今年4月から「働き方改革法案」が施行され、はや半年がたった。

働き方改革とは、労働者を楽にするという名目で、長時間労働の抑制、残業時間削減、有給取得推進などが盛り込まれた法律である。

だが実際労働者は楽になったのであろうか。

仕事は増やせ、時間は減らせ

そう無職のひきこもりが壁に問いかけたところで何も返ってこないので、実際会社で働いている人の意見を聞いてみるしかない。

まず身近なところで会社員である家人を見る限り、全く楽になった様子はない。労働時間も休日出勤具合も施行前と大差ない気がする。これで顔だけ晴れ晴れとしていたら、むしろクスリを疑ってしまう。

実際働き改革により、世の労働者が楽になったかというと「あまり楽にはなっていない」というのが正直な感想で、むしろ「ストレスが増した」という回答が半数近くを占めるという。

しかし働き方改革により、現場の「労働時間」が減っているのは事実だ。「命を大事にしない奴は殺す」という風に「休ませない会社は罰す」という法律なのだから当然である。

では何故ストレスが増えるのかというと、まず法律で減らせと言われているのが「労働時間」だけだからだ。量や内容に関しては不問である。

つまり仕事量や内容は全く変わっておらず、それをやる時間だけ強制的に減らされた、ということが各地で起こっているのだ。

会社に「早く帰れ、だが仕事は終わらせろ」と指示されているということである。「体に気をつけて車に轢かれろ」と言われているようなものだ。

働き方改革によって「余計会社に無茶を言われるようになった」ということである。

仕事は増やせ、時間は減らせ、時間は隠れて増やせ

漫画家でも原稿のページ数変わらないのに、描く時間を減らされたら当然間に合わない。

しかし漫画なら見開き2ページに血しぶきのみという禁じ手を使ったり、最悪落ちたりしても代わりに謎の新人の読み切りが載るだけだ。だが会社員の場合、自分がノー残業デーで残した仕事を代わりにやってくれる謎の新人などほぼいない。そして漫画家のように「潔く納期を破る」ということも出来ないだろう。

よって俺が残した仕事をやるのは「明日の俺」なのである。つまり「ノー残業デーの次の日は徹夜」と言う風に、負担が減ったのではなく「負担を強制的に先送りされ、それを別の日に一括返済しないといけない」という「負債」にされただけという状態になっているのだ。

労働者を楽にするはずの法が、いきなりカイジめいた話になってざわざわしている。

会社に遅くまで残ること自体難しくなってきているため、結局「家に持ち帰ってやる」「早朝サービス残業をする」などして仕事を終わらせている人もいるようだ。残業を減らす法律で、残業よりさらに悪しき「サビ残」や「仕事持ち帰り」を生み出してしまっているという本末転倒である。

さらに、残業していないことにするため、タイムカードだけ退社にして仕事をしているという人もいるようだ。何故、俺が会社を守るため己に何のメリットもない不正行為をしなければならないのか、という話である。どうせ不正をするなら横領ぐらいやりたい。

また法律故に、会社は働き方改革後、社員の労働時間に厳しく目を光らせるようになったため「監視されている」と感じる人もいるようだ。

仕事は増やせ、時間は減らせ、時間は隠れて増やせ、給料は減らす(笑)

そして、残業を減らすと同時にあるものも減る。

それは残業代だ。

当たり前のことを言っているが、これが大きな問題になっている人もいるのだ。

今まで残業が当たり前だった人は、この働き方改革で残業時間を減らされたことにより「収入激減」してしまうのだ。残業込みの給料で何とか生活していたという人は、いきなり破綻してしまう。

突然の収入減により、家族と険悪になったりと、働き方改革で会社のストレスがなくなるどころか家庭にまでストレスが及んでしまっているのだ。

人によっては「働き方改革前と同じ仕事量をさせられているのに給料だけが減っている」という実質ただの減給状態である。

働き方改革で仕事が楽になった人もいないわけではないだろうが、その裏で、精神的、肉体的、金銭的すべての面でストレスを受けるようになってしまった人もいる、というのも事実である。

ただこれは意外な結果ではなく、多くの現場の労働者は「こうなると思っていた」ようだ。

確かに、仕事の量や内容に触れず、労働時間を強制的に減らせばそうなることはわかりきっている。

腹の肉を包丁でムリヤリ切り落とすことを「ダイエット成功」とは言わないだろう。ムリなく労働時間を減らすにはどうしたら良いかを先に考えなければいけない。