家電量販店からも、メカニカルアームによるごみ圧縮機能が、わかりやすくて説明しやすいという評価をいただいています。また、Roomba Max 705 Vac ロボットも、強力な吸引機能が欲しいというユーザーから高い評価を得ており、クリーンベースが小さい点も好調です。水拭き機能は搭載していないのですが、すでに床を水拭きしてくれるBraava jetを持っているユーザーが購入しているケースもあります。私の家でも、Roomba Max 705 Vac ロボットとBraava jetを組み合わせて使っています。

―― 新製品を発売して以降、社員に変化がありましたか?

挽野 2025年3月に、私たちの真意が伝わらない(事業継続困難といった)一部報道があったことで、誤解を招くような事態が発生し、アイロボットのこれからの存続を危惧する声があがりました。その結果、一時的に販売台数が減少するといったことが起きました。しかし、4月に米本社のCEOであるゲイリー・コーエンが来日して、直接説明したことで、こうした疑念が払しょくされ、さらに、ラインアップを一新した新製品の販売も好調であり、これまでにも高かった社員のモチベーションは、さらに高まった感じです(笑)。社員からも、新製品に対しては、「新たに採用したGRIDをコンセプトとしたデザインがいい」、「家の中にフィットする」、「より親近感が湧く製品になった」という声があがっていますよ。もともとルンバが大好きな社員ばかりですから、社内はすごい盛り上がっていますよ。

究極のフラッグシップ「ルンバ」はどんな製品?

―― 新製品として、「究極のフラッグシップモデル」と位置づける「Roomba Max 705 Comboロボット + AutoWash 充電ステーション」を、このほど発売しました。これはどんな製品になりますか。

  • 「究極のフラッグシップモデル」と位置づける「Roomba Max 705 Comboロボット + AutoWash 充電ステーション」

    「究極のフラッグシップモデル」と位置づける「Roomba Max 705 Comboロボット + AutoWash 充電ステーション」

挽野 今回の新製品は、「All New Roombaの完結編」といえるものになります。ルンバ史上最高の清掃力を誇るフラッグシップモデルであり、徹底した清潔感にこだわる人たちに最適なルンバです。具体的には、ペットの抜け毛や長い髪の毛をしっかりと掃除したい、ブラシに毛が絡まない掃除機が欲しい、とにかく吸引力が強い掃除機が欲しい、4人以上の家族で間取りが多い家を掃除したい、水拭きも隅々まで丁寧にできるロボットが欲しい、買うなら最高品質のロボット掃除機が欲しいといった人たちにお勧めしたい製品です。

先進的な技術も搭載しており、従来モデルに比べて、175倍の吸引力を持つ4段階クリーニングシステムも採用しているほか、ルンバ初となるローラータイプの水拭き機構を搭載し、温水を使用した水拭き掃除が可能です。毎分200回転で安定した圧力を加え、壁際まで伸びるPowerSpin ローラーモップにより、拭き掃除のカバー範囲を拡大し、10倍の拭き取り力を実現します。また、フローリングからカーペットに移動した際にも、業界初となるローラーモップカバーにより、ローラーモップを持ち上げてカバーで保護し、カーペットを濡らすといったことがありません。

―― 日本の家庭だからこそのメリットはありますか。

挽野 日本は、綺麗好きな人が、世界で最も多い市場だといえます。家のなかを素足で歩くという文化がありますから、几帳面で綺麗好きで、部屋をいつも綺麗にしたいというお客様が多く、そのなかでも、自分の家は、いつも徹底的に綺麗にしておきたいというお客様には、今回のフラッグシップ製品を、ぜひ使っていただきたいと思っています。新製品の発表にあわせて、「極サラ水拭き」をキーワードに掲げたキャンペーンを実施します。現在、ルンバでは、4万円を切るエントリーモデルから、今回の急遽マのフラッグシップモデルまで、幅広い製品で水拭き機能を搭載しています。このキャンペーンは、日本独自のキャンペーンとして、日本のチームが考えたもので、日本の家庭ならではの水拭きの需要にフォーカスしたものになります。

―― ただ、公式オンラインストア価格で17万9800円という価格設定には驚きました。「究極のフラッグシップモデル」と称していますが、この価格で売れるのでしょうか。

挽野 価格が高いということは認識しています。しかし、このなかには、いま、ルンバが提供できる究極の機能が搭載されていますし、価格に見合った価値を提供できる製品に仕上がっているという自信はあります。アイロボットが持つ技術の粋を詰め込んだ製品です。日本のお客様に、その点をしっかりとお伝えして行こうと考えています。

―― 販売数量は追わない製品になりますか。

挽野 もちろん、どんどん数が売れる製品だとは思っていません。フラッグシップモデルですから、ルンバがここまでできるという「究極」を提案し、それを「憧れ」と思ってもらえる製品に位置づけたいと考えています。たとえば、いつかは乗りたいクルマがあって、それはフラッグシップモデルであり、手が届かないというケースがあります。でも、憧れはずっと続きます。ルンバも同様で、いまはエントリーモデルでいいが、いつかは、これだけの機能を持ったルンバを買ってみたいと思ってもらいたい。Roomba Max 705 Combo ロボット+AutoWash 充電ステーションは、そうした憧れの製品でもあります。もともと日本のお客様は高機能モデルを購入する比率が高く、ルンバの価値を認めていただいています。ロボット掃除機の機能をコストとして捉えるのでなく、時間を創出するための投資と考えるお客様も少なくありません。世界のなかで、最もRoomba Max 705 Combo ロボット+AutoWash 充電ステーションの販売比率が高い国が日本であるという状況が生まれると思っています。

ロボット掃除機の伸び代はまだある

―― 今回のフラッグシップの発売により、2025年のAll New Roombaが出揃いました。どんな気持ちですか。

挽野 揃ってほっとした気持ちと、これからがスタートだという気持ちの両方ですね。ロボット掃除機の伸び代はまだまだあります。お客様にロボット掃除機の価値をもっと届けていく活動が必要です。

私は、ルンバを成長させていくには、「製品力」「需要創出力」「販売力」の3つの要素と、これらを取り巻く「ケア力」が重要だと考えています。All New Roombaが出揃ったことで、製品力は一気に強化されました。また、これを取り扱う販売店を通じた販売力も整っています。今後、重視していくのは、「需要創出力」と「ケア力」になります。「需要創出力」は、機能やスペックを訴求しても伝わるものではなく、お客様の気持ちを刺激することが大切です。そこに力を入れていきます。

新たなキャンペーンで訴求している「極サラ水拭き」は、まさに気持ちを刺激することを狙ったもので、水拭き機能の特徴を訴求するのではなく、水拭きすれば、床がひんやりとして気持ちいいし、子供たちがゴロゴロしていても安心できるといった価値を訴求します。床をゴロゴロするのは日本人だけですからね(笑)。こういうお客様視点でのメリットを訴求し、水拭き機能が搭載しているルンバの需要創出につなげることが大切です。キャンペーンを通じて、「ルンバを使って水拭きしたら、こんなに良かったよ」という事例をたくさん集めたいですね。個人的にはとても楽しみにしているんですよ。ルンバを使って、お客様の気持ちも前向きになればいいな――。なんてことも考えています。

また、「ケア力」では、購入したあとも、お客様に、「ルンバが一番だ」と思っていただける施策に取り組みます。これは最も大切にしていきたい部分です。今回の調査でも、ルンバを購入した理由として、「ブランドやメーカーへの信頼感」が19.7%と、最も多い回答となりました。アフターサービスが安心であり、2台目、3台目もルンバを選びたい思ってもらえていますることの証であり、これは、私にとっては、とてもうれしいことです。ルンバの累計販売台数は600万台を超えており、そうしたユーザーに次に買い替えるときもルンバにしたいと思っていただけることは重要なことです。

―― アイロボットでは、2030年までに、国内掃除機市場の5台に1台をルンバにする目標を新たに掲げました。2025年4月に掲げた目標ですが、その後の売れ行きの好調ぶりを見ると、達成時期を前倒しするなんてことはありませんか(笑)

挽野 いやいや、まだスタートしたばかりですからね(笑)。そこは、謙虚に一歩ずつ進めることが大切だと思っています。2030年という目標は変えません。

  • 「ルンバが掃除機の当たり前になるという時代」を目指す

    「ルンバが掃除機の当たり前になるという時代」を目指す

ただ、生活スタイルの変化は明らかで、もはや掃除は自分でやるものではなく、ロボット掃除機に任せるものだと考えている人が増えています。それによって、自分の時間を増やしたり、家族と過ごす時間を増やしたりといったことにつなげられているという実感も得ているようです。

ルンバは、掃除をしてくれるパートナーであり、生活に不可欠な製品となり、ルンバが掃除機の当たり前になるという時代が訪れるはずです。こうした世界を作りたいという視点から見れば、いまはまだまだ発展途上ですね。