デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。

周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。

そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!

登場人物

哀ちゃん:マイナビニュース連載の漫画「デザイナー哀の劇場」シリーズに登場する入社3年目の中堅デザイナー。クライアント様からの要望や作業に翻弄される日々。
アデ子さん:哀ちゃんと同じく「デザイナー哀の劇場」シリーズに登場する、10年目のベテランアートディレクター。豊富な経験とうまい酒情報で哀ちゃんをみちびく。

まずりん：「デザイナー哀の劇場」シリーズの作者。液晶ペンタブレットを導入してみたいと思いつつためらっていた。漫画を描き始めて日が浅いため、ドローイング系ソフトや機器についての知識に自信がない。現在、「独身OLのすべて」、「おふとりさま劇場」、「スペ沢さん」など連載中。

前回のあらすじ：これまでペンタブレットで漫画を描いてきたまずりんさんが、ワコム東京本社ではじめての液晶ペンタブレットに挑戦。ペン先のちょっとしたズレが気になったまずりんさん、哀ちゃんのアドバイスで調整し直して、使いやすい状態に。ようやく本題のイラスト描画に突入か？
～ワコムの会議室の中～

まずりん： さて、長い時間を使ってしまったような気もするしなんだか記憶がうすボンヤリとしているけど、ようやく絵の練習に入れそうね。

アデ子さん： ようやく新しい私を描くつもりなのね…あのころの美貌ふたたび…。

哀ちゃん： （美貌…？？）ところでまずりんさん。

まずりん： ん、何？

哀ちゃん： なんとなくアデ子さんをラクガキしまくってますけど、実際の仕事の用途で試さなくて大丈夫なんです？

まずりん： あ！

アデ子さん： えっ？！

まずりん： そう言われてみればそうだわ。普段は漫画（らしきもの）を描いてるんだから、コマ割とかペン入れとか、そっちのが大事だった！そもそも「デザイナー哀の劇場」、連載終わってるし。こんなもん描いてる場合じゃねえ。

アデ子さん： えっ、じゃあアタシ達、もう描いてもらえないの!? ウゥッ…。

まずりん： や、いやいや！可能性はゼロではないと思うよ！今はキレイに完結してるけど、もしかしたらってことはあるし、ね！

哀ちゃん： そ、そうですよ！アデ子さん、万が一ってこともありますよ！

アデ子さん： 万が一の話をしないで！

まずりん： （めんどくせえな、コイツ。）せっかくだし、あの頃を思いだして「哀の劇場」にあらためてペン入れしてみようかね。USBにデータ入れてきたの。ほらほら、こんなこともあったわねえ。散々アデ子さんを試しに描いたおかげで、ペン入れはスムーズにいくやねえ～。

哀ちゃん： ほんと、最初は線がブレブレだったのに、もうペン入れも余裕そうですね！一時は「この企画失敗だったかな、　途中退場させてくまのぬいぐるみでも座らせておいたほうがマシだったかな」って思いましたもん。

まずりん： うるさい子は、ほうれい線の刑ぞよ。

哀ちゃん： わっ、すみません、それだけは！それだけは～…！！

まずりん： 忘れるな、お前達にとって私は神であることを。

アデ子さん： 哀の劇場か…。このころは良かったわねえ。出番があって…。

連載当時の手描きのネーム
哀ちゃん： あらら、アデ子さん、妙齢の女性によくある「あの頃は良かった」モードに入っちゃいましたね。液晶ペンタブレットの画面すら見てくれない…。

まずりん： 過去を振り返ってもしょうがないわ。私、過去はさっぱりと捨てる主義なの。

哀ちゃん： （!? 私たち捨てられるの？）

まずりん： う～ん、本体付属のこのペン、ちょっと太いな…そう思わない、哀ちゃん？

哀ちゃん： そ、そうですかね。普段まずりんさんが使ってるペンよりは確かにちょっと太いかも？

まずりん： うん、もうちょっと細いやつがあったら使ってみたいんだけど。

哀ちゃん： ありますよ！付属のプロペンも使いやすいように作られてるものですけど、好みに合わせて使い分けられるように、細いものとか、あとはエアブラシみたいに使えるものとかもあったりしますね。

まずりん： ほ～、いろいろあるんだねえ。この細いの使ってみようかなあ。

哀ちゃん： クラシックペンっていうんですよ。はい、どうぞ～。

まずりん： ふむふむ。クラシックペンもなかなかね。でも、比べてみたらやっぱりさっきのプロペンも捨てがたくなってきたなあ。付属品以外のペンと比べることなんて普通できないから楽しいねえ。さて、どんどん描くぞ～。

アデ子さん： ……アタシなんかどうせ過去の人なのよ…。

～15分後～

まずりん： さてアデ子さん、ちょっとコレ見て。

アデ子さん： なによ、「あの人は今」ならお断りよ？他を当たってちょうだ…アラ？

哀ちゃん： これは…！

まずりん： これまでの集大成、できあがり！アデ子さんは笑ってるのが一番だからね！


アデ子さん： これ…漫画のペン入れの練習してるんじゃなかったの…？！


まずりん： 私（という名の創造主）が創り出した、アデ子さんと哀ちゃんだもん。「哀の劇場」が終わっても、液晶ペンタブレットで、新連載なりLINEスタンプなりで描くこともあると思うよ（気が向けば）。だからあんまりしょげないでね。


アデ子さん： ありがとう…！ごめんなさいね湿っぽくしちゃって…。アタシ性格が陰湿だから…！


哀ちゃん： よかった…！アデ子さんもどうにか泣き止んだし、何となく今後の出番の希望が…！


まずりん： とはいえ、この連載もそろそろ終わるんだけどね。


哀ちゃん・アデ子さん： ギャアアア！


次回はいよいよ最終回。お楽しみに!