2008年の自作シーンにおいて、メモリ価格の下落という点に触れないわけにはいかない。11月に入って、また一歩下落が進み、2GBが2,500~4,000円、1GBが1,500~2,500円程度から入手できる。これだけ価格が下がると、少しでも多くメモリを積みたくなる。4スロットあるメモリスロットのうち2スロットしか使ってないならば、なおさらだろう。

GeILの「GB28GB5300C5QC」。2GB×4枚のセット製品である。こうしたセット製品でなくとも、現在2GB×4枚は15,000円程度を用意すれば購入できてしまう

しかし、現在広く普及している32ビット版のWindowsでは、2の32乗=4,294,967,296個のアドレスを示すことしかできない。このため、4GBを超えるメモリを搭載してもOSでは、4GB以下の領域しか扱うことができないのだ。しかも、メモリが利用するアドレスの一部をBIOSや周辺機器などの入出力システム(メモリマップドI/O)に使用するため、メインメモリのアドレスとして利用できない部分が生じてしまう。4GBのメモリを搭載しても、実質3GB強しか利用できないという悲しい自体が起こる。

32bit版のWindows Vista SP1の場合、メモリ容量は「8GB」と正しく表示されるものの、実際に利用可能な物理メモリ容量は「3326KB」までになっている

一方で、チップセットやCPUが内蔵するメモリコントローラは、もっと大容量のメモリを搭載可能だ。今回使用しているマザーボードはIntel P45を搭載するP5Q Deluxeであるが、このマザーボードは最大16GBまでのメモリをサポートしている。いったい、こうした大容量メモリはどのように活用できるのだろうか。

P5Q-E Deluxeは最大16GBまで認識可能。当然、8GBのメモリを正しく認識していることが分かる

64bit OSを導入する

もっとも当たり前の活用方法が、64bit OSの導入である。Windows Vistaの各エディションや、Windows XP Professionalには64bit版が用意されているので、これを利用するのである。こちらにもあるとおり、Windows Vistaはエディションにより利用可能なメモリに制限があり、Home Basicでは8GBが最大となるが、Home Premium以上のエディションであれば、P5Q Deluxeが搭載可能な16GBを丸々利用できることになる。

64bit版Windows Vistaなら、4GBを超える物理メモリを利用可能。ハードウェア、ソフトウェアの対応が不十分な点は残るが、検討の価値はあるだろう

だが、64bit OSを導入する人は少ない。それは、ハードウェア、ソフトウェアの対応がまだ十分とはいえないからだ。チップセットやグラフィックスカードなどの基幹パーツのドライバは64bit対応のものが提供されているが、例えばテレビチューナ/キャプチャカードのドライバなどは提供していないメーカーが依然として多い。アプリケーションも64bit対応は現在進行中といった具合で、32bit OSを利用する人が多いからメーカーも32bit OS対応を優先させてしまい、64bit化がなかなか進まないという悪循環に陥ってるのも事実である。

しかし、大容量メモリを利用するなら、もっとも正攻法である。64bit版Windows上で32bit版のアプリケーションを動作させることは可能であるし、ビジネスユース中心であれば、いち早く64bit版を導入するのは悪くない選択肢である。

32bit OS上でRAMディスクとして活用する

では、広く使われている32bit版Windows上で4GBを超えるメモリ領域を扱う方法はないのだろうか。これについては、特に今年に入ってネット上で多くの情報が提供され、広く活用されている手法がある。それがRAMディスクとして利用するものだ。32bit版Windows上では、CPUも32bitモードで動作するわけだが、実は最近のCPUは物理メモリアドレス拡張(PAE)と呼ばれる仕組みにより、4GBを超えるメモリを扱うことができる。問題は、OS側がそれを使っていないことにある。RAMディスクソフトのなかには、この仕組みを活用して、OSが管理可能な領域以外の部分をRAMディスクとして利用できるものがあるのだ。

国産のユーティリティとしては、アイ・オー・データ機器が発売している「RamPhantom 3」が挙げられる。同社製メモリを利用しているものならば、機能制限版の「RamPhantom 3 LE」を無償で利用することができる。無償版の場合、OS管理外の領域に作成できるRAMディスクは1GBに制限される。2,480円で販売されているフル版は、こうした制限無く利用できる。

RamPhantom 3 LEをインストールすると、タスクトレイにアイコンが常駐する。「状態」を選択することで設定ダイヤログなどを開くことができる

使い方は極めて簡単で、インストーラの指示に従ってインストールするとタスクトレイに常駐。そこから設定を施すだけだ。国内メーカー製アプリケーションだけあって、インターネット一時ファイルをRAMディスク上に置く設定や、電源を切ったら消えてしまうRAMディスクの中身を自動的にバックアップ & リストアする機能などが提供されており、手軽にRAMディスクを利用したいユーザーには便利なツールだ。

Ramディスクに割り当てる領域を「OS管理外メモリーのみ」に指定すれば、OS管理内のメモリは利用できない。LE版の場合、OS管理外メモリは最大1GB、合計で2GBまでのRamディスクを作成できる

ログオフ時や定期的なバックアップが簡単に行えるのもRamPhantom 3の大きな特徴である

インターネット一時ファイルをRAMディスク上に置く設定も簡単

OS管理外メモリのみに1GBのRAMディスクを割り当てた状態。物理メモリの「空きメモリ」が十分に残った状態で1GBのRAMディスクを活用できる

RamPhantom 3に手軽さでは劣るが、フリーかつ容量無制限に利用可能なツールもある。「Gavotte Ramdisk」がそれである。公式サイトなどは存在しないようだが、ソフト名でググってみると、いくつかダウンロード可能なサイトが見つかるので入手はそれほど苦労しないだろう。

このツールを利用するさいは、レジストリへの設定書き込み作業を行ったうえで、アプリケーション上からRAMディスクドライバを組み込むだけだ。容量の設定なども行えるが、OS管理外の領域を勝手にRAMディスクに割り当ててくれる。必要に応じて容量を増やすこともできるが、OS管理内のメモリ領域を圧迫するのは得策ではないだろう。

Gavotte Ramdiskを利用するには、まずレジストリの修正を行う必要がある。ram4g.regファイルを「結合」する

そのうえでramdisk.exeを起動し、「Install Ramdisk」を実行。未署名ドライバである旨の警告がでるが、許可して作業を進めればOKだ

デフォルト状態では16MBのRAMディスクが割り当てられる設定になっているが、OS管理外のメモリは勝手に割り当ててくれるので、この値をとくに変更する必要はない

搭載メモリ8GB、OS管理メモリ約3.3GBなので、残りの約4.7GBがRAMディスクとして割り当てられている。空きメモリも十分である

こうしたRAMディスクは、とにかく高速なのが魅力であるが、一方で電源断と同時に内容が消えてしまうというデメリットもある。データなどの重要なものは置かないのが大原則であり、基本的にはテンポラリファイルなどを置く場所として活用するといいだろう。簡単なところでは、RamPhantom 3のように、インターネット一時ファイルを置く場所として指定するだけでもWebブラウズ時の体感速度はかなり違ってくる。空いているスロットを使って、PCの速度改善につながるというのは大きな魅力だ。安くなったメモリを使ったチューニングとして、検討してみてはいかがだろうか。

今回自作したPCに使用しているSeagate Barracuda 7200.11のベンチマーク結果

Gavotte RamdiskによるRAMディスクのベンチマーク結果。もの凄いスピードであることが分かるだろう

インターネット一時ファイルをRAMディスク上に置く設定。インターネット一時ファイルのフォルダをRAMディスク上に移動すればOKだ

Windowsの仮想メモリ領域をRAMディスクに置くのも定番の活用法。HDD上のページングファイルは「なし」にして、RAMディスク上のみにファイルを置くように設定する

(機材協力 : ASUSTeK Computer)