Seagate Technologyが、「サステナブル・データスフィアESGパフォーマンスレポート2022年度版」を発行した。そのなかで、1年間に100万台を超えるHDDおよびSSDの再生利用したことを明らかにしたほか、2030年の目標として掲げている自社設備での100%再生可能エネルギーへの転換において、現時点ですでに50%以上を達成したことを示した。

データは急速な勢いで拡大を続けており、昨今話題となっている生成AIの登場は、その流れに拍車をかけると見られている。

データを格納するストレージに対する需要が増大するなか、この分野のリーダー企業であるSeagate Technologyは、持続可能な社会への貢献に向けた取り組みに力を注いでいる。

今回のレポートは、その成果の一端が示されたものといえる。Seagate Technologyのサステナビリティへの取り組みについて、同社ESG&エンゲージメント ディレクターのエイミー・ザッカーマン(Amy Zuckerman)氏に聞いた。

  • 拡大し続ける「データ」、ストレージの持続可能性に挑むSeagateのESG戦略

    Seagate Technology ESG&エンゲージメント ディレクターのエイミー・ザッカーマン(Amy Zuckerman)氏

Seagate Technologyが発行している「サステナブル・データスフィアESGパフォーマンスレポート2022年度版」は、環境、社会、ガバナンス(ESG)における同社の取り組みをまとめたもので、中長期に渡る具体的な目標を示しながら、それに向けた進捗状況を報告する内容になっているのが特徴だ。

今回が17回目の発行となり、これまでの「グローバル・シチズンシップ年次報告書」から名称を変更している。

Seagate Technology ESG&エンゲージメント ディレクターのエイミー・ザッカーマン氏は、「今回のレポートは、ESGのすべてを対象と内容へと進化させており、それにあわせて、名称を変えた」と説明する。

Seagateは、グローバル企業の1社として、サステナビリティ情報を積極的に開示してきた。国連のSDGsをはじめとしたグローバルフレームワークをもとに、社内の方針を策定するとともに、業界各社が連携した各種活動をSeagateが中核的役割を果たす形で推進。その一方で、今回のレポートのように、Seagateの活動を年次報告書としてまとめるパブリックレポートの発行や、第三者格付機関による評価などにより、同社の「ESG報告保証」を支えている。ここでは、透明性を確保するために、外部機関からの評価を重視していることも強調してみせる。

「Seagateでは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)と連動した指針を打ち出している。また、インテグリティ、イノベーション、インクルージョンの3つの行動指針を示しているそして、これは指針に留まらず、具体的な指標を設定し、目標に向けた活動を行っていることに意味がある」としながら、「Seagateは、世界を変える力や規模、機会を持っていると認識している。また、サステナブルで、責任ある取り組みにおいて、業界をリードしていく責任がある。さらに、気候変動への影響を軽減することを目的とした技術や製品を設計し、協業を通じて、気候変動に対応したグローバルなESGプラクティスの推進のための活動を行っている」と語る。

  • SDGsと連動したSeagateの3つの行動指針

こうした取り組みのひとつが、循環型経済促進グループ(Circular Drive Initiative=CDI)である。CDIは、Seagateが中核的な役割を担う形で、2021年に創設。ストレージやデータセンター、ブロックチェーン分野などの主要グローバル企業や、循環型エンジニアリング企業が参加し、ハードウェアの安全な再利用を可能にするほか、廃棄物の削減を目指す活動を行っている。

「CDIでは、解決すべき課題を議論するために、委員会を設置し、活動をを開始したところである。地球のためにオープンな議論を行い、データ保存業界全体として、環境インパクトを低減するための活動を進めることになる」と位置づける。

CDIには、Seagateの競合企業も参加しており、それぞれに役割を果たすことになる。

  • CDIはハードウェアの安全な再利用、廃棄物の削減を目指す活動を行っている

Seagateでは、自己暗号化ドライブおよびInstant Secure Erase(ISE)機能を活用して、データをデジタル技術によって安全に消去。このドライブを市場に再展開し、有害な電気電子機器廃棄物の発生を削減する役割の一端を担うという。

「環境インパクトを低減するための活動は、競合企業も様々な取り組みを行っており、それらの活動が組み合わさって、総合的な取り組みを前進させることができる。私たちは、この活動を、より大規模に展開しなくてはならないと考えている。ハイパースケーラーとの協業も強化し、さらに、個人ユーザーとのエンゲージメントも強化しなくては、埋め立て地に持っていかれるHDDを減らすことができない。Seagateでは、個人から直接使用済みHDDを回収する仕組みも用意している。まだまだ努力が必要なことは認識している。Seagateは、業界をリードしながら、持続可能なデータ環境の構築に向けて努力を続けていく」と語った。

Seagateは、前回のレポートのなかで、2030年にすべての製造、研究、開発拠点において、100%再生可能エネルギーを使用する方針と、2040年にカーボンニュートラルを達成する環境ムーンショット計画を打ち出した。

  • Seagateの環境ムーンショット計画、ひとつは2030年に100%再生可能エネルギー

今回のレポートではその進捗状況について報告。100%再生可能エネルギーを使用する目標については、現時点で、50%以上を達成したことを発表した。

「Seagateの全世界7カ所の製造工場および研究開発施設のうち、4カ所で全面的な再生可能エネルギーへの移行が完了した。これは想定通りの進捗であり、再生可能エネルギーの購入契約や、太陽光発電システムの導入を促進した。これにより、全社で消費される電力の半分以上が、再生可能エネルギーによってまかなわれている計算になる」という。

再生可能エネルギーの活用は、国や地域によって置かれた状況が異なったり、エネルギーコストが違ったりするため、それに伴う経営判断や施策、優先順位にも違いが発生する。「2022年には、タイにおいて、再生可能エネルギーの利用に関する大規模な契約を結ぶなど、それぞれの地域にあわせた取り組みを推進していくことになる」と述べた。

レポートでは、2022年度に、最大2万1000MWhを節電し、当初目標の1万MWhを大幅に超える成果を達成したことも報告している。

「節電効果の多くは製造工程によるものである。空調やポンプの制御を最適化したり、チラーやコンプレッサーを省エネ化した最新設備に置き換えたりすることで、節電を達成した。省エネ化への取り組みは、常に改善余地があるという姿勢で取り組んでいくことが必要である」と述べた。

  • もうひとつのムーンショットが、2040年のカーボンニュートラル達成

また、2040年のカーボンニュートラル達成の目標については、自社工場における地球温暖化係数(GWP)の高い化学物質の追跡と管理を実施するとともに、サプライヤーのGHGデータを収集し、スコープ3のカテゴリ1での排出量モデルを強化。同社を取り巻くサプライチェーンエンゲージメントを推進していることに触れた。

「スコープ1およびスコープ3において、効率性の向上と負荷軽減を実現する取り組みを進める。とくに、スコープ3の取り組みは、多くの課題があるが、サプライヤーとの協力とともに、Seagateも創設に関わったRBA(レスポンシブル・ビジネス・アライアンス)の行動規範に準拠しながら推進していくことになる」と述べた。

一方、2022年度に再生利用したHDDとSSDが116万台に達し、ドライブの修理および再生によって、540トンを超える量の機器が、電気電子機器廃棄物として埋め立て処分されずに済んだことも報告した。

「Seagateでは、循環型経済への移行が不可欠だと考えている。だが、HDDを廃棄する場合、お客様の多くはHDDをシュレッダーしており、その数は年間数1000万台にのぼるという試算もある。こうした課題を解決するために、Seagateでは、修理、素材回収、部品抽出、修理、再生、再販といった方法を用意し、使用済みのHDDが埋め立て地に行かないようにしている」

  • 「使用済みのHDDが埋め立て地に行かないように」Seagateが取り組んでいる循環型経済への移行

HDDを循環するために同社が用意しているのが、デバイスおよびラックの双方を対象にしたデータサニタイゼーション技術の「Purge(パージ)」だ。

論理的または物理的な手法で、アドレス指定可能および指定不可能なストレージ上のすべてのデータを削除。最先端の手法を用いることでデータ復旧を不可能にし、デバイスを再生し、再販することが可能な状態にできる。

Purge は、IEEE 2883に準拠し、ドライブにデータが残っていないことを認証しており、透明性を持った形でセキュアなデータ消去を可能にしている。

「今後は、データを安全に処理することが重要な価値提案になると考えている。Purgeは、今後も継続的に、デバイスとラックの双方への対応を推進するとともに、第三者によるプロセスの検証を維持し、顧客にとって信頼できるプロセスを提供することに取り組んでいく」とした。

  • HDDを「循環」するために同社が用意するデータサニタイゼーション技術「Purge(パージ)」

また、ザッカーマン氏は、「より多くのものがリサイクルできるようにしている」とし、リサイクル素材を使用したポータブルHDDとして、Ultra Touch HDDを発売したことにも触れた。「筐体ケースの約30%以上にリサイクル素材を利用し、梱包パッケージでは100%がリサイクル素材になっている。現在、取り組んでいるのは、ケースだけでなく、ドライブなどのすべての部品を含めて、30%のリサイクル素材を活用することである」とする。

HDDでは材料の97%をリサイクルすることが可能であり、環境への貢献度が高いという。また、HDDよりもリサイクル率が低いSSDでは、再利用することを重視しており、それに向けた取り組みをこれから加速することになる。

さらに、製品寿命の延長にも取り組んでいるほか、HDDそのものの容量を増やすことで、エネルギーを節約につなげる提案も行っている。これも環境価値の追求においてひとつの手段となる。

レポートでは、このほかにも、いくつかの成果を紹介している。

2022年には、埋め立て予定だった無害な廃棄物の87%を転用しており、その量は2万7000トンに達するという。また、使用済みHDDから、有害廃棄物の82%をリサイクルしたり、1.1トンの廃磁石をリサイクルしたりといった成果のほか、39.4トンのアルミニウムもリサイクルしたことを示している。

さらに、自社設備においては、1352MWhの太陽光発電による電力を生産し、スコープ2における温暖化ガス絶対排出量を2020年比で5.8%削減。水資源の再利用は5%増加し、水の使用量原単位が1%減少したという。

  • 環境への取り組み、2022年度の成果

IDCの予測によると、2026年に生成されるデータは228ゼタバイトに拡大し、そのうちの8%がストレージに保存され、その多くでHDDが利用されることになるという。また、生成AIの登場によって、2027年には300エクサバイトのデータが新たに生まれると予測されている。ストレージに対する需要が高まるなかで、環境への対応がSeagateにとっても重要な要素になるのは間違いない。

ザッカーマン氏は、「環境に対する意識が高まり、環境に対する規制や透明性が求められている。そうしたなか、世界中の企業がグローバルの課題に挑み、解決策を模索していくことが大切である。政府や業界団体、様々な企業と協業することで、その活動を加速させていきたい」とする。

Seagateは、データの拡大による旺盛なストレージ需要に対応しながら、経営の重要課題として、環境貢献を位置づけている。同社が環境を重視する姿勢には、これからも変化がない。