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「可及其智 不可及其愚」(そのちにはおよぶべきも そのぐにはおよぶべからず)と言う禅の言葉があります。

「賢くなることはできるけど、愚かになるのは難しい。あなたはその愚か者になれるか?」と言った意味に解釈される言葉です。

知識をつけたり、利口になることは努力をすればそれなりにできるかもしれませんが、一度ついた知識や理論を捨ててしまえる「愚」になるのは、なかなか狙ってできることではありません。

悟りの境地は理屈で理解できるものではない(第37回:不立文字)というのが禅の根本的な考え方ですから、「知識に頼って執着していたり、悟るにはどうしたらいいかと頭で難しいことを考えていたり、悟ったということさえ忘れてしまったりすることができないうちは、悟りの境地には至れない」という意味も込められています

仕事などにおいても、何か企画を練ったり作品を作ったりする時に情報を集め理論を立てて、計算づくで練ったアイデアより、自分の直感に任せて思いついたアイデアの方が周りにウケが良かったり、思っていた以上の結果をもたらしたりということが起こることがあります。

ただ知識がないだけであったり、奇をてらい的外れなことを提案したりするのとは違うので、なかなか狙って起こせるものでもありません。

また、何かアイデアを思いついたとしても、自分の中の理性的な部分が「これは現実的じゃないだろう」「これはあまりにも馬鹿らしすぎる」と自分でツッコミ(判断)を入れて封じ込めてしまう、という経験をしたこともあるのではないでしょうか。

問題解決やアイデアの創出に関しては、知識・情報や現実的かどうかなどの判断を一旦捨てて、突拍子もない考えを生み出せる思考も、理論をもとに実現可能かどうかを検証する理性的な思考も、どちらが優れているということはなく両方を適切なタイミングで使い分けていくことが大切です。

しかし、知識や理論・自分へのツッコミに縛られている、何かを表現する勇気が出ないと感じたら、ひとつ「愚」になるつもりで自分のありのままを出せるよう練習してみると、突破口が開けてくるかもしれません。

■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」

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■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。