英Nothing Technologyが2026年1月7日に国内投入を発表した「Nothing Phone (3a) Lite」は、低価格のエントリーモデルながらAI技術を活用した機能をしっかり搭載している。それだけスマートフォンメーカーがAIを重視する傾向が強まっていることは確かだが、将来を考えるとそのAIが、メーカーのビジネスに不安要素を与える可能性も出てきている。
AI機能がカットされなかったエントリー新機種
2025年も大きな注目を集めたAI技術。「ChatGPT」の愛称「チャッピー」が流行語となったり、AI需要の高まりでメモリ不足が生じ、パソコンの価格に大きく影響してきたりするなど、AI技術が1年を通じて注目されたことは間違いない。
そのAI技術はスマートフォンにも取り入れられており、2025年も米グーグルの「Gemini」だけでなく、メーカー独自のAI機能も多く搭載されるようになった。その流れはハイエンドモデルだけでなく、最近では低価格のエントリードモデルにも搭載されるようになってきている。
そのことを示しているのが、英Nothing Technologyが2026年1月7日に国内投入を発表したスマートフォン新機種「Nothing Phone (3a) Lite」である。これはその名前の通り、2025年に発売された同社のミドルクラスのスマートフォン「Nothing Phone (3a)」の下位に位置付けられる、エントリークラスのモデルだ。
エントリークラスということもあって価格は4万2800円と比較的安いが、その分性能も抑えられており、チップセットには台湾メディアテックの「Dimensity 7300 Pro 5G」を採用。カメラは3眼構成だが、広角カメラ以外のイメージセンサー性能は1000万画素以下に抑えられており、うち1つは最近では珍しいマクロ撮影用のカメラとなっている。
さらにNothingブランドの「Nothing Phone」シリーズの特徴でもある、背面のLEDが光って通知などを知らせる「Glyph」も、複数のLEDが光るインパクトが特徴の「Glyphインターフェース」から、LEDの数が1つの「Glyphライト」に変更され、トーンダウンしている印象だ。
ただその一方で、Nothing Phoneシリーズらしい背面が透けて見えるシースルーデザインは継承されているし、日本向けにFeliCaも継続して搭載するなど、要所はしっかり押さえられている。そしてもう1つ注目されるのが、Nothing Phone (3a)や、その上位モデル「Nothing Phone (3)」にもある「Essential Key」を搭載していることだ。
これは画像や音声をスマートフォンに記録すると、AI技術でそれらを整理し、必要な時に必要な情報を見つけやすくする「Essential Space」という機能を利用しやすくするためのキー。このキーを押すことでスクリーンショットを撮影したり、音声を録音したりしてEssential Spaceに保存できる。
AI技術を活用した機能は、エントリーモデルではカットされることが多い。だがNothing Phone (3a) LiteにEssential SpaceとEssential Keyを用意したことからは、同社がAI関連機能の活用にかなり力を入れている様子を見て取ることができる。
ハードの枠を超えるクラウドAIは悩ましい存在
同様に、下位モデルでもAI関連機能の充実を図っているのが中国のオッポだ。同社は上位モデルだけでなく、下位モデルにも独自のAI技術「OPPO AI」を取り入れる方針を打ち出しており、2025年に発売されたミドルクラスの「OPPO Reno13 A」やエントリークラスの「OPPO A5 5G」でも、「AI消しゴム2.0」など写真関連を中心に、AI技術を活用した機能が利用できる仕組みを整えている。
昨今のAI技術はクラウドで処理するものが多いため、性能が高くないスマートフォンにAI技術を活用した機能を提供するハードルは、実はそこまで高い訳ではない。より多くのユーザーにAI技術を活用して欲しいと考えるメーカーは、クラウドのAI技術を積極活用して低価格モデルにもAI関連機能を搭載している訳だ。
ただクラウドAIはメーカーにとって諸刃の剣でもあり、低い性能のスマートフォンでAI技術を満足に利用できるのであれば、メーカーにとって利益率の高い高価格のスマートフォンを購入する動機付けが弱まってしまう。実際、Nothing Japanのマネージングディレクターである黒住吉郎氏は、クラウドによるAI技術の活用が広がることで、「エントリーやミドル、フラッグシップという概念が、AI技術が入った途端に崩れる可能性すらあると思っている」と話している。
それだけにスマートフォンメーカーの中には、デバイス上で処理するAI技術に重きを置く所も多い。スマートフォンは個人情報を多く扱うため、プライバシー面でクラウドAIの利用を避けたいニーズが少なからずあること、そしてクラウドAIでは一度ネットワークを介するため、素早いレスポンスが必要なシーンでは不足感があることから、デバイス上で処理するAIにも確実にメリットはある。
とはいうものの、巨大なコンピューティングパワーが利用できるという意味ではクラウドAIに分があるし、個人的な相談をAIチャットに投げかける人が増えるなど、クラウドAIの活用に警戒感を抱く向きは減少傾向にあるように見える。それだけにクラウドAIのメリットがより高まり、なおかつその活用に寛容な向きが強まるにつれ、スマートフォンでもクラウドAIに重きを置く動きが強まってくるだろう。
スマートフォンにカメラやゲームなど、ハードウェア性能を必要とする機能は今後も存在し続けるだろうが、それらのために非常に高い性能を持つハイエンドモデルを求める人は、既に少数に限られてきている。それだけにAIが新たな付加価値として期待を寄せるメーカーも多かったのだが、それが逆に低価格モデルのニーズを高める可能性が出てきてしまったことは、メーカーにとって非常に悩ましい所かもしれない。



