NTTドコモは2022年3月23日、オンライン専用プラン「ahamo」のオプションサービス「ahamo大盛り」の提供を発表しました。月額4,950円で100GBの通信量が利用できるなど、大容量通信のニーズに応える狙いがあるようですが、そこには携帯料金引き下げの反動も少なからず影響していると考えられます。

  • NTTドコモが発表した「ahamo大盛り」、毎月100GBの通信量が単身者でも割安な価格で利用できることが話題になっている

大容量サービスの強化に舵を切ったahamo

20~30代の若い世代をターゲットにしたオンライン専用プランとして、2021年3月にサービスを開始したNTTドコモの「ahamo」。間もなくサービス開始から1年を迎えようとしている2022年3月23日、同社はahamoに関する新たな施策を打ち出しました。

それが、2022年6月より提供を開始する「ahamo大盛り」です。これは、月額1,980円で80GBのデータ通信量が利用できるオプションを新たに提供し、ahamoの基本プランに追加することで、月額4,950円で100GBの通信量が利用できるというもので、大容量通信のニーズに応えるためのものといえるでしょう。

  • NTTドコモが2022年6月より提供予定の「ahamo大盛り」。オプションの追加により、単身者でも月額4,950円で100GBの通信量が使えるようになる

実は、ahamo大盛りは料金的に見れば、同社のデータ通信が使い放題となる料金プラン「5Gギガホ プレミア」にて、家族や固定回線などに係る割引を最大限適用した時の料金(月額4,928円)と大きく変わりません。ですが、ahamo大盛りはもともと若い単身者をターゲットとしているだけに、単身者でもこの値段で大容量通信が利用できることがメリットとなります。

一方、他社のオンライン専用プランの動向を見ると、ソフトバンクの「LINEMO」は月額990円で通信量3GBと小容量の「ミニプラン」を追加していますし、KDDIの「povo」は「povo 2.0」にリニューアルした際、月額0円から利用でき、必要に応じて必要なだけ通信量を“トッピング”できることに力を入れるようになりました。いずれも、少ない容量でお得に利用することを重視したリニューアルが図られていることが分かります。

それだけに、NTTドコモがahamoの新たな施策として、通信量を増やして大容量のニーズに応える方向へと舵を切ったのには意外性もありました。NTTドコモはその理由として、年々データ通信量が増えており、とりわけahamoがターゲットとする20~30代は通信量が著しく伸びていることを挙げていました。ですが、それは従来から続いているものであり、NTTドコモだけの傾向というわけではありません。

  • NTTドコモは、ahamo大盛りを提供する理由として、特にahamoの対象となる若い世代のデータ通信量が大きく伸びていることを挙げている

業績回復に必要な大容量プランの利用拡大

ではなぜ、NTTドコモがahamoの通信量を増やすオプションを追加するにいたったのかと考えると、浮上してくるのが携帯電話料金引き下げの影響です。2021年半ばまで続いた菅義偉元首相の政権下では、携帯各社に料金引き下げが強く求められ、それに応じてNTTドコモがahamoを提供したのは多くの人が知るところかと思います。

ですが、携帯料金を引き下げれば携帯各社の業績は悪くなるわけで、NTTドコモもその例に漏れず料金引き下げ以降、利益を大きく落とす状況が続いています。そうした状況下で業績を回復させるには、1つには携帯電話サービス以外のビジネスを拡大・強化することがあります。NTTドコモの最近の事例としては、電力サービスの「ドコモでんき」を新たに提供したことが、その象徴的な事例といえます。

  • NTTドコモは、業績回復のために通信以外のサービスを強化しており、2022年3月には「ドコモでんき」で電力事業にも参入している

そしてもう1つは、利用者の携帯電話料金の底上げを図ることです。確かに、携帯各社の料金は下がりましたが、ユーザーが安価なプランではなくより上位のプラン、具体的には大容量や使い放題の高額なプランを自ら選ぶようになれば、売上が回復できるでしょう。そこでNTTドコモは、ahamoに大容量ニーズに応える選択肢を用意し、大容量通信を欲するニーズに応えることで、売上を伸ばす策に出たものと考えられます。

手法に違いはありますが、やはり大容量通信ができるプランに力を入れて売上を伸ばそうとしているのがKDDIです。実際KDDIは、スポーツ動画配信サービス「DAZN」の大幅な値上げが発表された直後の2022年1月26日、auブランドで「使い放題MAX 5G/4G DAZNパック」の提供を発表。月額料金は8,338円ですが、「使い放題MAX 5G/4G」の月額料金が7,238円なので、DAZNの利用料は実質的に1,100円となり、値上げ後のDAZNの料金(月額3,000円)よりも大幅に安い料金で利用できる計算となります。

  • auのWebサイトより。KDDIは、auブランドで2022年2月22日より「使い放題MAX 5G/4G DAZNパック」を提供しており、DAZNが実質1,100円で利用できる

KDDIはかねてから、大容量プランと「Netflix」や「Amazonプライム」など大容量通信を必要とするサービスをセットで提供する、いわゆるバンドルプランに力を入れてきました。そこにDAZNも取り込むことで、大容量コンテンツを利用したいニーズを高め、より高額なプランの契約に結び付けようとしている様子を見て取ることができます。

5Gが急速に広がってきている現在、本来であれば大容量通信を利活用したサービスに対する注目が集まり、その利用が増えるフェーズに入るはずなのですが、菅前政権の影響で消費者の関心がサービスの高度化よりも安さに向かってしまっているのが現状です。それだけに、携帯各社が業績を回復させるためには、大容量通信の必要性を高めて安さ一辺倒となっている消費者の意識を大きく転換する取り組みが求められているといえます。