シャープは、2025年度からスタートした中期経営計画の成長戦略の中核に位置づけるブランド事業の取り組みについて説明を行った。スマートライフビジネスグループ長であるシャープ 常務執行役員 Co-COOの菅原靖文氏と、スマートワークプレイスビジネスグループ長であるシャープ 執行役員 Co-COOの小林繁氏が、それぞれに、B2CおよびB2Bに関するブランド事業戦略に触れた。収益が悪化しているデバイス事業をアセットライト化する一方で、ブランド事業においては、シャープならではの「目の付けどころ」を「特長技術」によって実現し、「スピード」によって商品開発を加速。投資にも、これまで以上に力を注ぐ考えを示している。成長を目指すシャープのブランド戦略を追った。
中期経営計画の発表を受け、ブランド事業の成長戦略を説明
シャープは、5月12日に中期経営計画を発表。同社・沖津雅浩社長兼CEOは、「ブランド事業のグローバル拡大と事業変革の加速」を重点施策のひとつに掲げ、シャープのDNAである「目の付けどころ」と「特長技術」に加えて、鴻海傘下で培った「スピード」を、3つの強みとして、B2C領域では「あなたらしく暮らす」、B2B領域では「共創的に働く」という観点からの提案を進め、「独創的なモノやサービスを次々と生み出すだけでなく、新たな文化をつくる会社へと成長していきたい」という姿勢を示した。
今回は、中期経営計画の発表から約1カ月を経過したタイミングで、ブランド事業の成長戦略について、Co-COOとなる2人の事業責任者が説明を行った。
B2Cを担当するスマートライフビジネスグループは、「あなたの明日を、もっとあなたらしく、ワクワクする日々に」をビジョンに掲げ、2027年度に売上高で7020億円(2024年度実績は6440億円)、営業利益率は6.0%(同3.4%)を計画。シャープ 常務執行役員 Co-COOの菅原靖文氏は、「挑戦目標として、営業利益率7.0%以上を目指す」との意気込みを示した。
さらに、AIoT家電で累計1450万台、COCORO MEMBERS会員数で1300万人以上、AIサービス利用者数で400万人以上、そのうち有償プラン利用率で5%以上を目指す計画も打ち出している。AIoT家電の接続率は年々上昇していることも示した。
B2Cの「スマートライフビジネス」
スマートライフビジネスグループでは、白物家電を中心とした「スマートアプライアンス&ソリューョン」、テレビおよびオーディオを担当する「テレビシステム」、住宅用および産業用太陽電池システムや、家庭用蓄電池システムを展開する「エネルギーソリューション」で構成。それぞれの観点から重点施策を説明した。
シャープの菅原氏は、「ブランド事業は、商品を作っている組織である。お客様に、この商品は面白いなと思ってもらい、この商品を使って本当によかったよ、ということを、ほかの人に伝えてもらえるような商品、サービスを世の中に送りだしたい」と、基本姿勢を示した。
スマートライフビジネスグループの重点戦略として、生活を豊かに、便利にするための「AIoT事業の拡大」、ユーザーに驚きを与え、ほかの人に自慢をしたいと思ってもらえる「新たな需要を創造する商品の創出」、グローバルでの認知度向上、顧客ロイヤリティの向上を図る「ブランディングの強化」の3点に取り組むとした。
ひとつめの「AIoT事業の拡大」では、約1000万台のAIoT家電が利用されていること、白物家電やテレビ、太陽光電池や蓄電池、スマホなど、スマートホームを実現する商材がシャープに揃っていること、オープンプラットフォームであるCOCORO HOMEを通じた電力会社や他社との連携が進展していることを強調。カーボンニュートラルの提案ができることも差別化ポイントに位置づけた。
その上で、「AIoTの世界観を作るための取り組みのひとつが生成AIである。家電機器に搭載することで、新たな家電の姿を作り上げていく。生成AIを活用することで、流暢な会話を通じて、暮らしの悩みを把握したり、災害時は家電が防災情報を発話し、避難を促したりできる。また、利用者が蓄積した情報がクラウドを通じて継承され、買い替え後も機器を設定しなおすことなく、利用できるといったこともサービスとして提供できる」とし、「2027年度にはAIサービス事業の本格展開を図り、新たな収益事業にしたい」との考えを示した。
2025年度までに商品別に分散していた顧客データを統合するほか、2026年度には、COCORO HOMEアプリに、暮らし全体をサポートする独自AIサービスを導入。さらに、AIサービスの有償化も図る考えだ。
「SHARP AIを活用することで、洗濯機に衣類ごとの洗濯方法を聞くことができ、取扱説明書がいらなくなったり、ヘルシオが調理をする前の下ごしらえに関するサポートをしてくれたりといったことが可能になる。それぞれの家に伝わる、おふくろの味をクラウドに蓄積することができる」という。
また、こうした取り組みを通じて、「次はシャープ、次もシャープと言われる状況を生み出したい。一度シャープ製品を使うと、次もシャープを使いたくなる、次こそシャープを買いたいと思わせる製品とサービスを展開したい。シャープを使い始めたら離れられなくなるという世界を作りたい」とも述べた。
さらに、シャープの菅原氏は、「将来の家電の形は、いまの家電とは大きく異なる。生成AIによって、家電が勝手に動き出すことも想定している。また、ボタンがないという家電も考えられる。洗濯機に『洗濯をしてくれ』といったら、状況を判断して勝手に動き出すといった世界が間近まできている。家電自体が変わるチャンスを迎えている」と語った。
2つめの「新たな需要を創造する商品の創出」では、シャープ創業者の早川徳次氏が語った「他社がまるするような商品をつくれ」という言葉を具現化する方針を示し、「シャープは、世の中にない商品や、先取りをした商品を生み出す企業であり、そこに存在する意義がある。これをいま一度、しっかりと受け継いで、商品を送り出すことに挑戦したい」と意気込みをみせた。
米国市場向けに開発した調理時間を3分の1にする高速オーブン、過冷却技術を活用し、暑熱対策が行えるアイススラリー冷蔵庫、水量を90%削減できる水循環型洗濯システム、シャープが多くの特許を持つドロワー式食洗機などがそれにあたるという。
3つめの「ブランディングの強化」では、日本においてはテレビCMや交通広告を再開し、各商品カテゴリーにおけるブランド想起率を向上させるほか、ASEAN、米州といった重点地域においても、市場特性にあわせたプロモーション展開を進めるという。ブランド向上に向けた2027年度の投資額は、2024年度比で、日本は1.8倍、ASEANは1.5倍、米州は5.5倍に高める。「訴求の対象は、付加価値モデルに集中させることになる」と述べた。
白物家電を中心とした「スマートアプライアンス&ソリューョン」
一方で、個別の事業戦略についても説明した。
白物事業を担当する「スマートアプライアンス&ソリューョン」は、ASEANや米州、中近東アフリカを重点的に強化。国内事業については高付加価値化とシェア拡大に取り組む。また、美容・ヘルスケア事業およびB2B事業の強化を図る。
とくに、家電普及率が90%に満たないASEAN地域においては、「シャープは、50年間に渡り、ASEAN地域に根づいた販売、サービス活動を展開してきた。タイとインドネシアには白物家電の中核工場を持ち、主要商品の生産を行っている。また、地域の文化、価値観、宗教に則したローカルフィット商品を開発できる体制を敷いている。ここに、画一な商品を大量生産する中国企業や、韓国企業とは異なる強みがある」と訴えた。
砂漠が近い場所では、砂塵に対するフィルターを付加したり、停電が多い地域では冷蔵庫に蓄冷材を加えて安定した利用ができるようにしたり、ヒジャブを着用している地域では柔らかく洗濯ができるように改良した洗濯機を投入しているという。
ASEANにおいては、若い年齢層でシャープの認知度が低いため、若年層向けプロモーションを強化し、20年後の購買層獲得を見据えた取り組みを開始する。とくに、インドネシアにおいては、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジでトップシェアを獲得している実績を生かしながら、付加価値提案を加速するという。
米州においては、強みであるドロワーレンジを核とした商品展開と販売チャネルの拡大により、市場プレゼンスを強化する。同市場における2027年度までの年平均成長率は20%以上を見込んでいる。
「シャープは、ドロワーレンジの商品化において数多くの特許を持っており、他社には真似ができない。そのため、自社ブランド以外に、10社以上のキッチンメーカーにドロワーレンジを提供している。食洗機や冷蔵庫などの強みを生かしながら、米州のスイートキッチン市場にシャープ製品を拡大していきたい。米州市場を改めて攻める狙いもそこにある。東海岸中心の販売網を、西海岸にも広げたい」との戦略を明かした。
中近東およびアフリカは、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジの生産を委託していたエジプトのエルアラビと、2024年7月に戦略的協業を発表し、冷蔵庫の生産を拡大。「エジプトを起点に、アフリカ市場に向けた販売を一気に強化したい」と語った。売上高では2027年度までに年平均成長率で10%以上を見込んでいる。
テレビおよびオーディオを担当する「テレビシステム」
2つめの「テレビシステム」は、国内においては、日本メーカーとしての特徴を生かし、付加価値モデルにフォーカスして市場を牽引。国内トップシェアブランドを堅持する姿勢を強調した。「シャープの強みは、液晶テレビで培った映像技術やソフトウェア技術、省エネ技術である。これを活用していく」と述べた。中国・南京の工場で日本市場向け付加価値モデルを生産。エントリーモデルはOEMを活用することになる。
また、海外では、2024年度にマレーシア工場の閉鎖にあわせて、海外ODMの活用を積極化しており、ASEANを中心とした重点国にビジネスを集中させながら、SHARPブランドをグローバルに展開し、市場プレゼンスを高めていく考えを示した。
一方で、「放送を視聴するという点では、テレビのあり方が問われている。だが、ディスプレイとして捉えた場合、YouTubeをはじめとした様々なコンテンツを画面で見るといった活用が広がっており、これらの用途における需要は落ちていない。これらのニーズを捉えることが重要である。さらに、今後は、AIと日常的に会話をするといったシーンが増えるだろう。その際に、大画面ならではの活用を提案したい」とも語った。
太陽電池や蓄電池システムを展開する「エネルギーソリューション」
3つめ「エネルギーソリューション」では、カーボンニュートラルの実現に向けた日本政府の後押し施策が影響し、太陽光発電システムや蓄電池の国内需要が拡大すると予測。「かつては、シャープといえばソーラーという時代もあった。昨今では、シャープはソーラーをやっていたのかと言われる状況である。タレントを使った訴求も行い、この分野で、しっかりと巻き返しを図りたい」と意気込みをみせた。
住宅用太陽光発電の売上高は年平均成長率で5%、住宅用蓄電池では同10%を目指す。
さらに、宇宙用太陽電池事業では、日本で唯一、JAXAに認定されている企業である強みを生かした事業展開を推進。低軌道衛星の打ち上げ拡大が事業拡大のチャンスと捉えている。また、グローバルにも同事業の展開を図ることで、宇宙用太陽電池の売上高は年平均成長率48%と高い成長を見込んでいる。「スマートライフビジネスグループにおいても、B2B展開が収益確保に貢献することになる」と見ている。
B2Bの「スマートワークプレイス」
ブランド事業のもうひとつの柱であるスマートワークプレイスビジネスグループでは、「テクノロジーとネットワークで、世界中のコラボレーションを強化する」をビジョンに掲げ、2027年度に売上高で8380億円(2024年度実績は8364億円)、営業利益率は7.2%(同6.0%)を見込む。また、スマートビジネスの売上構成比を2024年度の16%から、2027年度には30%に引き上げる。スマートビジネスでは2桁の営業利益率を想定している。さらに、2030年度には、スマートワークプレイスビジネスグループ全体で売上高1兆円、スマートビジネス比率50%を目指す考えも示した。
スマートワークプレイスビジネスグループは、複合機(MFP)や業務用ディスプレイ、POSなどによる「ワークプレイスソリューション」、Dynabookによって展開しているPC事業の「コンピューティングソリューション」、スマホや通信機器の「モバイルコミュニケーション」の3つのビジネスユニットで構成。海外売上比率は約40%となっており、とくにワークプレイスソリューションでの海外比率が高いという。
シャープ 執行役員 Co-COO兼スマートワークプレイスビジネスグループ長の小林繁氏は、「人と人、人とデータを、技術の力で結びつけることで、チームや現場を強くすることがシャープの役割になる。30年前はプリントやデータを利用してコラボレーションが行われていたが、約10年前には、クラウドの浸透やリモートワークの広がりで、ビデオとデータがコラボレーションの中心になってきた。そして、これからの3年間は生成AIが、コラボレーションやワークスタイルを激変させる。省力化や省人化が求められ、そのためにAIがハードウェアを革新し、現場に近いAIサービスやDXサービスが必要になってくる。『AI・DXの大衆化』が進み、ここにシャープが貢献できる」と述べ、「中期戦略の要諦は、MFPやPC、スマホといった既存事業が成熟するのに対して、AIで進化したハードウェアを活用し、現場に近いところで、AIやDXサービスを提供する事業構造へとシフトする点である。モノとコトをセットで提供していくことになる」と定義した。
スマートワークプレイスビジネスグループでは、基本戦略として、「強みのある4つの市場にリソースを集中」、「AIなどによってハードウェアを進化させたスマートプロダクトを拡大」、「スマートプロダクトとAI・DXサービスを合わせた『スマートビジネス』を拡大」の3点を掲げ、「とくに、スマートビジネスの比率にはこだわっていく」と述べた。
ひとつめの「強みのある4つの市場にリソースを集中」する取り組みでは、オフィス、パブリック、リテール、ロジスティクスの4つの市場にフォーカスする考えを打ち出した。
シャープは、世界110の国と地域に、169拠点の販売およびサポートネットワークを構築。オフィス分野では、MFPを50万社以上に導入し、約30万社にサービスを提供。1900社を超えるパートナーを通じた販売体制を構築しているほか、業務用ディスプレイではフォーチュン500社のうち、65%の企業に導入。スマホでは国内法人向けAndroidでは首位、国内法人向けポータブルPCでも首位であることを示した。また、パブリックおよびリテールでは、ガソリンスタンド向けPOS端末では13万台以上を導入し、コンビニ向けMFPでは60%のシェアを獲得。大型サイネージディスプレイでは300万台以上の出荷実績を持つという。さらに、ロジスティクスでは、自社の大規模工場で培ったノウハウを生かした提案を進めており、デジタルピッキングでは3万件以上の導入実績を持っている。
こうした実績を持つ得意領域にフォーカスした事業展開を推進することになる。
2つめの「AIなどによってハードウェアを進化させたスマートプロダクトを拡大」では、シャープが数多くのハードウェア製品を有していることに言及。「今後は、AIがハードウェアのフォームファクターを激変させていく可能性があり、形が変化していくことになる」と前置きし、「自分たちが持つ幅広いハードウェアのなかに、AIを入れることができ、それらを連携させることが可能であるという点では、世界的に見ても、シャープが稀有な存在になれる」との見方を示した。
シャープでは、エッジAIである「CE-LLM」の開発を進めており、これが動作する新たなハードウェアプラットフォームを提供することで、シャープが持つ幅広いハードウェア資産を生かすことができる。AIを活用したシャープならではのスマートプロダクトの創出が注目される。
3つめは、「スマートプロダクトとAI・DXサービスを合わせた『スマートビジネス』を拡大」するといった取り組みだ。
シャープの小林氏は、「大企業向けサービスだけでなく、中小企業が導入しやすいAI・DXサービスを提供する。すでに、MFPユーザーを対象にしたCOCORO OFFICEやSYNAPPXといったITサービスを提供しているが、今後は、これらのITサービス群に、より現場に近く、かゆいところに手が届くAI・DXサービスを加えていくことになる。シャープならではのハードウェアを組み合わせたサービスとして差別化を図っていく」とし、2027年度までに、10以上の商品およびサービスを新たに投入する考えを明らかにした。
複合機や業務用ディスプレイなどによる「ワークプレイスソリューション」
スマートワークプレイスビジネスグループの個別事業戦略についても説明した。
ワークプレイスソリューションビジネスユニットでは、MFP、業務用ディスプレイ、リテール向けDXサービス、ロボティクス事業、ITサービスなどへの戦略投資という観点から説明した。
ワークプレイスソリューションのなかで最大規模となるMFPでは、ペーパーレス化の動きが見られるなかで、コンビニにおける国内トップシェアの維持とともに、パブリックプリントを活用したサービスを拡充。欧米を中心にしたMPS(ブリント管理サービス)の展開による新たな収益源の確保、スマートプロダクトやITサービスなどを活用したオフィスまるごと提案の促進などに取り組む。MFP分野におけるスマートビジネスの売上高は、2027年度までに350億円以上も拡大させる意欲的な計画だ。
シャープの小林氏は、「MFPは地域戦略が重要である。国内はパブリックプリントの拡大、欧米ではMPS・ITサービスを拡大、アジアはローカルフィット商材の拡充を図る」としたほか、「業界内では開発、調達における合従連衡の動きもあるが、シャープは状況を注視しながらも、この動きに乗り出す検討をしている事実はなく、MFP事業を単独でやっていけると考えている」と述べた。
A3主力機では、2027年度に全世界で10%にまでシェアを拡大するほか、アジアでは専属組織であるABS(Asia Business Solution Center)を立ち上げて、戦略モデルを投入する計画を明らかにした。
業務用ディスプレイでは、AIによって簡単に議事録を作成できるeAssistant Minutesとのセット販売や、独自の色再現性を持つePosterによる用途提案、大型業務用LCDを通じたソリューション展開などを進める。「ハードウェア単体では価格競争が激しくなっている。ワンストップオペレーションやコンサルテーションを強化する」という。
業務用ディスプレイ分野でのスマートビジネスの2027年度の売上高は150億円以上の拡大を見込んでいる。
リテール向けDXサービスでは、国内市場向けに、幅広い省人化ソリューションを展開。ガソリンスタンドや家電量販店、ドラッグストアへのPOSの導入や、保守サービスを提供するほか、需要が拡大しているキャッシュレスソリューションや、人材不足が課題となっている宿泊施設を対象にしたeAssistant Conciergeの販売拡大に力を注ぐという。スマートビジネスは、2027年度までに100億円以上増加させる考えだ。
ロボティクス事業では、物流倉庫や工場の自動化のニーズに対応。量子アニーリングやロボット制御技術、画像解析技術などの最先端技術を活用し、大企業から中小企業までをカバーするロジスティクスソリューションを提供するという。
「シャープの工場自動化の事業は55年の歴史を持ち、企業のモノづくり現場を支えてきた。AI技術の進展と人手不足の深刻化という課題があるなかで、現場課題を解決するソリューションとして大きく成長させたい」と語った。ロボティクス事業では、2027年度までのスマートビジネスの売上高を100億円以上拡大する計画だ。
なお、ITサービスなどへの戦略投資としては、3年間累計で200億円を計画。既存事業とシナジーがあるITサービス企業、販路拡大に貢献する企業に対するM&Aを積極展開するという。ITサービス関連事業は、2024年度の売上高310億円を、2027年度には約2倍となる約600億円にまで拡大させる。
Dynabookを展開するPC事業の「コンピューティングソリューション」
2つめのビジネスユニットであるコンピューティングソリューションでは、2024年度には、Windows 10のサポート終了に伴う特需があり、事業が拡大。そのなかで、国内法人向けノートPC市場で、シェアナンバーワンを獲得。「2025年度からの3年間は、我慢の3年間になるが、今後もこのポジションを継続していく。また、ソリューションを強化し、LCM運用サービスのビジネス拡大を図る」と述べた。
LCM運用サービスは、PCの導入に関する計画から調達、導入、展開、運用、保守、撤去、廃棄、更新までの作業を代行するサービスであり、対象商品をMFPやスマホにも拡大し、2027年度までに顧客社数を倍増させる方針を打ち出している。
また、業務ソリューションや現場系のXRソリューションなどのAI・DXソリューションを拡充することにも言及。「EOS特需の一巡による落ち込みを、ソリューションで打ち返していく」と語った。2027年度までにスマートビジネスの売上高を80億円以上拡大させる考えだ。
スマホや通信機器、ウェアラブルの「モバイルコミュニケーション」
3つめのモバイルコミュニケーションビジネスユニットでは、国内においては、B2BおよびB2Cともに、スマホ事業のブランド力強化を進めるほか、海外では戦略地域において、市場シェアの拡大を図るという。2027年度には同ビジネスユニット全体で、海外売上比率を10%にまで高める考えだ。
さらに、「業界初といえる新たなウェアラブル製品を投入したい。スマホとウェアラブル製品をあわせて、顧客のLTV(Life Time Value)を高めていく。モバイル技術や通信技術などを、他のビジネスユニットで活用することにも力を注ぐ」とした。
さらに、低軌道衛星通信端末への取り組みについても言及し、「世界最小レベルの低軌道衛星通信端末を強みに、次世代通信分野に新規参入する。この分野は、今後3年間で市場規模が20倍に成長する。2025年度中には初号機をグローバルに展開し、建機、農機、自動車、ドローンなどに搭載分野を広げる。高速インターネットが届いていない場所でもAIやDXの活用を後押ししたい」と語った。