人間は生物の中で唯一「火」という文明を使いこなせる動物だが、おそらく全員が使いこなせたわけではなく、火を使うたびに火傷したり家を全焼させたりするため、火の使用を制限された個体もいたはずだ。
そして私も過ぎたる文明を与えられて破滅した個体の末裔として「スマホ」という文明を、自主的に制限している。
その結果、今まで平均11時間はあった一日のスマホ使用時間が3時間程度にまで減少した。
凄まじいデジタルデトックスに成功しているように見えるが、これは体重300キロの人間が100キロまで落とした、と言っているのと同じで、客観的に見れば十分デブの域であり、3時間でも十分長いと思われる。
ちなみにタブレットやパソコンでネットを見ていた時間は含まないので、それを含めると今でも11時間の可能性すらある。
しかし、スマホを見ている時間が減ったのは事実であり、痩せしろが大きすぎるとはいえ子ゴリラ13匹分消えるほどのスマホダイエットもそう簡単ではない。
どうやって、それだけ減らしたかというと、私は現在スマホロックケースを使用している。
スマホの使用を制限するアプリなどはあるが、そんなのアルコール依存症が「ビールだけにしますし、いざとなったら料理酒を飲みます」と言っているのと同じだ。
本当にスマホを見ている時間を減らしたいなら、物理で触れなくするしかない。
スマホロックケースにスマホを入れてロックをすると、指定時間まではケースを破壊しないかぎりは取り出せなくなる。
スマホをケースに入れてロックするのが自分という時点で無意味なアイテムとも言えるが、それさえできれば強制的にスマホ使用時間は減る。
ただ、ロック中に緊急の電話がかかってきたら困るため、このケースは電話を取ることだけはできる。
どういう仕組みかというと、ケースの一部に穴が空いており、そこから電話を取る操作のみができるという原始的設計だ。他は全てケースに覆われているため、誰からかかってきた電話かすらわからない。
つまり、このケースはスマホを黒電話に変える装置だ。
黒電話がわからない奴への説明は省く、電話をかけるとき「ダイヤルを回す」という謎儀式の存在をほのめかす老にでも聞けばいい。
比較的新しいアイフォーンを自ら昭和レトロにしなければいけなくなるのが、文明を正しく使いこなせなかった人間の末路である。
ガラケーを持つのが逆におしゃれな時代が来るかもしれない
道具は最新のものを持てばいいものではない、自分に使いこなせるものを装備しなければ、却って自分がケガをする。
そんなわけで、次スマホを買い換える時は、シニア向け携帯でいいんじゃないか、とすら思っている。
機能の制限という意味ではキッズ用携帯でもいいかもしれないが、自分をシニアではなくキッズ寄りだと思っている中年には何も与えるべきではない。
シニア向け携帯といえばガラケーを想像するかもしれないが、シニア層ですらスマホの普及率は97%だという。
だが、その3%こそにブルーオーシャンがあるとして、NTTドコモの3G停波での買い替えラッシュを狙い、韓国の新興スマートフォンメーカーがガラケータイプの携帯「ケースマ」で日本に参入することを発表したという。
ただし、見た目はガラケーだが中身はAndroidであり、このようなガラケータイプのスマホはガラホとも呼ばれているそうだ。
ちなみにシニア向け携帯といえば「らくらくホン」というイメージがあるが、らくらくホンも4G対応のガラホを昨年発売している。
しかし「らくらくスマートフォン」という、シニア向けスマホもすでに存在するため、それでもフィーチャーホンを使おうとするのは、よほどガラケータイプにこだわりがあるか、スマホの操作に慣れる前に寿命が訪れるから使い慣れたものを使いたいという層のみだろう。
ただ、外側はガラケーでも中身はスマホなため、ボタン配置やUIなどは従来のガラケー通りとはいかないようだ。
あまりにも少ないパイの取り合いに見えるが、私の母も未だにガラケーだし、義母もガラケーからガラホに移行しているので、ガラケーユーザーの「今更タッチ操作などやっていられるか」という気持ちはホンモノである。
もしかしたらケツにヘリウムが入っているとしか思えない移り気なユーザーより、このスマホに動かざること山の如しな3%を押さえることの方が重要なのかもしれない。
ちなみにシニアだけではなく、スマホから離れるためにフィーチャーフォンに移行したという人も少なからずいるようだ。
前回もスマホを寝室に持ち込まない人に向けた高級置時計を紹介したように、確実に「スマホから離れている方がオシャレ」という風潮が起きている。
つまり最新アイフォーンより機能が制限されたフィーチャーフォンを持っている奴の方がオシャレな時代が本当に来るかもしれないのだ。
流行を先取りする意味でも、私も次回はシニア向け携帯の購入を真剣に検討したいと思う。
