私の夫は休日が定まっているわけではないので、突然「明日は休み」と言い出すことがあるのだが、それに対し私は「本当か?」と聞くのが定番になっている。

家族の言うことをむやみに疑ったり否定するのはモラルハラスメントであり、有事の際の財産分与比率に関わってくるので控えるべきとはわかっている。

だが、本当に夫の休日は30%ぐらいの確率で勤務先から電話ではじまり「今日は休日だが仕事に行ってくる」というバカボンのパパみを感じる発言とともに出社というパターンに陥るのだ。

別に、夫が休みだろうが仕事だろうが、部屋から一歩もでず、むしろこんなに規則正しい生活を送りながら何故ここまで情緒不安定なのか理解しがたいライフスタイルをしているので、夫が急に休みになろうが仕事になろうが、あまり関係ない。

しかし、私がキッズで、中古ゲーム屋にある、ベニヤ板で仕切られたカードゲームスペースに連れて行ってもらうという約束をしていたなら、この急な出勤に泣き叫んでトラップカードを展開していただろう。

これに対し、母親も一昔前なら「お父さんは仕事だから仕方がない」と、キッズ側を諫めていたかもしれないが、今なら仕事を優先し、子どもとの約束を破る父親、そしてそんな働き方をさせる会社に憤りを向けるだろう。

私も夫に対し、自分が休日出勤上等なのは構わないが、それを下の世代にまで求めないでくれよとは思っている。

台湾のトモダチから苦言を呈されちゃったと話題に

エコノミックアニマルと呼ばれ、未だに社畜が多い日本だが、それでも働き方、そして仕事への意識は変化しており、ついに海外から「日本人は働かない」と言われるまでになってきたという。

日本が好景気のころ、おそらく海外で日本人旅行客は「日本人は金払いは良いがマナーが悪く隙あらばスプリングショッピングしようとするから嫌い」と言われていたのだろう。

それが今やすっかり日本に来た外国人観光客を同じような言葉で叩く側になっている。そのサイクルがついに「勤勉さ」にまで及んできているということなのだろうか。

「日本人から勤勉さがなくなる」というのは、小説の才能がなくなった太宰感があって「いよいよ」という感じがするが、私は日本人のくせに勤勉じゃないことにおいては先駆け的存在なので、やっと時代が追いついてきた感もある。

むしろ周りが勤勉すぎるせいで私みたいなタイプが生きづらくなっているため、勤勉レベルが全体的に落ちるというのは追い風とも言えるかもしれない。

しかし、日本人が全員私レベルになるということは電車が定時に来ない世界の到来とも言える。

むしろ今までの勤勉さが狂気であり、それが弛緩してきたのは良いことなのかもしれないが、狂気のおかげで我々の便利な生活が成り立ってきたともいえる。

今後は人力マッドパワーに頼らずとも便利な生活を実現させる技術やシステムの方が重要ということだろう。

しかし、私から見れば、日本人はまだまだ勤勉であり、みんなよく働いているように見える。

  • 気がつけば、「ニホンジン、ハタラカナイデスネー」と言われた社畜の憂鬱

    社畜だって人間だもの。そもそも昔の日本人は本当に24時間働いていたんだろうか? 計測してないけど沢村の球速は160キロ超えてた、みたいな話ではないのか?

一体、どこで誰に日本人は働かないと評されたかというと、熊本にTSMCという、有名な台湾の半導体企業の工場が建てられ、現地で人材を激しく募集しているが、それが難航し、離職者も多いことからTSMCに「日本人は想定より働かない」と評されたことがきっかけらしい。

時代は会社でリゲインより自宅でエナドリなんだ

大体予想はつくと思うが、これは日本人が平均以下しか働かないという意味ではない。

日本人は無茶な労働に耐えると思っていたのに思ったより耐えないではないか、ということであり「死ぬまで殴っても死なないと聞いていたのに意外と死んだ」と嘆いているような感じである。

もはや日本の「社畜」は「忍者」や「侍」と同ポジであり、日本に行けばそこら辺を忍者や侍が歩いており、気をつけないとマキビシを踏むという勘違いが起こっていたように、「日本で求人をかければもれなく1日48時間働く奴が集まる」というイメージを持たれていたのかもしれない。

そういう板金と一緒に時空すら曲げる能力者を想定していたのに、8時間しか働かない上に、それを倍にしただけで辞める人間しか集まらなかったとなれば、「想定より働かない」という感想になるだろう。

また、現地はおらが村に世界的半導体企業がやってきて盛り上がっているが、逆に言えば、今まで地元から出たこともない工業高校卒の若者を世界的企業で働かせようと言うのが無理、という意見もある。

台湾で半年ほど研修を受けさせてからの勤務になるようだが、中国語はもちろん英語もできないであろう若者が、それで満足に技術習得できるはずがなく、そこで脱落する者が多いという噂もある。

そんな過酷な研修にも食らいついていくのが日本人、言葉は通じなくても根性、最終的に殴り合いにより分かり合っていくだろう、と思われていたのなら、やはり「想定以下」と言われるのは仕方ないだろう。

台湾の労働意識がみんなそうなのか、TSMCという会社がそうなだけなのかは不明だが、もしかしたら、台湾は今、日本でいうところのリゲイン期に来ており、数十年後には「台湾人は死んでも働くと聞いていたのに死んだら動かなくなった」と言われているのかもしれない。

日本人が働かなくなったというより、今までが働きすぎであり、日本の社畜イメージが海外に大げさに伝わりすぎている、という可能性はある。

また、昔の日本人が働きすぎていたのも、昔の日本人の方が勤勉だったからではなく、やればやるほど手ごたえを感じられた時代だったからというのもある気がする。

現在の日本はやる気を出したところで手ごたえが感じられず、むしろ搾取対象となり、手で空を掴みだす病(ビョウ)を発症してしまう恐れすらある。

そんな日本に対して現在台湾は好景気らしいので、やればやるほど成果がでるから昼夜問わず働こうと言っているのに、日本人がそれに全くノッてこないことに戸惑っているのかもしれない、

日本人が怠惰になったのか、それとも台湾人が今働きすぎになっているのかは定かではない。

しかし「うま味がないことに自分の時間や命を費やしたくない」という気持ちは人類共通なのではないだろうか。