これが掲載されるころ、おそらく私の漫画原作のドラマが最終回を迎えていることだろう。
正直寂しい気持ちでいっぱいだ、一応原作の方は続く予定なのだが、はっきり言って自分で描く気がしない、続きも全部ドラマでやってほしいぐらいだ。
もはや漫画どころか、人生さえこのでかすぎるピークを終え、長すぎる余生をどう過ごしていいのかわからなくなっている。
原作者の複雑な「親心」
だが、今でこそ「後の人生が消化試合になるレベルでよい作品を作ってもえらえて良かった」という心境だが、始まる以前はかなりナーバスになっていた。
そもそも「漫画の実写化」は、魔の交差点レベルに事故率が高く、今まで起こった大事故は枚挙に暇がない。
原作と実写は別物であり、事故が起きたとしても原作に責任はなく、むしろ被害者だと言われるが、そうだとしたらまさに事故で一番損害を受け後遺症を引きずるのは被害者ではないか。
作品という我が子が目の前でトレーラーに轢かれる様を見て正気でいられる親などいないだろう。
そんなわけで放送開始2週間前から下痢が止まらなくなり、通院2回、放送前日に嘔吐したのだが、開始してみれば、危惧していたような炎上や批判は起こらず、むしろ好意的に受け止める意見の方が多かったように感じる。
そうなってくると、人間は贅沢になってくるもので、もっとたくさんの人に見てもらいたいと思い始めるし、最終的に「ドラマはもういいから原作の方を買ってくれないだろうか」という己の利益のみを追求するようになってきた。
最初は「生きているだけでいい」と思っていた我が子も、ある程度健康に生きているとわかったら、いい成績をとってほしい、徒競走で1位をとってほしいなど、欲が湧いてくるものなのだ。
しかし「我が子に活躍してほしい」という発想はまだ健全だ。
それよりも「我が子が所属する野球チームに将来の大谷がいてくれるな」と願ってしまったり、1番最悪なのが「我が子の徒競走の対戦相手が全員体育1でありますように」と願うことだ。
合コンで自分が輝くより、完全ツヤ消し仕様の女を2.3人引き連れて輝いているように見せかけるような手法であり、最初にその作戦が思いつくのはまずい。
しかし、勝負の世界でも対戦相手の実力は重要であり、たまたま強い相手に当たってしまうのは避けられない不運でもある。
「鬼滅の刃」新作映画と「運」の問題
そしてその不運は、ドラマ、そして映画の世界でもある。
私は言うまでもなく、我が子の対戦相手が大谷ではなく、全員体育1で全員90歳以上であれと願うタイプの親だ。
よって「私の漫画原作ドラマの放送時間に、他の強い番組が放送されてくれるな」と祈っていた。
その祈りが通じたのか、神は放送2回目に『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』、3回目に『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』をぶつけてくるという試練を与えてくれたのだが、正直テレビのリアルタイム視聴率は昔ほど当てにならなくはなってきている。
特にテレビドラマは、リアルタイムで見なくても、ほとんどあとから見逃し配信で見ることが可能だ、実際リアルタイム視聴率は低くても、見逃し配信で伸びた人気ドラマも存在する。
よって視聴率で一喜一憂することも、裏に大谷がいるのもそこまで気にすることではないのだが「映画」はまだ別である。
何故よりにもよって裏に「鬼滅の刃」の劇場版がきたかというと、近日に劇場版鬼滅の新作公開が控えていたからだ。
そして、公開され、予想通りの大人気を博しているようだが、そのおかげで、同時期公開の映画が割を食いまくっているそうだ。
鬼滅を流しまくれば人が来まくると分かった映画館は、とにかく鬼滅の上映回数を増やし、公開初週は多いところで1日40回上映していたそうだ。
しかし映画館のシアター数は限られている、その結果同時期公開の映画の上映回数が軒並み減らされており、もはや影響が比較的少ないのは『国宝』ぐらいのものだという。
映画館が鬼滅に占拠されていることに、他の作品が見たい利用者からの不満も多少挙がっているようだが、それよりも憤懣やるかたないのは、他作品の制作サイドだろう。
鬼滅がテレビの裏に来ただけでも嫌なのに、機会が限られている映画で来られたら憤死せざるを得ない。
しかし、誰が悪いというわけでもなく、所属した野球チームに大谷が同ポジションでいた、という不運がたまたま起こってしまっただけなのだ。
やはりエンタメ業界は、実力だけでなく「運」が大きく作用する世界だ、どれだけ内容が良くても、運悪く埋もれている作品もたくさんある。
そういう意味で私は、これだけ恵まれた条件で実写化してもらえたのは豪運であり、運を来世まで使い切ったと言っても過言ではない。
今世はろくな死に方はしないし、来世は誘蛾灯の内部で生まれたカメムシだろう。
豪運がきたとしても、その後の虚脱と不運におびえるだけなので、鬼滅が対抗に来るような不運が起こった人も、あまり悲観しないように生きて欲しい。
