エプソン販売は、新たな中期活動方針を発表した。「環境」、「省人化」、「DX/共創」を起点として事業を展開。基本方針を、「すべての行動の軸をお客様に置き、寄り添い、お客様価値を持続的に実現し続け、価値の創出を加速させる」とした。2024年4月1日付で、エプソン販売の社長に就任した栗林治夫氏が説明した。

  • エプソン販売 代表取締役社長の栗林治夫氏

    エプソン販売 代表取締役社長の栗林治夫氏

栗林社長は、「エプソン販売は、環境、省人化、DX/共創を起点に、ソリューションや商品、サービスでお客様の課題を解決していく。社会課題解決に貢献し、お客様とともに、永続的な価値を創出する企業になる。プリンタやプロジェクターなどの成熟領域においては、どう使うかという点での深化を進める。また、成長領域では、お客様とともに、なにが課題であり、それを解決するにはどうするかを価値として探索していくことになる。進捗状況は様々だが、蒔いた種は木に育て上げ、林にして、将来は森にしていく。業界を元気にし、日本を元気にしたい」と述べた。

  • 「すべての行動の軸をお客様に置き、寄り添い、お客様価値を持続的に実現し続け、価値の創出を加速させる」という基本方針

今回発表した中期活動方針は、栗林社長による新体制がスタートして1週間後となる2024年4月7日に策定。「いままで以上にお客様に寄り沿い、困りごとを解決し、すべてはお客様の笑顔に結びつくようにしていきたい」と抱負を語った。

また、新たな全社プロジェクトを開始し、組織横断型で顧客価値創出を加速することも明らかにした。「環境、省人化といった観点で、エプソンがどんな貢献ができるのかといったことを理解するために、お客様の声に耳を傾け、課題を把握し、包括的な価値提供を行う。エプソンが持つ技術を活用し、カスタマイズを加えた提案を行うほか、外部のパートナーとの連携によって価値を提供することも視野に入れている」という。

  • 顧客価値創出を加速するための新たな全社プロジェクトを開始

プロジェクトは約20人体制でスタート。現時点では具体的な目標設定はしていないが、特定のカテゴリーの商品やサービスに絞られない提案を模索することになる。「2024年度は、さらなるお客様価値提供に力を注ぎたい」としている。

栗林社長は、長野県出身で、1991年にセイコーエプソンに入社後、パソコンの商品企画を担当。1995年にエプソン販売に出向し、パソコンの販売推進に携わってきた。2004年にエプソンダイレクトに出向し、パソコン事業全般を担当。2012年に事業推進部長、2015年に取締役、2017年には代表取締役社長に就任した。2020年にはエプソン販売取締役ビジネス営業本部長に就き、2023年から取締役販売推進本部長を務めていた。

長年、パソコン事業に携わってきた経験が、エプソン販売の経営にどう生かされるかが注目される。

「環境」「省人化」「DX/共創」の具体的な展開

今回の説明会では、「環境」、「省人化」、「DX/共創」の3点から、それぞれの取り組みについて紹介した。

「環境」では、脱炭素化を支援するビジネスモデルにより、環境負荷低減に貢献。さらに、環境優良商品と技術を活用することで顧客の課題を解決することを目指す。

企業に対する環境支援としては、低消費電力のインクジェットプリンタや、乾式オフィス製紙機のPaperLabといったハードウェアの提供だけに留まらず、サステナビリティ経営の推進支援サービスを拡大する考えを示した。

同社では、2022年4月から、顧客の環境問題を解決、支援する専門家チームを設置。キャプランやTBMとのパートーシップにより、オフィスにおけるCO2排出量の可視化や脱炭素化支援などのサービスを提供してきた経緯がある。これまでに49社の実績があるという。2024年度は、中小企業の取引先である大手企業から依頼される情報開示に関する回答作成をサポートしながら、翌年の対応要求や環境指標向上に向けた取り組み支援を、パートナー企業とともに進めるという。

「脱炭素への取り組みに対して、なにからはじめたらいいかがわからない、あるいは取引先から環境への対応要請がきているが、なにに取り組んでいいかわからないという企業を支援していきたい」としている。

  • 顧客の環境問題を解決、支援する専門家チームを設置。これまで、サービス提供の実績も積んできた

また、ファッション業界においては、大量生産、大量消費、大量廃棄という構造になっていることを指摘しながら、エプソンが持つデジタル捺染機によるオンデマンド印刷により過剰在庫を持たない「Virtual Personal Order」を提案。2023年度からはアベイル、三陽商会とともに実証実験を開始。2024年3月には、フクルが加わり、カスタムオーダーTシャツの実証実験を開始していることを紹介した。

2024年度は実証実験を継続するとともに、ブランドオーナーを拡大し、ビジネスモデルを深化。ファッション業界が抱える社会課題や経営課題を解決する仕組みの確立を目指す。

  • ファッション業界が抱える課題の解決に実証実験を継続

さらにコンシューマ分野における取り組みとして、「カラリオスマイルPlus」をあげた。カラリオプリンタとエコタンク搭載モデルを対象に、5年間のサポートサービスを提供するもので、希望に合わせて修理料金を全額サポートするプランと、半額サポートする2つのプランを選択でき、修理対象には、落下破損、水こぼし、火災・落雷などの物損対応が含まれるほか、廃インクメンテナンスエラー発生時も無償でサポートを行う。

「故障したら捨てる」から「修理して使い続ける」へのシフトを促し、長く使ってもらう提案を行うもので、これまでに約14万件を販売。利用者の満足度は70.7%となっている。

2024年1月からは、プリンタの月額サブスクリプション「ReadyPrint」の有料テストマーケティングを400人限定で開始。インクが無くなる前に自動配送したり、故障時に無償交換したりといったサービスを提供する。「多くの応募をいただき、予定数を充足した形で実証を行っている」という。

2024年以降は、継続的な価値が提供できるように、サブスクリプションを含めて、サービスの選択肢を増やすことを検討しているという。

  • プリンタでは「故障したら捨てる」から「修理して使い続ける」へのシフトを進める

2つめの「省人化」においては、労働人口減少の課題に対して、ロボット事業を通じて、生産現場の省人化に貢献。省・小・精の価値を持つロボットで顧客の課題を解決するという。

「ロボットや力覚センサー、分光ビジョンシステムなど、エプソンが持つ技術を活用して、自動化を推進し、工場での人手不足や事業継承に貢献。これまで諦めていた人の感覚が必要とされる作業にも対応していくことになる」と語る。

2021年4月に、エンジニアリング営業SBUを発足し、電機電子、自動車、食品製造分野などへのアプローチを開始し、2023年3月には、日本総菜協会および協力企業とともに、総菜製造ロボットの実用化に向けたプロジェクトに参画した。「弁当盛付」や「蓋閉め」、「製品移載」の自動化を行うことができる。

2024年度以降は、検査や部品生産、梱包、出荷などの製造プロセス全体に対応した幅広いソリューションを提案。パッケージ化することで、導入障壁を低減することを目指す。また、食品業界への提案強化を推進。「成長領域として、大きな事業に育てていきたい」と意気込みを語った。

  • 労働人口の減少で注目されるロボット事業。食品製造分野へのアプローチも

また、「DX/共創」については、働き方改革や業務効率化により、現場のDX化を推進。社内の成功事例をもとに、顧客のDX推進を支援するという。

具体的な事例としてあげたのが、学習サービスの「StudyOne」である。スタディラボが持つ学習管理システムと、エプソンが持つ遠隔印刷、スキャン技術を組み合わせて、デジタルと紙を融合させた家庭学習をデザインできるサービスであり、塾と子ども部屋をつなげる学習サービスと位置づけている。

学習塾は、課題プリントを選択して、生徒の家に送信。生徒は届いた課題プリントをプリントアウトして学習したあと、プリンタのスキャン機能を使って学習塾に返信。家でも、塾と同じ学習が行えるようにしているのが特徴だ。各プリントにはQRコードが自動で印刷され、生徒の学習ログとしてデータを蓄積できる。2023年4月から正式販売を開始し、2024年2月には、灘中合格の実績では日本一の実績を持つ浜学園で採用されたという。

2024年度以降は、学習塾に対する提案を加速。紙を用いた教育のさらなる普及に向けた顧客価値の発信、浸透に取り組む考えだ。

  • 得意な印刷技術などを活かし、家庭学習を支援する取り組みも

さらに学校現場に向けては、スマートチャージによる「アカデミックプラン」を通じて、先生方の働き方改革と、生徒たちの学習意欲の向上、学習の質の向上を支援している事例を紹介した。同プランでは、100枚/分の高速印字ができるインクジェット複合機を利用し、月額プランにより、消耗費予算の範囲内で提案。カラー印刷も、モノクロ印刷も同額で利用できるため、これまではコストの観点でモノクロ印刷しかできなかった状況や、印刷則戸が遅いため、大量に印刷するために早朝出勤や残業をしていた先生の課題を解決。カラー化によって、生徒にもわかりやすい教材や資料を作ることもできるようになったという。

2022年4月に、教育委員会を対象に、アカデミックプランを提案する専門部隊を全国に設置。現在、小中高校において、インクジェット複合機のLXシリーズが約5600台、プロジェクターが約13万台導入されており、47都道府県すべてでアカデミックプランが採用されているという。

2024年度以降は、他のソリューションとのシナジーを追求するとともに、「モノとコトの価値を組み合わせて、学校現場をもっと笑顔にしていきたい」としている。

  • 長時間労働の是正など、教員の働き方改革が叫ばれており、この分野の業務効率化も急務である

説明会では、新たな経営陣もコメントした。

エプソン販売 取締役 販売推進本部長の豊田誠氏は、「エプソンは顧客視点を持つ企業へと変わった。モノづくりへのこだわりや、コア技術をベースに、顧客価値を作り上げていくことになる。お客様をどう笑顔にするかを考えていきたい。不可能を可能にするという気概を持って挑戦していきたい」と発言。

  • エプソン販売 取締役 販売推進本部長の豊田誠氏

エプソン販売 取締役 コンシューマ営業本部長の木村勝利氏は、「コンシューマユーザーに、もっと笑顔になってもらえる商品やサービスを提供していきたい。また、家庭で使用しているプリンタを長く、安心して使ってもらいたいと思っている。光制御を活用した技術を搭載したホームプロジェクターにも注力していく考えだ。お客様の困りごとを捉えた価値を提供したい」とコメントした。

  • エプソン販売 取締役 コンシューマ営業本部長の木村勝利氏

また、エプソン販売 取締役 エンジニアリング営業SBU本部長の橋本倫明氏は、「中小企業では、課題解決に向けて、なにをやったらいいのかがわからないという声が多い。お客様に寄り添って、『できない』を『できる』に変えることで、日本の製造業を元気にしたい」と語った。

  • エプソン販売 取締役 エンジニアリング営業SBU本部長の橋本倫明氏