エムエスアイコンピュータージャパンのマザーボードの従来ラインナップでは、例えばLGA1366ではメインストリームクラスの上に「Eclipse」シリーズというエンスージアスト向け製品が用意されていた。LGA1156でこのポジションに来る製品が「Big Bang」シリーズ。そして今回紹介するのは、そのBig Bangの第1段「Big Bang-Trinergy」だ。
MSI BigBang Trinergy
メーカー | MSI |
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製品名 | Big Bang-Trinergy |
フォームファクタ | ATX |
対応ソケット | LGA1156 |
対応CPU | Intel Core i5/i7 |
チップセット | Intel P55 Express |
対応メモリ | DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 1333/1066/800MHz対応 |
拡張スロット | PCI Express (2.0) x16×3(x16+x16またはx16+x8+x8帯域)、PCI Express x1×2、PCI×2 |
マルチグラフィックス | NVIDIA SLI、ATI CrossFire X |
ストレージ | SATA II×10ポート(P55×6ポート+JMicron JMB322×4ポート)、eSATA×2ポート(Power eSATA対応 JMicron JMB363)、PATA×1(JMicron JMB322) |
RAID機能 | RAID 0/1/5/10(P55)、RAID 0/1/JBOD(JMB322) |
ネットワーク | 10/100/1000BASE-T×2(Realtek RTL8111DL) |
オーディオ機能 | 8ch HDオーディオ(Realtek ALC889) |
インタフェース | USB 2.0×10(+ピンヘッダにより4ポートの拡張が可能)、IEEE1394×1(+ピンヘッダにより1ポートの拡張が可能 VIA VT6315N) |
nForce 200にHi-c Cap、その他にも全ては紹介しきれぬ多機能ぶり
Intel P55 Expressチップセットのプラットフォームでは、そもそもPCI Express x16レーンがCPU側から出ており、SLIやCrossFireXを利用するにはこれをx8レーン×2にスプリットしている。ところがBigBang Trinergyではx16レーン×2本のSLIやCrossFireXが可能となっている。これは、NVIDIA nForce 200チップの追加搭載で実現したものだ。nForce 200はPCI Expressレーンのスイッチングを行うチップで、実行効率は別として仮想的にx16レーン×1本のLynnfieldでx16レーン×2本のSLIやCrossFireXが可能となる。
従来のノースブリッジ位置にNVIDIA nForce 200チップを搭載。x16レーン×1本をx16レーン×2本にスイッチングする |
従来のサウスブリッジ位置にIntel P55 Express PCHチップを搭載 |
また、拡張スロットレイアウトではPCI Express x16スロット×3基、PCI Express x1スロット×2基、PCI×2基が備えられている。3本目のx16スロットを利用する際には2本にスイッチングされたx16レーンのうちの1本に対し、スプリットをかけることでx16+x8+x8というレーン構成で3-way SLIが構成可能だ。
もうひとつ、BigBang Trinergyで注目すべき点は、マザーボード上のコンデンサが全てHi-c Capに置き換えられている点だ。一般的なマザーボードに見られる筒型のコンデンサはひとつも見られない。Hi-c Capは既に同社マザーボードやグラフィックスカードで搭載例がある高品質なコンデンサ。ポリマータンタルコンデンサといういわゆるタンタル固体電解コンデンサであり、現在のマザーボードで主流のアルミ固体電解コンデンサとは素材が異なる。タンタルコンデンサは一般的に小型で大容量、そして安定していることなどが特長として挙げられるが、Hi-c Capではリーク電流が15分の1だったり、良好な導電性、電源の安定性によりオーバークロック耐性が高まる点などがその特徴とされている。CPU回路部分に視点を移すと、Hi-c Capに加え、MSIのマザーボードではお馴染みの高効率回路の「DrMOS」、そしてノイズを出さないとされるスーパーフェライトコアチョーク(SFC)が組み合わされていることが確認できる。使用するフェーズ数をコントロールする「APS」も搭載しており、MSI究極の省電力、低発熱、信頼性、そしてオーバークロックが期待できる。
そのほかにもBigBang Trinergyは自作"通"向けの機能が満載だ。まずは電圧を計測できる「V-チェックポイント」。テスター等をお持ちであれば、ここに針を当てることで各種電圧が正確に計測できる。これと合わせ、BIOSの制限値を超える電圧設定が可能となるディップスイッチ「V-スイッチ」も搭載されている。また、オーバークロック機能では、「OC Genie」を搭載する。OC Genieはシステムに搭載されているCPU・メモリにあわせてOC Genie自身が自動的に設定を行う機能だ。ボード上には専用のチップ、そしてボタンが用意されている。さらに電源・リセット・GreenPowerのスイッチは、ボタン式ではなくセンサー式だ。
オンボード機能はこれでもかという充実ぶりだ。ストレージでは、SATA/eSATAが12ポート、PATAが1系統利用できる。うち6ポートのSATAがチップセットの機能だが、残るストレージポートには系4基のJMicronチップが実装されている。内訳はJMB322が3基、JMB363が1基。レイアウトおよびJMicronのデータシートを見る限り、MSIの公称とは異なるが3基のJMB322が2ポートずつ6基のSATA/eSATA、JMB363がPATAを担当しているとみられる。ネットワークでは、Realtek「RTL8111DL」が2基搭載されており2ポートのGbEが利用可能。IEEE1394機能にはVIA「VT6315N」。そしてオーディオ機能はカードで提供されており、EAX Advanced HD 5.0とHTXに対応した本格的なオーディオカード「Quantum Wave オーディオカード」が付属する。
「OC DASHBOARD」と「Quantum Wave オーディオカード」なども付属する。OC DASHBOARDはバックパネルの専用端子にケーブルで結び、手元からオーバークロックの監視、設定が可能だ |
全面Hi-c Capは全ユーザー一見の価値有り
Big Bang-Trinergyは、一見するとシンプルなボードに見える。もちろん、PCI Express x16スロットを3本搭載するのだから、メインストリーム向け製品とは一線を画すが、DrMOSによってフェーズは見た目すっきり、さらにマザーボードの顔とも言えるコンデンサがHi-c Capに置き換わっている点は特にボードをシンプルに見せている。「美しい」と思わせるマザーボードであり、それでいて機能は並みのマザーボードではない。不思議な魅力を持った製品だ。
もちろん主なターゲットはオーバークロックやハイエンドゲーム目的のユーザーだろう。しかしこの製品はもっと別のセグメントのユーザーにもオススメできる。確かに価格で見れば3万5千円前後と決して安い製品ではないが、信頼性や低消費電力、静音性を求めるユーザーにも注目して欲しい。