昨年12月に、東芝ライテックより、グロー点灯管の製造を終了するという発表がありました。同社では、グロー管製造終了後には、スターター式の蛍光管には、グロー管の代わりに、電子点灯管を使用するということを勧めています。

近所の量販店で見てみたところ、グロー管(FG1E)は、1本70円ぐらいで、それに対して、FG1Eに互換性がある電子点灯管(FE1E-A)は、400円前後で販売されていました。5~6倍程度の価格差です。

電子点灯管は、グロー管に比べて高価ですが、その代わりに点灯にかかる時間が短い、寿命が長いというメリットがあるとされています。同社では、電子点灯管での点灯にかかる時間は、グロー管を使用した場合の1/3以下としています。実際に計ってみたのが、以下のグラフです。図1がグロー管を使用した場合で、図2が電子点灯管を使用した場合です。照明のスイッチを入れてから、明るくなるまでの時間を表しています。グロー管を使用した場合には、蛍光管が点灯するまでに、まず、グロー管が点灯して、続いてグロー管と蛍光管が点滅、その後、蛍光管が点灯してグロー管は消灯という流れになるのに対して、電子点灯管では、いきなり蛍光管が点灯します。図1のグラフの5秒付近で、いったん少しだけ明るくなっているのが、グロー管の点灯によるものです。電子点灯管では、0.5秒以下で明るくなっているのに対して、グロー管を使用した場合には、1秒ぐらいはかかっているようで、電子点灯管を使用した方が点灯までの時間が短くなることは確かのようです(グラフにしたことで、かえってわかりにくくなってしまっていますが)。

グロー管を使用した場合の点灯までの時間

電子点灯管を使用した場合の点灯までの時間

続いて、寿命についてですが、グロー管では約6000回以上の動作回数とされています。それに対して電子点灯管では10万回以上と、15倍以上の寿命を実現しています。しかし、ここで考えてみてください。6000回以上という動作回数は、1日に10回動作させた場合、1年8か月ぐらいは持つことになります(1日に10回というのが多いのか少ないのかは微妙なところですが)。10万回以上の動作回数となると、同じく1日に10回動作させたとして、27年以上になります。これはさすがにオーバースペックでしょう。というのも、白熱電球を使用している照明器具は、器具自体の寿命を考える必要はほとんどないのですが(配線やスイッチの劣化などは考慮する必要はあるが)、蛍光管を光原として使用している照明器具の場合、照明器具自体もある意味消耗品です(安定器やインバーターなどに使用されているコンデンサーには寿命がありますし)。同じ照明器具を、蛍光管を交換しながら27年間以上も使い続けるというケースは、かなりレアなのではというのが、筆者の感覚です(器具を交換してしまえば、新しい点灯管が付属してくるので)。

さらに、27年後も現在と同じようにG13(家庭用の直管に使用される)とかG10q(家庭用のサークラインに使用される)といった口金などに接続するスターター式の蛍光管が使われているのかどうかもわかりません。LED照明の普及がどの程度進むかはわかりませんが、長寿命、高効率な高周波点灯専用管への移行は間違いなく進むでしょう。高周波点灯専用管には点灯管は必要ありません。

点灯速度は速くなるが、5倍の価格差をひっくり返すだけの価値はあるかというと、微妙な感じがする電子点灯管

もちろん、電子点灯管には点灯管の交換の手間をなくすという効果はあるでしょう。しかし、いずれにせよ蛍光管のほうは交換する必要があります。そして、たいていの照明器具では、蛍光管を交換する手間にグロー管を交換する手間を加えても、たいして変わらないというのが現状です。

というわけで、電子点灯管の点灯速度という面でのメリットは確かにあると思いますが、寿命という面でのメリットは、それほど大きなものではないのではという気がしています。当面は、値段の安いグロー管でもよいのではないでしょうか。