イオンリテールがMVNOとして展開しているモバイル通信サービス「イオンモバイル」が、イオンの格安スマホ事業から10周年を迎えるに当たって料金改定を発表。大容量プランの料金引き下げ・新プランの追加が相次ぐなど、大容量とそれをシェアする料金プランの強化を打ち出すイオンモバイルの狙いはどこにあるのだろうか。

大容量プランを200GBにまで拡大

携帯大手からネットワークを借りてモバイル通信サービスを提供するMVNO。現在では市場で一定の存在感を示すようになったMVNOだが、「格安スマホ」という名称でその認知が急速に進んだのに、大きく貢献したのは大手スーパーマーケットの「イオン」である。

なぜなら2014年4月、イオンがSIMフリースマートフォンの「Nexus 4」と、MVNOの1社である日本通信の通信サービスをセットにして販売したことが大きな話題となったからだ。当時はSIMフリースマートフォン自体が少なく、しかも大半のMVNOは実店舗を持たず通信サービスを提供するのみであっただけに、携帯大手と同じように端末と通信サービスをセットで提供し、それでいて破格の通信料金を実現したことが大きな関心を呼び、MVNOの人気拡大へとつながった訳だ。

  • イオンがSIMフリースマートフォンとMVNOのSIMをセットにして販売したのは2014年4月。MVNOが「格安スマホ」として注目を集めたのはこの時からである

    イオンがSIMフリースマートフォンとMVNOのSIMをセットにして販売したのは2014年4月。MVNOが「格安スマホ」として注目を集めたのはこの時からである

その後イオンを展開するイオンリテールは、自らMVNOとなって独自の「イオンモバイル」を提供し、事業の強化を図っているのだが、間もなく迎える2024年4月はイオンが格安スマホに参入してから10年目の節目の年となる。そうしたことから同社は2023年3月15日に発表会を実施し、2024年4月からイオンモバイルの料金改定を実施することを明らかにした。

  • イオンモバイルは格安スマホ参入から10年が経つ2024年4月に料金改定することを発表。主として大容量プランが大幅に強化されることとなる

    イオンモバイルは格安スマホ参入から10年が経つ2024年4月に料金改定することを発表。主として大容量プランが大幅に強化されることとなる

その内容をひと言で表すならば、大容量プランの大幅強化ということになるだろう。イオンモバイルはMVNOの中でも、0.5GBから50GBまで小刻みに料金プランが設定されている点が大きな特徴となっているのだが、改定された料金プランの内容を見ると0.5~20GBのプランには全く変更がなされていない。

一方で、大幅に変化したのがそれ以上のプランである。具体的には従来の大容量プランに当たる30~50GBのプランが550~1650円値下げされたほか、新たに60GB~200GBまでのプランを追加。20GBから100GBまでは10GB当たり550円刻みで選べるようになるなど、より分かりやすい仕組みとなっている。

  • 改定後の料金プランは20GBまでのプランは据え置かれる一方、それ以上のプランは値下げ、あるいは新設がなされ最大で200GBのプランまで選べるようになった

そしてもう1つ、大きな変化となるのがシェアプランの強化だ。シェアプランは1GB以上のプランで利用可能で、文字通り複数のユーザーで通信量を共有できる仕組み。今回の改定によりシェアプランの上限回線数が、従来の5回線から8回線に拡大するという。

  • シェアプランの上限回線数も5回線から8回線にまで拡大。より多くの家族で通信量をシェアして利用できるようになった

今回の料金改定では他にも、60歳以上の利用者に向けた「やさしいプラン」の料金引き下げや新プラン追加なども実施されている。だが改定の主軸が、大容量プランとシェアプランであることは間違いないだろう。

シェアプラン利用者が大容量プランを選ぶ傾向に

なぜ、イオンモバイルは大容量プランとシェアプランの強化に踏み切ったのかというと、その理由はイオンモバイルのニーズの変化にあるようだ。1つは通信量の増加であり、動画視聴など大容量コンテンツの利用増加によって顧客の通信量が増大しているというが、それはイオンモバイルに限らずここ最近の携帯各社にも共通した傾向でもある。

だが同社の場合、特徴的なのはシェアプランと大容量プランの増加が比例関係にあることだ。シェアプランは2021年度以降の料金改定で利用が伸びているそうだが、それと共にシェアプランで20GB以上の大容量プランを選ぶ人が急増。シェアプラン利用者の4割以上が20GB以上のプランを利用しているのだそうだ。

  • 2021年の料金改定以降シェアプランの利用者が増えているというが、それに伴いシェアプラン利用者が、20GB以上の大容量プランを選ぶ割合も高まっているという

確かにシェアプランを用いれば、家族で通信量を共用できるので、使い方によっては1人当たりの料金を非常に安く抑えられる。その一方でユーザーが利用する通信量自体は増加傾向にあることから、シェアプランで大容量プランを選ぶ傾向が強まっている。それだけに大容量プランの強化は、イオンモバイルの強みとなっているシェアプランを強化する狙いがかなり大きいと言えそうだ。

ではなぜ、シェアプランの回線数上限を8回線まで増やす必要があったのかというと、そこにはより多くの家族でシェアしたいというニーズの高まりが影響しているという。例えば家族3世代で料金をシェアする、あるいは家族のうち1人が、スマートフォンとは別にデータ通信用の回線を契約したいなど、2回線を利用したいといったニーズが出てきていることから、そうしたニーズに対応するべく拡大に踏み切ったようだ。

ちなみに今回の発表会ではもう1つ、料金以外の新たな施策として「イオンカード」のカウンターでイオンモバイルの契約手続きを扱うことも打ち出されている。イオンモバイルはこれまでにもイオングループ各社との連携施策を実施しており、中でもイオンカードとはポイントの特典や住宅ローンなど、さまざまな連携を進めており親和性が高い様子を示している。

そこでイオンモバイルではよりイオンカードとの連携をさらに強化。従来47カ所で実施していたイオンカードカウンターでのイオンモバイルの契約手続きを、2024年8月までに全国100カ所にまで拡大するとしている。

  • イオンモバイルの契約ができるイオンカードカウンターを、2024年8月までに全国100へと拡大することも明らかに。相性のいいイオンカードとの連携をより強化し契約を拡大しようとしている様子がうかがえる

これら一連の取り組みによって、イオンモバイルは2029年3月末までに100万回線を突破し、MVNOのコンシューマー市場でシェアトップを目指すという目標を明確に示している。イオンモバイルはMVNOながら実店舗を持つ稀有な存在で、スーパーマーケットを起点に顧客を取り込めるという非常に大きな強みがあるだけに、100万契約獲得に向けて高いポテンシャルを持つことは確かだ。

  • イオンモバイルは新たに、2029年3月までに100万契約を獲得するという具体的な目標を明らかにしている

ただ一方で携帯大手が低価格の料金プランを提供するようになったことで、MVNOに顧客が流れにくくなっていることもまた確か。目標達成に向けては、携帯大手のサービスから動かないユーザーに対して、乗り換える同期を与えるためのより踏み込んだ取り組みが重要になってくることは間違いないだろう。